自治体によっては、小学校段階から行っている算数の習熟度(レベル)別展開。
一長一短があることが知られていますが、今回は元小学校教員の私が現場教員の目線から改めて一長一短を3つずつにまとめました。
◆長所① 子どもの習熟度に応じて学習が進められる
何といっても、習熟度別にクラス分けする最大のメリットは、各々の子どもの習熟度・レベルに応じて学習を進めることができることです。
学級での算数と異なり習熟度別展開であれば、学力上位層の子どもたちにはどんどん難しい課題に挑戦し、下位層の子どもたちとはじっくり学習を進めていくことができます。
また、学力上位層が下位層を待たなければならなかったり、学力下位層が置いてきぼりになったりする回数も減ります。
◆長所② 教員の人員増
習熟度別算数を実施する自治体では、学年学級数+1人(マンモス校は+2人)の算数専科の教員が配当される自治体が多いです。
よって、教員の人員が増え、教員一人あたりが見る子どもの数が減ります。
これは学校現場にとっては大きいです。
◆長所③ 担任以外の授業を受けることができる
小学校は担任が受け持つ授業が大多数のため「学級王国」と揶揄されることがあります。
担任と相性が合わない子どもや(担任の力量が問題で)学級崩壊しているクラスの子どもにとって、担任以外の授業を受けられることはそれだけでもメリットがあるということができます。
◆短所① 担任が子どもの出来を把握できない
習熟度別展開の算数を取り入れる多くの学校では、学年で単元ごとにクラス分けをしています。
そうなると、担任が自分のクラスの子どもを学期間で1度も見ないということが多々あります。
もちろん代わりに学年の教員(あるいは算数専科)が見ているので、情報交換はしますが、やはり限界はあるし、自分が見ないと具体的に細かいところまで分かりません。
小学校では学級単位で動くことが多いので、例えば担任が成績を出すときや宿題を出すにあたって、担任がしっかりと子どもの出来を把握できないことはデメリットの一つです。
◆短所② 上位層は少人数にならない・下位層は焦らなくなる
習熟度別算数を少人数算数と呼ぶ自治体・学校もあります。
しかし、確かに学力下位層は少人数のクラスになるものの、学力上位層は大して少人数にはなりません。(下位層の人数を減らすのだから当然である。教員1人の加員では焼け石に水程度)
30人を超えるクラスで学習を進めることも珍しくありません。
また、学力下位層は、学級展開では自分のレベルが下だということで焦る場面でも、自分と同じレベルの子どもばかりが集められている習熟度別展開では焦る気持ちが希薄になるケースが少なからずあります。(下位層に振り分けられた子どもが劣等感を感じてしまうケースもあります)
◆短所③ クラス分けのコストがかかる
学級の算数ではかからない、次のようなコストがかかります。
- 単元ごとのクラス分けにはレディネス・テストを行う
- 子どもたちは教室の移動が必要
- 学級での算数と異なり、学年で動くので時間の融通もきかない
- 担任がいないところでの学級を超えた子ども同士のトラブルが起こることも
★まとめ
学級での算数と習熟度別算数、どちらの方が良いのでしょうか。
予算や子どもたちの実態との兼ね合いもあるでしょうが、私は個人的に小学校担任時代に、
- 学年教員(算数専科)が自分より授業が上手い場合⇒習熟度別算数が良い
- 学年教員(算数専科)が自分より授業が下手な場合⇒学級算数が良い
と考えていました。
同様のように考える子どもや保護者も結構いるのではないでしょうか。
なぜなら、一長一短だからです。
以上、元小学校教員トウワマコトによる、「現場目線で改めて小学校段階での習熟度別算数の一長一短について3つずつに整理してみた」でした!