元教員が3つ挙げる「ここがヘンだよ読書感想文」

夏休みの宿題でよく出される読書感想文。

これ、書くのに苦労する子どもが多いです。

ネット上の書き込みを見ても、子ども時代に苦しんだ思い出や我が子がなかなか書けなくて苦しんでいる様子を書き込んでいる人が見受けられます。

今回は、元小学校教員の私がこの読書感想文を巡るおかしい点を3つにまとめました。

1.本の批判はタブー

小学校教員時代、自治体で賞をとった作品を読んでみたことがありますが、当該本の批判を展開している感想文に出会うことが1度もありませんでした。

また、賞だけでなく、担任として受け取った感想文をでも同様でした。

たまたま私の勤めた学校・地域がそのような文化だった可能性もありますが、日本全国似たような感じではないでしょうか。

本の批判がタブーなのです。

読書「感想」文なのですから、本来、この本に書いてあることは面白くないとか、著者に一貫性がないとか、自由に書いてもいいと思うのですが、そういう感想文はありませんでした。

そういう感想文を書くのは難易度が高いからということもあるかもしれません。

しかし、それだけでは批判的な感想文を書く子どもが1人もいないことへの説明がつきません。

これは普段の授業から、国語の教材批判がタブーなのと同じだと私は思っています。

おかしいです。

2.教えてないのに宿題に出す!?

一般的に、読書感想文以外の宿題においては、「学校で教員が教えたもの」について、復習的な意味合いで出されることがほとんどです。

当たり前です。

宿題は教員が目の前で見てあげることのできないので、子どもが一人でできる課題を与える、筋が通っています。

しかし、なぜか読書感想文だけは、ほとんどの教員が学校で教えずに夏休みの宿題で出します。

実際、私が子どもの頃、教えてくれた先生はいませんでしたし、自分が教員になってからも教えている先生はごくごく少数でした。

学校できちんと教えないのであれば、宿題で出すべきじゃないし、宿題で出すのならば学校できちんと教えたうえで出すべきだと私は思います。

しかし、こういうことを言うと、次のような批判があるかもしれません。

読書感想文は「自由」に書かせることが大事であって、教えてしまうことで「型」にあてはめてしまうのではないか、と。

しかし、低学力の子どもにとって一番難しいのが「自由」であることです。自由=何を書いていいか分からない、こうなります。その証拠に読書感想文、どう書けば良いか分からず苦しむ子どもは多いです。

最低限の「型」を教えて、得意な子どもには「型」にこだわらなくて良いと指導するのが筋だと私は考えます。

学校で教えないのに宿題に出す学校(教員)、おかしいです。

3.ねらいは何? 業界のマーケティング?

学習指導要領では、国語科の「第5学年及び第6学年」の教育内容として

  • 「書くこと」の能力を育てるため「事象と感想、意見などとを区別するとともに、目的や意図に応じて簡単に書いたり詳しく書いたりすること」について指導すること
  • 「読むこと」の能力を育てるため「書かれている内容について事象と感想、意見の関係を押さえ、自分の考えを明確にしながら読むこと」について指導すること

と定められているので、これが読書感想文のねらいに合致すると思われる。

もっと平たく言うなら、「本を読み、考え、文章としてまとめる力をつける」、こんな感じでしょうか。

しかし、こんなのは建前上のねらいであって、本当のねらいは他にあるのではないかと私は訝しく思っています。

その理由は、読書感想文を利用して金儲けを企んでいる業界があるからです。

どういうことかというと、読書感想文の「課題図書」に選出されると、作者・出版社等に莫大な利益をもたらされる、という構造があります。

これについて、児童文学作家の山中恒さんは、と課題図書選出制度を次のように批判しています。

ふつう児童図書は、どんなに売れるといっても、年間四~五万部。だから「課題図書」になるかならないかは、出版社とりわけ規模の小さな社には大きな問題になる。「教科書の採択みたいなもの」と形容する出版社もあるほど「課題図書に一冊はいれば、三年分うるおう」という話もきいた。そのため「内容に冒険はできない。選考の傾向にあったものをねらって本づくりをする」と舞台裏を話す社もある。それだけに、一般には公表されていない〃覆面の選考委員〃に接近をはかったり……。ことしも「課題図書」は他の児童図書をしり目に売れるだろう。(出典:朝日新聞「読書感想文コンクール・『課題図書』は曲がりかど、教師の指導にゆがみ、押しつけ、買うのは親」1972年5月20日)

要はこの読書感想文、業界のマーケティングに使うのが本当のねらいではないのか、ということです。

彼らの金儲けのために、子どもたちは書けない書けないと苦しみ、教員は(勤務時間外に)全員分の読書感想文を読まなくてはならないの(賞の選考も)です。

おかしいです。

★まとめ

読書感想文、図工のポスター作品のように提出したい人だけコンクール等に提出するような形にすれば良い、というのが私の考えです。

全員絶対提出の宿題にするから、色々と業界の思惑が絡んできたり、学校側の矛盾が露見したりするのだと思います。

読書感想文、もう全員提出やめましょう。

以上、元小学校教員トウワマコトによる、「ここがヘンだよ読書感想文」でした!

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