授業中に騒ぐ児童に体罰を行った教員のニュースを見て、”ではどうすれば良かったのか”を考えてみた

さいたま市教委は9日、担任する小学1年の男子児童3人に体罰を行ったとして、市立小学校の男性教諭(28)を減給10分の1、1カ月の懲戒処分にしたと発表した。校長も指導監督責任で文書訓告処分とした。

(出典:埼玉新聞「授業中に騒いだ男児3人に体罰 さいたま市教委が教諭処分、校長も」2017年6月9日)

授業中に騒いだ児童に体罰を行い処分された教員のニュースが報道されていたので、今回はこの件において教員がどう対処すれば良かったのかについて、考えていきたいと思います。

◆大前提として体罰はマズい

この事件を考えていく大前提として、言うまでもありませんが、「体罰はダメ」ということは、まずはじめに言っておきます。

◆児童が授業中騒いだ原因は?

記事には記載がありませんが、この男児3人が授業中に騒いだ原因を私の小学校教員経験から推測してみると、

  • 児童が発達障害で授業中じっとしていられない子どもだった
  • 児童が学習障害で授業の内容についていけない子どもだった
  • 親の躾がなっていない(あるいは家庭内にトラブルがありストレスを感じている)子どもだった
  • 児童同士でのトラブルがあり、授業に集中できる精神状態ではない状況が続いた
  • 担任の学級経営が上手くいっておらず、児童が担任に不満を感じていた

などが考えられます。

◆では教員はどう対処すれば良かったのだろうか?

では担任は体罰を用いず、どのように対応すれば良かったのでしょうか。

もちろんまずは「辛抱強く口頭で注意する」「面白い・楽しい授業を行う」、こういう対処がはじめに行われるべきです。しかし、それらの指導を行ったうえでそれでも教員が児童が指導を聞き入れず、授業中騒ぎ続けていたら、次はどう対処するのが良いのでしょうか。

◆誰にも助けを求められない

次に考えられるのは、担任一人でどうにもならないのであれば、上司や同僚の助けを得ることです。

しかし、公立小学校では常に人員はギリギリで学校運営がなされていて、そう頻繁に助けには入れません。(相談するだけならば可能だと思いますが)

  • 同学年の教員⇒それぞれ授業があり、特に低学年の担任は音楽などの専科もなく空き時間がないので、同学年の教員が助けにはいけない
  • 管理職⇒管理職は授業をもっているわけではないので、他の教員に比べれば助けに入りやすいが、彼らも元々の仕事や出張、他のクラスのフォローやアクシデントへの対応など多忙を極めているため、まったく行けないわけではないが頻繁には助けにはいけない

問題のある児童を教室からピックアップする方法もあります。他の児童に迷惑をかける児童を取り出して、別教室で管理職等が学習指導するのです。しかし、人員が豊富ではないため、それも頻繁にはできません。それにこの方法は対処療法であって、根本的な改善にはなりません。

つまり、担任は校内で誰にも助けを乞えず、一人でどうにかしなくてならないケースが圧倒的に多いのです。

◆もし状態が長期化してしまったら

もし、改善が図れず、授業中騒ぐ状態が長期化・常態化してしまったら、どうなるのでしょうか。

言うまでもなく、真面目に学習している保護者からクレームが入る可能性が高いでしょう。

そしてそのクレームは、我が子の学習する権利を守ろうとするもので、何の問題もありません。むしろ、担任も真面目に学習していて迷惑を被っている児童への「申し訳なさ」にも苛まれているはずです。

この件の教員がそういったクレームを実際に受けていたのか、記事にそこまでの記載がないので分かりませんが、仮にクレームを受けていなくてもそのようなプレッシャーに晒されていたことは容易に想像できます。

◆騒ぐ児童の保護者に協力を依頼する

騒ぐ児童の保護者に協力を依頼する、といった対処方法もあります。

しかし、これは短期的に有効な手とはならない可能性が高いです。

なぜなら、前述した発達障害が原因だとしてその対策をうったとしてもすぐに結果が表れるわけではないし、躾がなっていない場合、そもそも躾がなっていないのに家での躾をお願いしても効果があるとは思えません。

しかも、この方法は、「家では素直な良い子ですよ。先生のやり方に問題があるのではないでしょうか」と攻撃を食らうリスクもあります。(実際にこの手のクレームを私は教員時代同僚からよく耳にしました)

◆結局一人で対応しなくてはならない

何度注意しても聞き入れられない、誰にも助けを乞えない、(真面目に学習している子の)親からのクレームにも怯えなくてはならない、(騒ぐ子の)保護者への協力依頼も効果を生まない・・・・・。

結局、担任は一人で対応しなくてはならないのです。

事件の概要については詳しく分かりませんが、この処分された教員もこのような状況で何とか事態を改善させようと「やむにやまれず仕方なく」体罰をしてしまった可能性もあります。

もちろん、「やむにやまれず仕方なく」であれば体罰をして良いということではありません。しかし、問題は現行の制度やシステムでは誰も担任を助けてあげられない、ということなのです。

★まとめ

どうすれば良かったのか?

私が出した結論としては、体罰を行わず結局一人で対処していかなければならない・・・。

これでは何の対策、提案にもなっていませんね。

結局、現行の制度・システムにおいて一教員ができることに限りがある、ということです。

今回は体罰になってしまったのでニュースになり報道されましたが、一部の児童が授業中騒ぎ、授業を妨害するようなケースは全国の小学校で起こっていると思われます。(大抵のケースでは、体罰を行うことなく何となくうやむやにしながら3月まで我慢することが多いので、表面化することがないだけだと私は思います。)

今回の件は、改めて現行の制度・システムが現在の状況にマッチしていないことを露わにするニュースです。明らかに現行の制度・システムが機能していないために起きていることで、このようなことが起きるたびにその都度教員を処分しても根本的には何も変わりません。

教員に対しても、児童に対しても、周囲がフォローしてあげられるような制度・システムに変えていかなくてはならないのだと思います。