【文字起こし】4月25日国会・文部科学委員会「主務教諭導入は給与引き下げの可能性」

Q.大石あきこ議員(れいわ新選組)

自己紹介がてら、この文科委員会で法改正の議論をしていますけれども、その時の私のもっぱらのスタンスというのはあらかじめ申し上げておきたいと思いますが、「とにかく残業代を払ってください」と、そういうことなんです。

もう、お願いだから残業代を払って、ということばかり、もっぱらそういう質問を重ねてまいりましたので、ちょっと1問目は違うことをお聞きしておきたいなと思います。

まず、高橋参考人にお伺いします。今回、主務教諭の新設というのが法改正で提案されておりまして、高橋参考人が資料3などで、東京の主任教諭の経験からして、これは思わしくない、逆に賃金が下がる、そういうメリット・デメリットのものになる可能性があるとお示しになりました。

文科省は、義務教育費国庫負担金の算出根拠を維持することから、教諭の基本給を引き下げることは想定していないとこれまで答弁しているんですけれども、その可能性は本当にないのかなというところに非常に疑問があります。

先週の文科委員会でも、(確か)辛子委員と記憶していますけれども、東京都の例なども念頭に置かれているのかなと思いますが、それは自治体次第じゃないのかと。自治体の方がお金を下げてきたら、やはり下がることになるのではないか、それを担保できるのか、という趣旨のご質問をしていたと思うんですけれども、高橋参考人はその点についてご知見いただけるとありがたいです。

高橋哲(大阪大学大学院准教授)参考人

今ご質問がありました義務教育費国庫負担金の算出根拠というのは、あくまでその通り、各自治体に国庫負担金を支出する際の算定根拠、一人当たりの教員の給与の算定根拠を示しているものに過ぎません。ですので、これが算出されて各自治体に配分されたとしても、それを使わなければいけない義務というのは自治体にはございません。

なおかつ、算出根拠というのは国が支給する1/3のみを算出しているものであり、残りの2/3は各自治体が負担しなければならないものとなっています。

この自治体負担が非常に苦しくて、過去には義務教育費国庫負担金の返納というものが実際に行われてまいりました。その意味で、現在この給与負担が厳しいという自治体においては、一人当たりで送られたお金を正規雇用の教員一人を雇うのではなく、数名の非常勤を雇うことで時間給にして安上がりにして、それで人件費を節約するということが行われてきました。

しかしながら、先週の参考人質疑で琢磨参考人がおっしゃっていたように、そのような非常勤というものをもう使い切ってしまって、枯渇してしまっているという状態になっています。もはや自治体にとっては、この人件費を節約する術がなくなっている状態です。

この中で共有というのが導入され、「給与格差をつけろ」と言われたならば、むしろこの共有の基本給というものを下げるという絶好のインセンティブが与えられることになると思っています。なおかつその場合、給与を引き下げた自治体に対して文科大臣から「引き下げないように」という意見等が出ているということがありましたが、それはあくまで意見であり、拘束力は全くありません。

現在文科省は、給与の引き下げを仮に自治体がした場合に、それを食い止める術を全く持っていないということを、ここで強調したいと思います。

Q.大石あきこ議員(れいわ新選組)

高橋参考人にお聞きしたいんですけれどもね。確かにこのことは多くの方がご存知ないかもしれませんね。国が1/3で自治体が2/3ということですね。

本来ならば国から満額もらえるものはもらいたいと思うんですけれども、しかし2/3を賄うことが難しいことから、返納までしなければいけないというのは、かなりのことです。このようなことが実際に起きている以上、その可能性は高いのではないかと思います。

そうしますと、やはり国負担というのも、もっと国が負担していくべきではないかと私は考えますが、高橋参考人はご意見ありますでしょうか。

高橋哲(大阪大学大学院准教授)参考人

私はまず、この国庫負担金の負担率を元々の1/2に戻していくということが最低限必要だろうと考えております。

なおかつ、この負担金というものが、ちゃんと正規雇用教員というのを採用できるように、非常勤で分割するという仕組みをやめて、しっかりと定数配置された教員に支給されるような仕組みが必要ではないかと考えております。

Q.大石あきこ議員(れいわ新選組)

次は、他の参考人にもお伺いしたいと思います。

お聞きしたいのが、「残業代をお願いやから払ってください」ということなんですけど、先週も参考人質疑が行われまして、そのときに中教審のメンバーの方も参考人として来てくださったんですね。そのときに私、「その時間外、いわゆる在校等時間はこれは労働ではないんですか?」と聞いたときに、その参考人の方も「労働時間です」とおっしゃっていただいたんですね。

だけど、「聖職者論」だったりとか、「自発性の問題だ」というふうにもおっしゃっていて、私はそれを全否定はいたしませんが、そこは置いておいても、やはり労働者ですから、何らかの時間外、在校等時間も労働時間として、お金が措置されるべきだと思ってるんですよね。

そういった自治体の実例もありますので、もうそういうふうに幅広く公務として認めて、お金を出していくという仕組みは、これは認められたり、普及していくべきではないかと考えるんです。

一つの例として、大阪府。私は大阪府の元々職員だったんですよね。大阪府の教育委員会が、平成12年からすでにやっているんですけど、部活動ですね。特に公式戦に出るとなれば、先生方が連れていかなきゃいけないし、事前の先生方の会議とかも、かなりみっちりあるらしくて、それを平成12年から公務と見なして、すでに導入されているんですよね。

