【文字起こし】5月13日国会文部科学委「教師が担うべきではない業務を決めるべき」

亀井亜紀子議員(立憲民主党)

今回、この給特法の審議、先週本会議で総理の質疑があって、そして今週委員会で質疑をしているんですけれども、その中で、その給特法という仕組みについて、創設時と今、その現実、その理念から駆け離れていることは間違いがないわけですが、その中で、給特法をこのまま残したままの改革で大丈夫なのだろうかという、いろいろな質問が委員会の中でもございました。

同じようなことが中教審の中でも様々な見地から述べられたんだと思いますが、最終的にこの給特法という仕組みを残した中での改革に至った経緯と、あとこの給特法を逆に廃止してしまった時にどんな問題が起こりうるのかということも含めて、貞広参考人、それから青木参考人にまずお伺いいたします。

A.貞広齊子(千葉大学教授)参考人

先ほど私の意見陳述の中でも申し上げました通り、この問題に関しては会議内外にも様々なご意見があり、様々なご意見を出していただきながら審議をいたしました。

その中で、これも先ほど申し上げた形で、重ねて恐縮ですが、日々子供に向き合って思いもよらない事態に対応している先生方のお仕事というのは、「これをやりなさい」「このようにやりなさい」「この程度やりなさい」と校長先生に命令をされるのではなく、自主的・創造的に行うものであるということを考えると、時間的な管理ということが、外形的な管理を想定する、いわゆる時間外手当という形よりも、やはりこの給特法という仕組みの方が適合的であろうというような結論に至ったわけです。

ただし、給特法の本来の趣旨を機能させるような状況にはないということも合わせてしっかりと検討されていて、このしっかりと機能させるためには、今回この3本柱で先生方の学校の環境を改善する必要があるということになったわけです。

とりわけ、時間外勤務の許容性を限定する、つまりしっかりと本当に勤務時間以外の業務を限定するということや、抑制的で許容範囲の時間外勤務に見合った調整額にするということが重要であるということで、今回答申させていただいたところでございます。

もしその給特法という仕組みを違う仕組みにした時にどういうことが起きるかという想定ですが、これは若干私見になりますけれども、私としては、安定的に、安定性、必ず出していただけるという安定性と、地域の財政勢力に左右されず、しっかりと国の仕組みで先生方の処遇を満たしていくということの重要性を鑑みて、やはり非常にその時間外勤務手当という形には不安があるということです。

国のルールに書いてしまえば、お金を出す側を——こういう言い方申し訳ありませんが——縛ることができます。残業代という形で制度化をしますと、その原資やどこまでを支払うのかということを地方に委ねることにもなります。地方の財政力が違うことを鑑みまして、これは実行面で不安があるというのが私なりの見解でございます。

青木栄一(東北大学大学院教授) 参考人

まず教職調整額の必要性ということですが、貞広参考人のお答えに私なりに付け加えさせていただきます。貞広参考人のお話しされた内容について、私も違和感なく受け止めています。

まず教員業務の特性ということは中教審でも議論されましたが、これを私なりに2つに分けてお答えしたいと思います。規定部分にある、第1層と言っていいと思うのですが、そこには教員業務の第一層には専門性というものがあると考えています。

こちらは自発性や創造性という言葉で表現されているものでありまして、昭和41年の勤務状況調査の項目を見ますと、「授業準備」という項目がありまして、全体の業務の中でこちらの業務が比較的多くされていました。

他方、第2層にあたる部分、こちらが公共性と呼ばれるものと私は理解しております。第1層が専門職性、教員の専門職的なモデル観というのがあるわけですが、これに対して第2層は、どちらかと言いますと、聖職者モデルに近いものではないかと考えています。いわゆる熱血教師モデルですね。

こちらは、給特法成立時には相対的にはあまり意識されていなかったところでありまして、国立大学法人化で国立学校が給特法の対象から外れて、より意識されるようになってきた。つまり、公立学校というのはユニバーサルなサービスを提供しなければいけないので、いろいろな児童生徒に対応しなければいけないので、教員の業務も多様で、困難度が増しているということです。

実は、昭和41年の勤務状況調査の項目でも「緊急の校外指導」というような項目がありましたので、当時からやはりこの第1層の専門性、第2層の公共性、両方が含み込まれた制度設計だったと思います。

もちろんご案内の通り、この専門性が現在はなかなか十分発揮できないということが問題になっているわけですが、今般の働き方改革はこの第一層に向かってアプローチするものと理解していまして、じっくり授業準備や教材研究ができるようになれば、給特法本来の機能が発現するというふうに理解しております。

また、「時間外勤務手当になった場合」というふうにお尋ねを理解しましたが、仮にそうなったとしましたら、やはりタイムマネジメントが制約条件、課題になろうかと思います。

実は、前回の給特法改正の時に導入された変形労働時間制、1年間の変形労働時間制に関しては消極的なご意見が様々ありましたが、私の理解では、その根底にはタイムマネジメントが十分各学校で機能していないのではないかという疑念があったのではないかと思っております。

現在、例えば在校時間の把握等々は進んではいますけれども、やはり必ずしもタイムマネジメントが十分ではないということであれば、時間外労働、残業手当化した場合には、各学校でのタイムマネジメントの良否というのが如実に現れてしまうのではないかという懸念を持っております。

亀井亜紀子議員(立憲民主党)

