大変なのはモンペだけじゃない!教員は一見非常識でない要求にも疲弊している!

モンスターペアレントのクレームに怯えながら子どもの指導を行っている、現在の学校教員。

テレビなどでは視聴者の興味を誘うために、次に挙げるような過激な親たちが紹介されます。

  • 朝起きられないからモーニングコールくださいと言う親
  • 風邪で休んだ分の給食費を返せと言う親
  • 我が子が他の子どもに暴力を振るっているのに悪いのはウチだけですかという親
  • 子どもの成績を上げるよう要求してくる親
  • ウチの子と合わないからと担任を変えるよう要求してくる親
  • ウチの子を学芸会の主役にするようにと要求してくる親

しかし、教員が疲弊するのは、このような非常識で過激なモンペのクレームだけではありません。

実は一見そこまで非常識ではないように思われる親からの要求に苦しむことがあります。

今回は、その中でも、「宿題」に対するクレームと「給食」に対するクレームについて、私の小学校教員時代の経験も踏まえながら取り上げていきます。

◆宿題に対するクレーム

「宿題を増やしてほしい!」

このように要求してくる親がいます。もちろん要求の度合いにも依りますが、一見、非常識ではありません。

しかし、理由を聞くと、

  • ウチの子にとっては量が少なすぎてすぐ終わってしまう
  • 学力を上げるためにもっと出して欲しい
  • 隣のクラスはもっと出しているから
  • 私が言っても勉強しないけれど、先生が出す宿題なら勉強するから

などを挙げてきます。

特に最後の理由、多いです。

一見非常識ではないかもしれませんが、先ほどの理由がおかしいところを挙げると次のようになります。

  • 公立ならクラスには様々な子どもがいてその量を終わらせるのに精一杯の子どももいる、担任は全員ができるような課題量しか出せない(子どもによって宿題を個別に用意してあげることは可能ではあるものの、実質的には多忙すぎてそのような準備をする時間は一切ない)
  • 確かに学力を上げる責務はあるが、それは必ずしも宿題によって達成すべきものではない
  • 隣のクラスと子どもたちの実態は異なる
  • 宿題=家庭学習であり、あくまでも家庭学習の責任は親にある

これらの理由を丁寧に説明して分かって貰える親なら良いのですが、私の少ない経験では説明して分かってくれる親なら最初からこんな要求をしてこない、という感じでした。

最初から高圧的に消費者意識全開で宿題の量を増やすよう要求してくる親も多かったです。そうなると、苦手な子どもへの配慮も必要な担任としては困ってしまいます。

保護者の方には、宿題の量が少ないと感じたなら、担任に増やすように要求するのではなく、本屋にでも行って問題集でも買うなりして自分で課題を与えてほしいと思いますし、そうすべきです。「家庭」学習なのですから。

(ちなみに逆に、「宿題を減らしてほしい」、このような要求は、子どもにとって量が多すぎる、他にも習い事がある等正当な理由があれば、私は「あり」だと思うし、むしろどんどん言っていくべきです。)

◆給食に対するクレーム

「苦手な食べ物も食べさせてほしい!」

給食指導においてこのような要求が入ることがあります。

非常識な訴えではありません。

しかも学校では昔からそのような「苦手なものでも一口だけでも食べよう」という指導を行ってきました。

しかし、私は今の時代、それを教員に要求するのは無理な話なのではないかと思っています。

理由は2つあります。

ひとつは、人権意識の変化です。先日、このようなニュースがあったとおり、苦手なものを無理やり食べさせることは、今は”体罰”にあたります。

教諭が給食残した児童に無理やり食べさせる(出典:NHK2017年5月4日)

もう一つは、アレルギー事故です。下記のとおり、死亡事故まで起こっています。

給食後に小5が死亡 東京・調布、アレルギー反応か(出典:日本経済新聞2012年12月21日)

最初からアレルギーと認識できていれば回避できますが、そうでなくアレルギーと認識していなくてアナフィラキシー・ショックが出てしまったというケースもあるようです。

そうなると、「一口だけでも食べよう」と指導するのは無理があります。もしそれで子ども・保護者が体罰と訴え出たり、アレルギー反応が出てしまったりしたら、教員(学校)は非を認めざるを得ません。

確かに、「一口だけでも食べよう」と指導しないと子どもたちは苦手なものをバンバン残してくるのも事実なので、難しいところではあります。

しかし、今の教員にとっての指導は、「苦手なものは食べられたら一口だけでも食べよう、無理強いはしないけれど」が限界なのです。

とまあ、偉そうに書いてきましたが、常識のある保護者ならそんなこと説明されなくてもとっくに分かっています。

そうなると、要求してくる親は「ちゃんとやれ」という雰囲気で要求してくる親たちです。そして、そういう保護者が多いと担任は困ってしまい、疲弊が蓄積していきます。

このように一見、非常識でない訴えでも実は大変、というケースもあるのです。

私は個人的な意見として、こういう親たちにも分かりやすく示すために、食育のなかでも以下の2つは学校(教育委員会)側から、

  • 集団の食事のマナー=学校
  • 苦手な食べ物を食べさせる教育=家庭

とはっきりと切り分けることを示すべきだと思っています。

(ちなみに逆に、ベテランの先生が昔のやり方で「一口だけでも食べよう」と無理強いしていたら、やめてもらうよう要求するのは「あり」だと私は思うし、むしろどんどん言っていくべきです。)

★まとめ

教員がモンスター・ペアレントによる過激で非常識なクレームだけでなく、一見非常識には思えない要求も対応に苦慮していることがお分かりいただたのではないでしょうか。

保護者の方は過度に「これを言ったらモンペと認定されるかな」と怯える必要はありませんが、担任に要求を行う前に、

  • 他の子どもにとってはどうなのか(宿題の例なら、増やすことが厳しい子もいるなど)
  • 教員が置かれている社会状況(給食の例なら、体罰やアレルギー対応など)

を一度考えていただければ良いのではないかと思います。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「大変なのはモンペだけじゃない!教員は一見非常識でない要求にも疲弊している!」でした!

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