なぜ教員を辞めたのですか?―退職した教員へインタビューをしてきた―

教員採用試験の倍率が下がり、学生に敬遠され始めた教職。一方、教職に就いたものの、退職の道を選ぶ教員も増え続けています。

今回は、公立小学校を退職したAさん(30代)に話を伺いました。

Aさんの経歴は次の通りです。現在は医療関係の会社で働いています。

2008年  教員採用試験合格
2009年~ 公立小学校で働き始める
2015年  初めての異動
2015年~ 休職
2016年  退職
2017年~ 現在の医療関係の会社に就職

◆インタビュー

Q.単刀直入に聞きます。なぜ教員を辞めたのですか?

この働き方を続けられないと思ったからです。

教員時代は毎月80時間程度の残業をしていました。平日は朝6時に家を出て、夜11時を超えるという日々で、休みの日も休日出勤をしていました。それでも何とか堪えていたのですが、異動した学校でいきなり大変なクラスをもたされることになりました。保護者対応や新しい学校のやり方に慣れるため、さらに残業時間が増えていき、ついに身体が悲鳴を上げたというか、体調を崩し、倒れてしまいました。

その後、1年間休職したのですが、これからの人生を考えたときに、再度あの働き方をすることは考えられなくて、退職を決意しました。

Q.周りの反応はどうでしたか?

両親と同居していたのですが、両親からは「辞めて良かった」と言われました。間近で私の働き方を見ていて、電通の事件もあり、かなり心配だったようなので。

Q.教師の仕事は好きでしたか?

好きでした。子どもの頃から憧れてなった職業なので。でも、自分の生活を犠牲にし続けていたら、だんだんと好きという気持ちが薄れていきました。

Q.就職活動はすんなりいきましたか?

退職後、医療系の資格を取得するための勉強をしました。資格取得後、求人を探したのですが、業界未経験者を対象にしている病院が少なくて探すのに苦労しましたが、転職活動を始めて1か月程度で内定をいただきました。

面接で学校の先生だったという経歴を見られたら、「公務員なのに何で辞めたの?」と怪訝そうに対応されるかと心配していたのですが、意外に「学校の先生、大変だもんね」という感じで面接担当者の方に理解いただけたのは助かりました。

Q.今の仕事と教職を比較して、仕事内容以外にどんな違いがありますか?

今の仕事は残業が月20時間以下(1日1時間以下)です。しかも教員時代と異なり、残業したらしっかりと残業代も出ます。給料は教員時代に比べれば減額しましたが、きちんと残業代が出るので「納得感」がありますし、健康的な働き方ができているので、満足しています。

Q.今振り返って、教員を辞めたことに後悔はありますか?

まったくありません。辞めて良かったです。学校でたくさん良い経験もさせてもらいましたが、あの働き方はもう無理です。

Q.では、もう教職に復帰することはないですか?

はい。教員免許が失効してしまったので無理ですね(笑)

★まとめ

教員時代、時間外に業務をこなしていたとき、「仕事だ」と思って一心不乱に頑張っていたAさん。しかし今そのときのことを振り返ると、あれは残業代が出ていないのだから、仕事ではなくボランティアに過ぎなかった、残業代がきちんと出る仕事に就いて搾取されていたことを初めて実感した、と言います。

教員の人材不足に悩む学校・教育委員会。

彼らは、退職者の調査をしているのでしょうか。

おそらくほとんどの学校・教育委員会はしていないはずです。

なぜなら、一昔前まで公務員である教員を退職するのは、退職者の「個人的な事情」でしかなかったからだと思います。

でも、そんな時代はとっくに終わりました。退職者を減らすためには、退職してしまう“原因”を明確にしなければ減らすことはできません。

人材不足を嘆く前に、まずは今いる職員を大切にしたらどうでしょうか。

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