いじめなどのデリケートな問題を子どもから引き出すための親の会話術6つ

「学校に行きたくない」「いじめられている」など、子どもが言い出すことがあるかもしれません。

そのようなデリケートな問題を子どもと話すときに使える会話術について、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏が著書『オバタリアン教師から息子を守れ』(2014年出版)で保護者にアドバイスをしていたので、今回はその会話術を取り上げます。

おおた氏は、「前提として、親がこどもの話を共感的に聞いて、子どもの気持ちを十分に受容することが必要」として次の6つの会話術を紹介しています。

1.上手に相づちを打ちながら聞く

人は上手に相づちを打ってもらうと、しっかりと話を聞いてもらえていると感じ、会話がスムーズになるとおおた氏はいいます。

たどたどしくも子どもが語りはじめたら、しっかりと子どもの目を見て、「うん、うん」などとうなづきながら、「なるほど」などと相づちを入れながら聞きましょう。

学年が下であればあるほど、子どもの話は理路整然としないでしょう。しかし、まずは適切なタイミングで相づちを打ちながら子どもの話を引き出すことが大切、というわけです。

ちなみに、これは小学校の教員も(時間が許す限り)心がけていることです。

2.オウム返ししながら聞く

次におおた氏は、子どもの気持ちや感情が特に表れているキーフレーズ(「〇〇と言われて嫌だったんだ」など)があったら、そのまま「〇〇と言われて嫌だったんだね」とオウム返ししながら聞くと良いとしています。

子どもは自分の感じていたことを親が理解してうれているという安心感を覚えます。その安心感があると、多少言いにくいことも正直に言えるようになります。

これも小学校の教員が普段から使っているテクニックの一つです。特に下の学年の子どもは、これだけで話が前に進んでいくことも珍しくありません。オウム返しは、相づちと同様、会話の潤滑油になります。

3.いたわり、ねぎらいの言葉をかける

話がひと段落したところで、ねぎらいの言葉をかけることにより、子どもがそれまで心の中にためていたネガティブな感情を洗い流すことができるとおおた氏はアドバイスします。

ある程度まとまりのある話が聞けて、子どもが一息ついたら、「それは大変だったね」「そんなつらい状況で今までよくがんばったね」などと、いたわりやねぎらいの言葉をかけてあげましょう。

これを行うことにより、子どもは親に「しっかりと受け止めてもらえる」と感じることができ、ストレスを軽減させることができると私も思います。

4.途中で話をまとめようとしない

次に、事実関係を適宜確認する以外は、話を途中でまとめようとしないことも大切だといいます。

なかなか結論が見えない話を聞いているとつい「要するに〇〇ということ?」などと結論をせかしてしまうことがあります。しかしそうすると親の顔色をうかがいながら話すようになってしまいます。(中略)事実関係があやふやなところを適宜確認することはかまいませんが、「要するに」とか「結論は」とか「結局のところ」とかいうようなフレーズはNGワードだと思って封印してください。

小学校教員時代、私は時間があまりない時、どうしても結論を急ぎたくなり、「要するに〇〇ということ?」などと言ってしまっていました。しかし、そうすると子どもは話がしづらくなってしまいます。

あらかじめ充分に話を聞いてあげられる時間を設定することも大切だと私は思います。

5.「それは違う」などと親の価値観で評価しない

子どもの話を聞いていると大人の価値観ではおかしなこと、それはあなたが悪いでしょ、というような話も出てきます。しかし、おおた氏はまずは子どもの話を引き出すことが大切だといいます。

「それは違うと思うな」などと言うことは正論であったとしても、子どもの自由な発言を妨げる障害となります。まずこの段階では子どもが思っていること、感じていることを自由に吐き出させることが重要ですから、子どもの話を親の価値観で評価するのはやめましょう。「だったらこうしてみればいいじゃない」というような形のアドバイスも不要です。解決策を提示されてしまうと、子どもはそれ以上とりとめのない話を続けることができなくなってしまいます。

これは大切ですね。話の途中で「それはあんたが悪いんでしょ!」と言われたら、子どもはそれ以上話せなくなってしまいますから。

なお、おおた氏は、子どもの悪いところを指摘したり、アドバイスは話を聞き出した後に、次の段階で行えば良いとしています。

6.先生の悪口を吹き込まない

子ども同士のトラブルだけでなく、先生との問題を抱えているケースもあるかもしれません。

おおた氏は、子どもが先生を否定する話したときに、共感的に聞くことは大切なものの、そこで調子づいて親まで「なるほどね。〇〇先生はダメね」などと言って、先生の悪口を吹き込んではいけないと指摘します。

実はこれが一番大切かもしれません。(中略)「子どもを不良にしたいなら子どもの前で先生の悪口を言いなさい」と昔からよく言われます。親が先生の悪口を言うことは、想像以上に子どもの心に傷を負わせることになるのです。

小学校教員の経験者として、これは本当にそう思います。親が教師の悪口を吹き込む家庭の子どもに正直ロクな子どもはいませんでした。まさに「子どもを不良にしたいなら子どもの前で先生の悪口を言いなさい」です。

★まとめ

  1. 上手に相づちを打ちながら聞く
  2. オウム返ししながら聞く
  3. いたわり、ねぎらいの言葉をかける
  4. 途中で話をまとめようとしない
  5. 「それは違う」などと親の価値観で評価しない
  6. 先生の悪口を吹き込まない

おおた氏は、このように子どものデリケートな話を親がしっかりと聞いてあげることで、子どもに親への絶対的な信頼が生まれる、と述べています。

親が自分の見方でいてくれるということが、子どもにとっては最大の救いであるはずです。それさえあれば、大概の困難には立ち向かうことができるはずです。親への絶対的な信頼が生まれます。

これは本当にそうですね。

何かデリケートな問題が起きたとき、学校の先生も話を聞いてくれるかもしれませんが、学校の先生には活用できる資源(時間)が限られており、親ほどはしっかりと子どもの話を聞いてあげることはできません。

ですから、学校に期待せず、我が子の問題は親がしっかりと向き合うことが大切になってきます。

そのためには、上記の会話術だけでなく、日頃からの我が子と信頼関係を築いておくことも大切でしょう。