例えばこれは午後からの質疑の際に資料配布しているんですけど、今回は配布できなくて残念なんですが、たとえば「生徒引率を伴う公式戦への参加」であれば、旅費の支出も可とする、公務災害の適用もある、休日等の振替も可、ということで、時間外に公式戦や土日に活動があるわけですが、それを振替休日にできるということなんです。

日中、平日の労働と振り替えるわけですよね。そこまでを公務と見なしてやっている制度というのは、これはもう進めていった方がいいんじゃないかと考えています。

その考え方を広げて、公務として認めていくということ、いいんじゃないかと。それについてどう思いますか?また、このような例は私は大阪の例を出しましたけれども、全国でそのような事例があれば教えてください。

戸ヶ崎勤(戸田市教育長)参考人

私の立場は、あくまでも文部科学省の監督権者という立場ですので、給料の支払いを行っているわけではありません。任命権者としての回答はできないのですが、様々な手当等について充実させていくことに対して反論は当然ないと思います。

ただ、先ほど申し上げたように、時間外勤務手当ということになってきた場合、現行の給特法の中では、ご存知の通り「超勤四項目」、昔から「歯止め四項目」と呼ばれていたものですが、それ以外には時間外勤務を命じることができないという点については、そこは準拠していかなくてはいけないだろうと思っています。

だからといって、大事なことは、先ほども話が出ていましたが、学校のマネジメント。いかにして時間外をなくすかというマネジメントを、並行してしっかりと進めていかなくてはいけないのではないかと。それを両立させていくことが重要だと考えています。

この給特法の問題というのは、私の個人的な考えではありますが、教員というのは3つの立場があると思っています。

1つは、学びの行動を導く専門職としての立場。
もう1つは、労働者としての立場。
さらには、教育基本法にある崇高な使命を担う専門職業人としての立場。

この3つの立場を包含しているのが、この給特法なのではないかというふうに思っています。

ただこれは正直、表現が正しいかどうか分かりませんけれども、「ガラス細工」のような非常にセンシティブで難しいところがあって、さらにはいわゆる給特法だけではなくて、先ほど出ている労基法だとか、さらには今、話には出ていませんでしたけれども、様々なそれ以外の法律とも絡み合って、それぞれの「ずれ」と言うんですかね。法律の中にある微妙なずれのようなものが、今の方々も、それから現在もそうですけれども、知恵を出しながらどこでうまく合わせたらいいかということに苦慮しているのだろうなと思っています。

ただ、ここで強調しておきたいのは、教師という人が様々にリスペクトされて、しっかりと正しい処遇をされて、働きやすい職場で、やりがいを持って仕事をしてもらいたいという思いは、みんな同じなんじゃないかなと思いますので、そのことだけ強調させていただいて、全然答弁になっていませんが、述べさせていただきました。ありがとうございます。

Q.梶原貴(日教組中央執行委員長)参考人

労働者としての観点で見ると、この法の仕組みが本当におかしなことになっている一つの例として、子どもたちの評価に関わるテストの採点があります。中間テストが終わって、例えば定時の前に採点を始めた場合、定時までの採点は業務として扱われますが、それを過ぎると、今の給特法では自主的・自発的勤務と整理されてしまいます。

生徒・子どもの評価に関わるこんな重要な業務にもかかわらず、自主的・自発的と整理されてしまうのはおかしいと私どもは思っております。ですから、そういう制度がすでに現実に合わなくなっているというのが一点。

それから、先ほど部活動の話が出ましたけれども、これもやはりおかしなことになっていて、平日の定時後の部活動については何ら手当ては払われません。これも自主的・自発的勤務として整理されています。

ところが、公式戦など、土日の勤務に関しては、自主的・自発的勤務とは言いながらも、特別業務手当が支払われていて、校長が判を押していますから、校長のある意味での指揮命令があるものと理解しています。

この点においても、労基法と給特法のずれが明らかになっているところです。ですから、私どもの立場としては、限定4項目というのはもう現実に合わないものであり、給特法6条の削除が必要だと考えています。

学校でやっていることはすべて業務です。例えば学校の中で、時間外であっても、時間内であっても、本当に高度な学術書を読んでいる教員はなかなかいないと思います。それは家に帰って読めばよいことであって、学校の中で行っていることは子どもに関わることですから、すべて業務だと思っております。以上です。

渡辺陽平(全教委員長)参考人

私は、長時間勤務の4項目についてはやはり遵守すべきだと思っております。

さまざまな業務、教職調整額の仕組みをしっかりと維持して、その中で私たちの業務を行っていくのがよいと、先ほどから申し上げているとおり考えています。

その中で、部活動については私も携わっています。やはり、土日の児童引率であったりとか、平日や土日の長時間の部活動もあります。

部活動については、現場に聞くと様々意見が分かれるところです。「部活動が大変な負担になっている」「部活動をしっかりやっていきたい、子どもたちの成長のために非常に大きなものだ」という意見もあります。

その中で、私がぜひお願いしたいのは、部活動の改革をしっかりと進めていただいて、部活動の地域への移行です。それを行った上で、教職員の中でも部活動を担当したいという者には、しっかり職務権限の仕組みを整えていただくのが一番良いと考えております。以上です。

高橋哲(大阪大学大学院准教授)参考人

手短にお答えさせていただきます。私も、部活動を含めて公務にすることには賛成です。そこで公務として認められ、旅費が支給され、特殊勤務手当が支給されるのであれば、それは紛れもなく労働時間に該当します。

Q.大石あきこ議員(れいわ新選組)

これは、時間外勤務手当を支給すべき対象業務として明確にすべきだというのが私の見解です。以上でございます。参考人の皆様、ありがとうございました。終わります。