給特法のまま仕組みを維持した中でも、とにかく仕事量を減らしていかなければいけないというのは、これは共通の認識です。で、どのように減らすかということなんですが、事前に私、佐久間先生、それから末富先生ともお話をさせていただいたことがあるんですが、お二人の注目されている点がちょっと違ったんですね。

つまり、佐久間先生の方は教員の中核的な仕事がとにかく増えているので、ここを減らさなければどうにもならないと。実は私たち党内の会議で財務省と話した時に、財務省は文科省が三分類で仕事を分けておきながら、何も業務削減していないじゃないかと、何も起きていないじゃないかということに対して苛立ちを覚えていたんですね。

それで、教員が担うべきではない仕事について、例えば文科省が「これはやってはいけません」というふうに通達を出したら、先生も現場の先生も断りやすくなるんじゃないだろうかという発言があって、なるほどなと思ったりしたんですけど、そのことについて琢磨参考人は、「いやいや違う。もうとにかく教員がやらなければいけない仕事が増えすぎているので、ここを減らさないとどうにもならない」とおっしゃってたんですね。

となると、学習指導要領の中身を縮減するしかないのではないかと思うわけなんですが、どうやって教員の仕事を削減していくべきなのか、佐久間参考人と末富参考人にお伺いいたします。

A.佐久間亜紀(慶応大学教授)参考人

教員の中核的な仕事、つまり授業や子供に関わる仕事が今増えているということ。この現状を、私の先ほどの陳述でも二つの段階に整理して述べさせていただきました。

まず現状では、いるはずの先生がいないという実態があります。ここに手を打っていただかなければ、学習指導要領の時間をこなすという以前に、そもそも一人だけの仕事では済まなくて、いない分の先生の仕事を被らなければいけない。

私どもの調査では、ある県の欠員分の人数を学校の数で割ると、平均で複数人の先生がいないという計算になっています。ですので、その分の仕事を皆さんが自己犠牲的に被ることで、今必死に支えているという現状があります。

このことを改善することなしに、長時間労働の改善というのはなかなか難しいというのが第一段階目です。その上で、教員がちゃんと揃った後の話ですけれども、そうしたとしても、今までこの衆議院の委員会でもずっと議論していただいているところなんですけれども、教員の持ち時間というのが多すぎるということがあります。

一時間の授業をするのに一体どれだけの時間が必要かということです。今の文科省の解釈では、例えば短い授業をする場合には同じくらいの事前準備が必要だということになっています。

さらに、当時なかった探究的な授業というのが今求められています。総合的な学習の時間であるとか、高校ですと探究の時間。つまり、先生がトーク&チョークといって、黒板の前で喋り続けて生徒に説明するような授業でしたら、そんなに準備が少ない時間で済むかもしれないんですけれども、課題を出して子供たちに議論させて、その探究を一人一人寄り添っていくというような授業を準備しようとすると、とても準備時間が足りないということになります。

ですので、例えば学習指導の時間を一方で減らす。それは子供の勉強時間を減らすということになるんですけれども、同時に先生の授業時間に対する準備時間も考慮に入れた負担数というのを考えていただきたい。

例えば、総合的な時間でしたら、一コマの授業をするのに二コマ分の準備時間が必要だとかですね。そういう組み合わせで、教員の負担が一定になるように縮減していただきたいというふうに思っています。

もう一つ申し上げたかったのは、先生が担うべきではない仕事というのをもし決めていただいたとして、学校の先生方が断れるようになるというのは、教員の労働の観点からすれば良いことかもしれません。

しかし一方で、断られた子供や困っている保護者は一体どうなるのかという問題がございます。ですので、教員が担わなくていい、あるいは担うべきではない仕事というのを決める際には、ぜひそれを担う別の人材が確実に学校に配当されて、そして子供や保護者の皆さんがこれ以上困ることのないようにお考えをいただきたい。そのための予算措置も講じていただきたいというふうに考えます。以上です。

末富参考人(日本大学教授)

はい、まずですね、現場の先生たちが確かに授業や授業準備の部分で多忙化しているというのは確かです。

合わせまして、特に新人の先生たちに聞くと、通知表の所見がすごく大変だということで、実は観点別評価ですとか、あるいは通知表をつけるといった評価のコストもかなり高くなってるんですよね。

そうしたところは、できるだけ簡素化した方がいい。ただ、保護者自身は子供の学びを知りたいので、その部分は学校のDXを利用して、子供の学習の記録を、子供が納得した上で保護者が見られるようにしたら、「うちの子、結構頑張ってんな」というのが分かると思いますので、無理に通知表に依存しなくてもいいんじゃないかとは思っております。

しかしながら、多忙の実態というのは本務もそうなんですが、本務ではない事務的な手続きも含めて、人数が絞られている中で、非正規教員ではない正規の先生方が全部担わなきゃいけないというような実態もありまして。

だからこそ、私、教員不足をなくそう緊急アクションでは、本務の部分も含めてやはり上限を決めていただきたいという点を申し上げております。

それ以外の業務については、自治体がしっかりと学校に投資してくださって、子供と先生を応援するように。教師が担うべきではない業務を決める時に、業務改善計画を策定するというのが根拠法改正のポイントで、そこで要するに何にいくら投資すればいいかというのが分かるはずだという考え方なんですよね。

だからこそ、教師が担うべきではない業務を決めることで、業務改善計画が機能するはずだという考え方を取っているということです。そのようにしなければ、先生たちが今抱え込みすぎている本務以外の部分の業務は、ちゃんと分担できないというふうに捉えています。以上です。