小学校教員時代、私はTOSSに数か月所属していたことがあります。
TOSSを知らない方のために一応説明しておくと、TOSSとは、Teacher’s Organization of Skill Sharing(教育技術法則化運動)の略で、元小学校教員・向山洋一を代表とする、教師の教育技術についての方法を提唱する集団のことです。
平たく言うと、教員の私的な勉強サークルです。
このTOSS、教育業界でも賛否両論があるのですが、今回は実際に数か月所属し、活動していた私がTOSSに入った理由・辞めた理由について、まとめました。
◆私がTOSSに加入した理由
インターネットで近所で活動していることを知った私は、お試しで何回か勉強会に参加しました。
その勉強会は10人前後の規模で、先生たちは近隣の自治体から集まってきているようでした。
勉強会の内容は、各々が実践した教室での成功指導例を発表・共有をしたり、模擬授業を行って授業力を向上させたりするものでした。
私はそのお試しの勉強会で、次の3点の理由から活動に参加してみることにしました。
- TOSSの先生たちは授業への工夫を熱心に行う等、教育への熱意があるように感じた
- 勉強内容が学校での校内研究や自治体の研修と違い、挑戦的で実用的
- お金がかからない
まず1ですが、ただでさえ忙しいなか、給料も出ないのに夜遅く集まって勉強している時点で熱意があり、実際、参加されていた先生たちの勉強量指導のレベルも高いように私は感じました。
2については、学校や自治体のによる揚げ足をとられないための当たり障りのない形式だけの研修とは異なり、私的なサークルである特性を生かして挑戦的・実用的な内容を勉強していて、これは為になると思いました。
3については、有名な先生のセミナー等は数千円とられるみたいでしたが、私は一切行かなかったので、勉強会が行われていた場所(地域の公民館的な場所)の場所代、2時間数百円だけしか、かかりませんでした。
そんなこんなでTOSSの勉強会で得た知識を教室に帰って実践、ということを数か月続けて、たくさん勉強になったし為にもなったのですが、段々と疑問を感じるようになることも起きて、ついには辞めてしまいました。
◆TOSSを辞めた理由
TOSSを辞めた最大の理由は、本業が忙しくそれどころではなくなってしまったことなのですが、それ以外にも大きく3つの理由がありました。
- 宗教的な匂いを感じた
- 政治的な匂いを感じた
- 「予算ランキング」をつくっていたこと
まず1ですが、宗教的だなあと感じることが多々ありました。例えば、多くの会員がTOSS主宰者の向山先生をはじめ著名な先生方を尊師の如く崇めていて、内容を精査せず、“その先生たちが言っている指導法=正しい”みたいな場面が多く見受けられました。教育は正解がないので、何か絶対的なものにすがりたくなるなる気持ちは分かるのですが、著名な先生方にそこまで傾倒していなかった私にとって違和感を感じるものでした。
2については、
こんな感じで、TOSSがかなり保守的な政治信条をもった団体ということが分かると思います。草の根の勉強会でも、自虐史観に基づかない歴史の授業や戦後70年安倍談話を肯定する授業を行ったりしていました。私個人としては、日教組の左翼的な教育もどうかと思いますが、同じようにこちらの保守的な教育もどうなのかなと首をかしげざるを得ませんでした。
3については、TOSSはこのような勉強会やセミナー以外にも、日本の伝統的な文化を子どもたちに伝える、ということで、土日や長期休暇に百人一首大会を開いたり、指導をしたりしているのですが、この活動には文化庁から支援(公金)が入ってます。TOSSでは予算の取り方のマニュアルを回し、「予算ぶんどりランキング」まで作成して各支部でいくら取れたか競い合っていました。2の政治とのつながりもあったので、正直引きました。
★まとめ
TOSS、先生たちは子どもの教育に熱心で、指導法など勉強になることもたくさんあったのですが、結局私は上記のような理由もあり、辞めてしまいました。(それどころか教員も辞めてしまったのですが)
教員を辞めてから、2分の1成人式も発端はTOSSと知り、ショックを受けました。
良いところもあるのですが、教師が純粋に勉強のみできる組織ではない、これが私の今のTOSSへの印象です。
なお、念のために書いておきますが、TOSSと一口にいっても全国それぞれの場所で活動内容は異なると思います。本記事はあくまでも私個人の経験であり、考えに過ぎません。
以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「数か月活動していた元教員の私が語る、TOSSに入った理由・辞めた理由」でした!