二人分で三人? 空白の一日? 非正規教員のひどい待遇を前屋毅『ブラック化する学校』からまとめた

投稿者: | 2017年7月4日

先日、全国の公立小中学校には(常勤の)非正規教員が4万人以上いる、ということが報道されました。

公立小中学校に非正規で雇われ、処遇に差がありながら、担任や部活動の指導など正規の教員とほぼ同じ仕事をする臨時的教員が、全国で4万人以上いることが、文部科学省のまとめでわかった。

(出典:読売新聞「非正規小中教員4万人、担任や部活も…処遇に差」2017年6月27日)

4万人、これは多いですね。

割合の最も多い沖縄県では約15%の教員が非正規だそうです。

教育ジャーナリスト・前屋毅氏は、『ブラック化する学校~少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?~』(2017年出版)で、非正規教員たちが置かれているブラックな労働環境を指摘しています。

今回は、この本から公立小中学校の非正規教員における問題点について取り上げます。

 

◆待遇は雲泥の差、仕事と責任は同じ

前述の報道のように、非正規教員であっても職務内容は正規教員と同じです。

前屋氏は、中学校で働く非正規教員から得たインタビューを掲載しています。

「仕事の内容は、『臨時』のようなものではなく、正規教員と同じことをやらされています。クラスの担任もしているし、そうなると家庭訪問もするし、進路指導や生活指導もやることになります。(中略)非正規教員だからといって、仕事が少ないわけでも、責任が軽いわけでもないのです」

このように職務内容が同じにもかかわらず、給与や待遇は大きく異なることについて、前屋氏は続いてこのように述べています。

正規と非正規ということで待遇は雲泥の差がありながら、教員としての仕事と責任は同じものを求められるのだ。それが非正規の現実である。

同じ仕事をしているのに、給与も待遇も異なる・・・・・。

これはグローバル・スタンダードでははっきりと「差別」と見なされる状態です。

 

◆非正規教員が増えた制度的な理由

前屋氏は、このような非正規教員が増えた理由について、2006年度からの「二人分の予算で三人を雇う」制度が、非正規教員の増加を招いたと指摘しています。

2006年度から当時の小泉純一郎政権は、義務教育における教員の賃金のうち国の負担を、それまでの二分の一から三分の一に減らした。当初、小泉政権は教員一人あたりの国の負担枠を撤廃して、地方自治体の裁量に任せる方針だった。これに抵抗した文科省が出した案が、二分の一から三分の一に減らすことだったのだ。

この変更と同時に文科省が導入したのが、「総額裁量制」である。「文科省が決めた教員数×三分の一の賃金」という絶対額は譲らないものの、その総額内であれば教員数は地方自治体が自由に決めていい、という制度である。(中略)そこで登場してきたのが、「二人分の予算で三人雇う」という技だった。

二人分で三人を雇う・・・・・。

この国はどんだけ教育にお金をかけたくないんだよ、と改めて悲しくなります。

 

◆3月31日は無職

非正規教員(臨時的任用教員)は、任用期間が「六ケ月以内、更新一回(六ケ月以内)」(地方公務員法第二二条)となっています。

前屋氏は、この法制度により「空白の一日」が生まれる問題について指摘しています。

つまり、更新されれば、一年間は雇用状態となる。一年が終わっても再雇用は可能なので、同じ学校で次の年度になっても働き続けることはできる。ただし、一年の任用期間が過ぎれば新たな雇用になる。これがクセモノなのだ。

学校は4月から新学期になるが、非正規の任期は3月30日までとされることが多い。新学期が始まるまでには、3月31日という1日を挟んでいるのだ。新学期からも臨時的任用として雇われることが決まっていても、新学期までには「空白の一日」が存在することになる。この一日は雇用されていない無職の状態になる

本当にひどい制度です。

なぜこのようなシステムになっているのか。

結論を端的に言うと、「給与を上げにくくするため」です。

空白の一日の前と後でやっていることは同じなのに、形式的には新規雇用なので継続性がないというわけです。そうなると継続性がある場合に比べて定期昇給の額は極端に低くなります。

教育委員会は「空白の一日」をつくることで、予算をさらに”節約”しているということなのです。

 

◆職員会議で発言できない

前屋氏は、表向きは職員会議で(発言権はあるものの)発言できない実態について、小学校で非正規で勤務している教員にインタビューをしています。

「いいたいことはたくさんあります。けどね、いいません。職員会議だけでなく、悪い話は校長に絶対しません」

自主規制をしている理由についても聞いています。

「答えは簡単ですよ。職を失いたくないからに決まっているじゃないですか。校長を困らせるような発言をして睨まれでもしたら、再雇用してもらえないんですよ」

正規教員と異なり、非正規教員の雇用は実質的な決定権が学校長にあります。そのため、校長にネガティブな印象を与えないようにしなければならない・・・・・。

私も教員時代、非正規教員の方たちはこんな感じでした。彼らが発言したのを見たことがありません。

本来はクラスを代表して学校に言わなくてはならないことがある場合もあるはずなのに。

 

◆保護者には知らせないケースも

「我が子を非正規教員のクラスにしないで」というクレームを恐れる学校が、保護者には非正規教員であることを知らせないケースもあるようです。

上記同様、現役非正規教員のインタビューを掲載しています。

「非正規教員が担任をしていることは内緒にしているんです。学校側とは暗黙の了解で、私たちのほうから保護者に打ち明けることもありません。そんなことをしたら、『非正規だから無責任なことをやりかねない』と、とんだ誤解を招く可能性もあります。だから、私たち非正規教員の担任は、不満足すぎる待遇を我慢しながら、正規教員の担任と同じ仕事をしています」

保護者には「我が子を非正規教員のクラスにしないで」ではなく、「担任をもつ教員を非正規にしないで」と文科省や教育委員会、世の中に訴えてほしいものです。

 

★まとめ

NHKの報道によると、今年度、非常勤教員(臨時教員)の不足により、全国の公立小中学校で700人の教員が足りていないといいます。

全国の公立の小中学校の教員の数が、ことし4月の時点で定数より少なくとも700人以上不足し、一部の学校では計画どおりの授業ができなくなっていることがNHKの取材でわかりました。これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足が要因と見られ、専門家は「国や自治体は早急に実態を把握し、対策を検討すべきだ」と指摘しています。

(出典:NHK「公立小中学校の教員数 全国で700人以上不足」2017年7月4日)

上記のようなひどい待遇、労働環境で人が集まるわけがないのです。

一昔前までは教員採用試験に合格するまでの修行ととらえひどい待遇を我慢していた人もいたかもしれませんが、今はそもそも各自治体で教員採用試験の志望者がどんどん減少している状態です。

都内公立校の教員試験倍率 過去最低の5.7倍(出典:東京新聞2017年6月9日)

県内公立校、倍率4.4倍 過去20年で最低(出典:毎日新聞2017年6月16日)

18年度教員採用 定員千人割れ、倍率6・6倍(出典:神戸新聞2017年6月15日)

佐賀)年齢制限緩和も…教員採用試験、倍率低く(出典:朝日新聞2017年6月21日)

正規教員にさえ人が集まらないのに、待遇の悪い非正規教員に人が集まらないのは当然の帰結といえます。

この問題に関しては私は、

  • 非正規で雇うにしても待遇の改善を行う
  • 地方自治体に任せるのではなく国が責任をもって正規教員を増やせるよう予算をつける

ことで改善を図らない限り、このような臨時教員不足は変わらないとみています。

関連記事:学校の世界の差別を橘玲氏が指摘している日本の差別的労働慣行から再考してみた

 


スポンサーリンク