元教員が挙げる、教員の労働環境をホワイトにすることで得られる子ども・保護者・社会が受けられる恩恵~10選~

ブラックな労働環境が度々話題に挙がる学校現場。

教員、週60時間以上の労働が7割超 勤務時間「管理もルーズ」(出典:日本経済新聞2017年1月26日)
ブラック公務大賞は文科省=20代の教員20人が過労自殺(出典:BOLOGS国家公務員一般労働組合2016年12月23日)

世の中では民間企業も同様に「ブラック企業」が蔓延っている現状がありますが、一方で、労働環境をホワイトにすることで、売り上げを伸ばす民間企業が出てきたというニュースも報じられています。

“ワンオペ”で叩かれた「すき家」のいま(出典:ITmediaビジネス2016年12月6日)

これを見て私は、教員の労働環境をホワイトに改善する(勤務時間内で終了する業務量にし、週休完全2日を実現する等)ことで得られる恩恵が教員だけでなく、子ども・保護者・社会の側にも大きいのではないかと思いました。

というわけで今回は、「教員の労働環境をホワイトにすることで得られる子ども・保護者・社会が受けられる恩恵」について」10つにまとめました。

1.授業の質の向上

何といっても、まず授業の質の向上が見込まれることではないでしょうか。

現在、あまりに忙しすぎて多くの教員は何も準備せずに授業に臨むことも少なくありません。

しかし、勤務時間内で終わる業務量に減れば、教員は授業の準備を十分に行うことができるようになります。

これは子どもたちの学力向上に資することになります。

2.きめ細やかな対応

今、教員はあまりの仕事(調査や新たな施策)の多さに子どもたちに十分に向き合えているとはいえない状態です。

これらを削減し、教員が子どもと向き合うことができれば、子どもの話をよく聞いてあげたり、休み時間に一緒に遊んであげたりできるようになります。

また、子どもたちからの相談や放課後の補習等、一人ひとりにきめ細やかな対応ができるようになります。

より子どもたちと信頼関係を築くことができるのではないでしょうか。

3.アクシデントやトラブルへの対応もきめ細やかに

アクシデントやトラブルが起きたときも同様です。

子どもへの対応だけでなく、保護者への対応についても、余裕があればもっともっときめ細やかな対応ができるはずです。

これは子どもにとっても、保護者にとっても良いことではないでしょうか。

4.万全の体調で子どもに向き合える

今の学校現場の教員は本当に文字通り疲弊しています。

休職までいかなくても体調を崩して欠勤する教員も少なくありません。

また、欠勤しなくても疲れ果てた状態で子どもに向き合う教員も多いです。疲れ果てた状態で子どもに向き合うのと、体調万全で子どもに向き合うのと、どちらが子どもたちに良い影響をもたらすかは自明のことです。

5.休職者を減らすことができる

今、学校現場では年間で約5000人の休職者が出ています。

精神疾患で休職教員5009人 15年度(出典:毎日新聞)

休職者が出てしまうと、休職者への給与負担、新たに採用する講師への給与負担、採用に係るコスト等、本来不必要な予算を計上しなくてはなりません。

言うまでもなく長時間労働は精神疾患をはじめとする健康リスクが高まります。

これを是正することにより、ある程度、休職者を減らすことが可能なのではないかと思います。

6.退職者も減らすことができる

休職者同様、本当は教員の仕事を続けたいにもかかわらず、劣悪な労働条件や健康問題により退職せざるを得ないケースもかなり多いのではないかと推測します。

多大なコストを払って育てた人材が、辞めてしまい、新たにまた一から採用して、教育を行うのでは余計なコストがかかってしまいます。

今働いている教員が働きやすいよう労働環境の改善を行えば、退職者も減らすことが可能です。

7.優秀な学生が集まってくる

報道やSNS等でブラックな労働環境が周知されているからか、教員志望の学生が6年連続で減少しています。

16年春の公立校教員採用倍率、5.2倍 6年連続で低下(出典;日本経済新聞2017年1月31日)

しかし、ホワイトな労働環境に改善できれば、学生の志望者が増え、採用試験の倍率も上がるでしょう。

そうなれば必然的に、教員の質が向上します。

教員の質の向上は、子どもや国の将来に大きな恩恵を与えるのではないでしょうか。

8.労働者の良き見本

幼稚園・保育園の先生と並び、小中学校の教員は、子どもたちが初めて出会う親以外の労働者です。

しかし、今はブラックな働き方を子どもたちに見せ悪い手本となってしまっています。

これを改善し、教員自らがホワイトな働き方をすることで、それが子どもたちへの良い手本、無形の教育となるのではないでしょうか。

9.脱「学校の常識は、世の中の非常識」

現状はあまりの忙しさで、自宅と職場の往復しかしていない教員も多いと思われます。

よって、学校の世界しか知らない教員が多いのが学校現場の実態です。

「学校の常識は、世の中の非常識」という言葉は、そのことを象徴しています。

しかし、もし勤務時間できちんと帰れれば、一人ひとりの教員が異業種の人と交流したり、自らの勉強をしたりする余裕が生まれると思います。

そのように、学校以外の世界を知り、視野を広げることで、それを子どもたちに還元することもできるのではないでしょうか。

10.(少しだけ)地元経済の活性化

民間企業では経済の活性化のために、今月から「プレミアム・フライデー」なる試みが始まるようですが、教員は金曜日は無理だとしても土日2日間しっかり休めれば、それだけで(微々たるものとはいえど)プラミアム・フライデー同様の効果があるのではないでしょうか。

現状ではあまりに忙しすぎて平日はもちろん、土日も休日出勤をしている教員は少なくありません。

もし教員がこの土日を完全に休めたら、家族や友人、恋人等と食事や買い物に出かけ、消費に貢献すると私は思います。

微々たる効果とはいえ、「お金はあるのに使う時間がない」に当てはまる教員は多いのではないでしょうか。

★まとめ

新しく予算をつけなくても、不要な行事や調査、研修、新たな取り組み等を削減すれば、ホワイトな職場に改善することは十分に可能だと私は思っています。

今の学校現場は不要な仕事が多過ぎるのです。

本来は民間に先んじて率先して労働環境の改善を行うことで社会の中での学校のリーダーシップを期待したいところですが、次期指導要領の学習内容の削減なしの増加等を見ると明らかに逆行していくようで、それははっきりと無理だと分かります。

しかし、電通社員自殺問題に対してのように、労働者が声を挙げ続ければいつかは必ず改善される問題なのではないかとも私は考えています。

なぜなら労働者(教員)だけでなく、子どもや保護者、広くは社会全体にとっても良いことがこれだけあるのですから。

以上、元小学校教員トウワマコトによる、「教員の労働環境をホワイトにすることで得られる子ども・保護者・社会が受けるメリット~10選~」でした!