埼玉大学学生×教員超勤訴訟・原告先生の交流会を取材してきたら、初見の話が色々聞けた

昨日、埼玉大学学生主催の未払い残業代請求訴訟中の原告先生との交流会を取材してきました。

⇓です。

会の主な内容は、次の通りでした。

  1. 学生による現在の教育現場に対する問題提起
  2. 髙橋哲准教授(教育法)よる給特法の解説
  3. 原告先生より裁判についての話
  4. 弁護士から法律的な補足
  5. Q&A

本記事では、初出の話を中心に交流会についてまとめました。

◆高橋哲准教授による「給特法の矛盾」

まず最初に、教育法を専門とする、埼玉大学・髙橋准教授から「給特法の矛盾」について解説がされました。

その全ての話は到底ここでは書ききれない量と質だったので、ポイントだけを取り上げます。

  1. 1969年時点の残業時間調査を前提とする、教職調整額「4%」の正当化が失われてしまっている矛盾
  2. 不支給自治体の存在から、「代替措置」とする調整額が形骸化している矛盾
  3. 「自主的勤務論」との矛盾、本来趣旨との矛盾、特殊勤務手当を支給している矛盾

詳しくは5月以降にまとめたものが公表される予定だそうです。

◆原告先生の主な話

次に、原告先生の話でした。ここでは全てを書ききれないので要点だけを抽出します。

「訴訟を考え出したのは昨年の今頃」

「訴訟を起こした理由は、健康被害が生まれるような長時間労働を次の世代に引き継いではいけないと思った。また、このままでは勤務校を良くすることはできるが、日本を変えることはできないと思った。日本を良くしていきたい」

「この定年退職直前のタイミングになった理由は、攻撃される可能性を考えたときに最小限にとどめたい、かといって黙ってこのまま終わるのも許せない、そのギリギリのタイミング」

「過去の超勤裁判の関係者に相談したが、『給特法があるからやっても勝てない』と言われ、みんな諦めていると思ったが、誰かがやってくれるわけはないので自分がやらないといけないと思った」

「この問題についてTBS『林先生の初耳学!』で取り上げられるなど広まってきた。世の中に知ってもらう事も訴訟を起こした目的の一つ」

「遅くても今月中にはこちらの訴状、意見陳述書など、県の答弁書を公開するサイトを開設する。すべてを明らかにして、みなさんと一緒に考えながら、裁判を進めていきたいと考えている」

「昔は自由があった。職員会議でみんなで話し合って決めていた、だが、今は職員会議は『諮問機関』になってしまった。校長に権限が集中している。これが超過勤務と関係している」

「校長は教員に(勤務時間外でも)やらせたいことがあれば、その業務を勤務時間内に”割り込みさせる”方法でやらせている。本来その時間にすべきだった仕事は勤務時間外にやらざるを得なくなり、それは”自主的”と評価されている。そういう現状がある」

他にもたくさんの話をされていましたが、主な話だけをまとめました。

◆弁護士の話

弁護士の先生からも本訴訟について補足がありましたので、ポイントだけ抜粋します。

「なぜこういう請求にしたかというと、教員だけが残業が評価されていない現状について”おかしい”と正面から問いただすため」

「現在の教員の働され方は、当初給特法が想定していたものとは違っている。(残業代は無限にさせるけれど残業代は出さないという)管理者にとっての“良いとこどり”になっている。端的に言えばこれがこちらの主張」

「校長によってどのような業務がどのように命じられているのか。教員はどのように働かされている(働いている)のかについて細かく検証していくことになる」

「次回の公判は、5/17(金)10:30〜さいたま地裁C第105法廷で行われる予定」

◆Q&A

そして最後に、学生さんをはじめ参加者からの質問タイムが設けられました。

Q.田中先生は教職員組合に加入していますか? なぜ組合と協力していないのでしょうか?(学生)

A.答えるのが難しい質問(笑)。組合には現在は加入していません。昔は入っていました。組会関係者には失礼にあたるかもしれないが、辞めた理由は、労働者にとっての組合だけでない別の活動に力を入れているから。労働のことだけに関わってくれる教職員組合があったら協力してもらっていた。最初、訴訟を起こす前に地元の組合に相談したが、なぜか無反応だった。

Q.今からでも組合にできることは何かありますか?(教職員組合関係者)

A.私は本来労働者は全員、労働組合に入るべきと考えている。しかし、先ほど述べた理由から入れない。全員が入れる教職員組合にしてほしい。費用についても月1000〜2000円くらいにして誰もが入れる組合にしてほしい。プロ野球選手だって全員が組合に入っているくらいなのだから。

★まとめ

埼玉大学教育学部の学生がこの交流会を開いた理由は、第1回の裁判を傍聴して、学生をはじめ多くの方にこの問題を知ってもらう、そういう場をつくりたかったからだそうです。

当日の運営・進行もすべて学生が行っていました。

彼ら学生たちの尽力により、今回原告先生や高橋准教授から新しい話を聞くことができましたので、広く皆さんに共有したいと思います。

今後は、近いうちに開設されるサイト5/17(金)10:30〜さいたま地裁での裁判も要注目です。

※なお、本記事公開内容いついては関係者には了承済です

◆新刊のお知らせ

コメント

  1. 藤川伸治 より:

    こんにちは。藤川です。時間外勤務手当支給訴訟と公務災害不認定に対する行政訴訟、又は安全配慮義務違反を争う民事訴訟とでは、時間外勤務に対する裁判所の判断が異なります。時間外勤務手当訴訟く公務災害認定訴訟く安全配慮義務違反訴訟という順番で時間外時間と認定されるかどうか要件が厳しくなります。鳥居裁判で包括的職務命令が認められたことから、普段の時間外勤務も命令されていると捉える主張もあやまりです。公務災害は、あくまで公務遂行上必要だったかどうかを争うもので、職命の有無を争うものではありません。