全国の小中学校で行われている体力テストの良い点と悪い点を天秤にかけて元教員が考えてみた

投稿者: | 2017年6月1日

全国の小中学校で行われている体力テスト。

全国調査は平成20年度から小学5年生、中学2年生を対象に行われています。

また、自治体ごとにも実施されており、例えば東京都では平成23年度から千葉県では平成19年度から全児童・生徒を対象として全校で行われています。

今回はその体力テストについて、良い点と悪い点の両方を出して、天秤にかけて考えていこうと思います。

 

◆良い点

  1. マクロのデータが取れる
  2. 授業の改善が図れる
  3. 個人の記録が把握できる

大きく3つの良い面があると私は思います。

それぞれ説明すると、1.については全国(あるいは都道府県)レベルで実施されるので、マクロのデータが取れます。地域差や年代差等を調べることもできます。

2.については、体力テストの結果から各学校・学年の強み・弱みが分かるので、その結果から体育の授業の改善を図ることができます。例えば、握力が弱い結果が出た学校が、体育の授業で上り棒をたくさん行うことで次年度、成績が伸びたという学校もあるようです。

3.については、例えば東京都や千葉県だと全校・全児童(生徒)参加なので、個人が自らの能力を知ることができ、またそのデータを蓄積していくことができます。

 

◆悪い点

  1. 春運動会の場合、本来の体育の授業をほとんど行えない
  2. 新年度に入って事前の練習・指導がほとんどできない
  3. 種目が多く、なかには全校で時間を設定しなくてはならない
  4. 質問調査の実施、提出用紙に記録を転記しなくてはならず、教員の準備負担大
  5. ソフトボール投げのライン引き等、教員の準備負担大

私は元小学校教員なので、小学校の体力テスト事情について書いていきます。

1.については、体力テストは1学期の実施を義務づけている自治体が多いのですが、春運動会の学校だと年度当初に実施せざるを得なくなります。なぜかというと、運動会の練習が始まるのはもちろん、運動会終了後もプールが始まり、時間が確保できないからです。そのため、新しい学年・クラスでの年度始めに本来の体育の授業がほとんどできず、すぐに体力テストとなってしまいます。体育が苦手な子どもや1年生にとっては、厳しいものがあります。

2.については、前述のとおり、ほとんど体育の授業ができずに体力テストに臨むことになる場合が多いので、各種目の練習・指導を事前に行うことはほとんどできません(前年度までの能力、実態把握という意味ではそれで良いのかもしれません)。なので、体力テストはひたすら淡々とこなしていくだけになります。小学生の場合、短期でも練習・指導を行えば上達したりするものですが、そうではなく、身体能力の高い児童が良い成績を出して記録して終わり、という感じになってしまっています。

3.については、小学校の種目は次の通りです。

  • 握力
  • 上体起こし
  • 長座体前屈
  • 反復横とび
  • 20mシャトルラン
  • 50m走
  • 立ち幅とび
  • ソフトボール投げ

まず、この8種目×30~40人の記録を取っていくので、かなりの時間を費やします。そして、中学校であれば、体育の先生が時間割の授業内で行い、生徒自身に記録をつけさせることができますが、小学校の場合、特に低学年はそうはいきません。よって、長座体前屈や反復横跳びなどを高学年と低学年をセットにしたり、ソフトボール投げ(ラインがなくてはできないので)を実施する時間を設定して時間割を組み替えたりしなければなりません。時間を設定して行うので雨天で中止になったり、欠席した児童が出たりすると更に煩雑になります。このように、小学校の場合、行事のように扱い、計画・準備・運営していかなければならないので、大変です。

4.については、とりあえずその場で名簿一覧に記録した8種目×30~40人の記録を提出用紙に写していかなければなりません。これが地味に結構大変な作業で多くの時間を費やします。また、普段の生活習慣や食習慣、運動習慣を問う質問調査もあります。高学年なら問題はなく1時間弱で記入できますが、低学年の児童には厳しいので担任は保護者に説明の手紙とともに記入をお願いし回収する、という作業についても行わなくてはなりません。

5.については、小学校には基本的に体育専科はいないので、道具の準備も担任が行います。なかでも大変なのが、ソフトボール投げのラインです。メジャーや傘を使用して、半円形のラインを50~60mのラインを5mごとに石灰で実施前日にひいていきます。勤務時間中にできないことが多く、やらないと学校が回らないので(同調圧力で)皆完全ボランティアで行います。夜間、雨が降った場合は最悪です。翌朝、早く出勤して勤務開始前にまたまたボランティアでラインをひかなければならないのです。

 

★まとめ

これらの良い点と悪い点を総合的に考えると、都道府県レベル(全学年)の調査はやめて、私は全国調査(小5、中2)だけで充分かなと個人的には思います。

理由としては、

  • 毎年の全学年全児童・生徒も意義がないとは思わないが、小学校の場合かかるコストが大きすぎる
  • 全国調査で小学5年、中学2年の記録を取るのでマクロなデータ収集も可能
  • 子ども・保護者ともに毎年の体力調査の結果にそこまでニーズがあるとは思えない
  • 体力テストがなくなれば、春運動会の学校でも年度初めからしっかりと体育の授業に取り組める

が挙げられます。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「全国の小中学校で行われている体力テストの良い点と悪い点を天秤にかけて考えてみた」でした!

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