2019年の新語流行語大賞の候補になった言葉に『上級国民』という言葉がある。池袋自動車暴走死傷事故の際にネット上で用いられるようになった俗語である。
明確に定まった定義はないが、本記事では、
- 富裕層、政治家、官僚、一部の公務員など
- 一般国民と対をなし、政治力や財力などの力を利用して罪や責任から逃れられる階級
と定義して、話を進める。
私はこの上級国民という言葉を初めて見たとき、とっさにこう思った。まさに校長じゃん、と。
今回はそのように思った理由を挙げていく。
◆労基法違反を問われない
民間企業の経営者であれば、労働者に休憩時間を与えない、無賃で残業させるなどの労働基準法違反があれば、労働基準監督署から指導・勧告を受け、悪質な場合、罰則もあり、前科もつく。
しかし、公立学校の使用者である校長は異なる。
休憩時間を与えなくても、勤務時間外に無賃で残業させても、咎められることがほとんどない。
公務員の労働基準監督署にあたる人事委員会は存在するが、現実には適切に機能していない。
過去には裁判を起こした教員も何人かいるが、それらの時間の労働はあくまで教員の「自発的」行為であるとして裁判所からも退けられてきた。
いうなれば校長は裁判所からも違法行為の”お墨付き”をもらっている状態なのである。
「一般国民と対をなし、政治力や財力などの力を利用して罪や責任から逃れられる階級」というのが上級国民であれば、政治力や財力などは利用してはいないものの、公立学校の校長は一般国民(民間企業経営者)とは異なり、『上級国民』であることは間違いない。
◆一般教員とは異なる待遇
退職後の扱いも、同じ教育公務員であっても、校長と一般教員ではまったく異なる。
まず、元校長は一般教員に比べ、支給される年金額が大きい。
そして、元校長の肩書きで大学教授や研修センターの講師に「天下り」する者も少なくない。
さらに、(校長としてではなく)再任用で雇用された場合、一般教員とまったく同じ仕事内容にもかかわらず、ここでも給与が高いのである。
★まとめ
『上級国民/下級国民』の著者・橘玲氏は、日本を「近代国家のフリをした身分制社会」という。法律よりも”身分”が重要視されるからである。
教育委員会は校長という”身分”を『上級国民』扱いすることで、従順で教委に反発しない校長ばかりをつくることに成功してきた。
しかし、一方でここ数年、管理職を希望する一般教員が不足してきている。良識ある多くの一般教員は『上級国民』になりたくて教員になったわけではないからだ。
今後も校長を『上級国民』扱いし続けるのであれば、上級国民になりたい者しか校長を目指さなくなるという、悲惨な結果しか待っていない。
校長の『上級国民』扱いを直ちにやめ、労基法違反は裁かれ、退職後の待遇も是正されるべきである。