【文字起こし】5月21日国会(参院)本会議 給特法改正案について 各党vs石破総理

石井正博議員(自由民主党)

私は会派を代表して、教員給与特別措置法等の一部改正案について質問いたします。

昨年10月、そして衆議院議員選挙後の11月、総理はこの参議院本会議場での所信表明演説で、私たちに「人づくりこそ国づくり」と力強く語っておられました。

私は岡山県知事の時、知事会を代表して中央教育審議会委員を務めたことがあり、教育は最も大切な国家の基盤であると考えておりますが、とりわけ我が国は他国と比べ、化石燃料・金属や鉱物などを自前で調達できる天然資源に乏しく、自然災害が多いことから、一人ひとりが持つ可能性をそれぞれ最大限に引き出していく教育こそが、国家や地域を維持し発展させていく根幹になると考えております。

そこで総理は「人づくりは国づくり」と述べられた際、どのような人づくり、教育であるべきとお考えになっていたのでしょうか? ご自身のご経験も踏まえてお話しいただければと存じます。

次に教育予算についてお伺いします。我が国は、国や地方自治体といった公的機関による教育を、在学者一人当たりのGDP比で見ればOECD平均の水準となっていますが、支出規模のGDP比はOECD平均の7割に過ぎません。

学力と労働生産性、給与水準には相関性があると言われていることからすれば、さらに教育投資・教育支出を高めていくことが成長戦略として不可欠であると考えます。

AIや量子コンピューター、生命科学など、これからの経済成長や科学技術の発展に欠かせない分野において、我が国の研究や技術、スキルが世界をリードするものとなるよう、まずはこれらの分野につながる基礎力をしっかりと身につけることができるようにするため、教育予算をさらに充実させるという総理の決意を伺いたします。

教育の質を決めるのはまさに教師です。しかし、教師の長時間労働の改善が進まず、心を病む教職員が増え、近年では教師を志望する人材が減少しており、同時に現職の教師も児童に向き合う時間を増やしたくても、現場の務めが多くてそれができないという悪循環から抜け出せていません。

今回の法案では、教師の時間外在校等時間を、令和4年の月47時間から月30時間程度とする目標を示していますが、長時間労働の改善はもちろんのこと、この働き方改革を教師の質、さらには教育の質の向上につなげていくことも重要です。

この点について、安倍文部科学大臣のお考えをお聞かせください。

学校現場からは、「教師の困難な仕事に見合った処遇が得られていない」「頑張りが報われる処遇にしてほしい」という声がよく聞かれます。

本法案では、学びの専門職としての教師にふさわしい給与改善や、職責と負担に応じたメリハリある処遇を実現するために、50年ぶりの教職調整額の水準の大幅な引き上げ、義務教育等特別手当の学級担任への加算、さらに教諭と主幹教諭の間に新たに創設する教諭にふさわしい処遇などの改善を図ることとしています。

一方、成長と物価高に負けない賃上げによる経済の好循環の実現に向けて、特に大企業では大幅に給料が引き上げられています。

このような状況と比較すると、教職調整額について2030年度までに10%へ段階的に引き上げるということで、果たして十分なのかという声もあります。

そこで、優秀でやる気のある人材の確保、特に大都市部と比べて地域手当が低い地方での教員人材不足の解消のためには、今回の法改正がもたらす成果を確認・検証しつつ、今後さらなる措置を講じることが不可欠だと考えますが、この点を、岡山県美作市にある日本で最も古い庶民のための公立学校である特別静谷学校にご縁の深い安倍文部大臣にお伺いして、私の質問を終わります。

石茂内閣総理大臣

人づくりと教育のあるべき姿についてのお尋ねをいただきました。正解のない時代に、自ら問題を探求し、他者と協調しながら自ら考え、自由に人生を設計していける能力の育成が重要であると考えております。

知識や能力だけではなく、歴史や文化、地域や周りの人々を大切にし、行動する力を有した人材を、学校だけではなく自治体や地域の人々が一体となって考え、参画して育てていけるように取り組んでまいりたいと考えております。

「人づくりは国づくり」と述べたが、それはどういうような教育であるべきだと考えているかということを尋ね、「お前の経験も踏まえて話せ」というようなご質問であったかと存じます。

私は、「本当にこの先生に教えてもらわなければ今の自分はない」と思える先生に巡り合うことができました。その先生に教えていただきながら、このような場でこんなことを話すのは大変申し訳ないことだと思っておりますが、当時、昭和40年代のことですが、日直とか宿直とかいう制度がございました。

自分は「今日宿直なんで、分からないやつ気に来い、分かるまで教えてやる」と言われて、「あ、そうなんだ」と分かったときの嬉しさは、今も忘れることがございません。あるいは授業中に教科書から外れて、いろんな歴史を教えていただいた。それを忘れることもございません。

もちろん、働き方改革の今、そういうことをやってはいけないのでありますが、「本当にこの先生に巡り合わなければ今の自分はない」と思える先生に会えたことは、本当に嬉しいことだと思っております。それに応えることができていない自分を恥じるばかりであります。

教育予算の充実についてのお尋ねをいただきました。

ご指摘いただきましたように、日本の公教育支出は対GDP比3.1%となっております。OECD平均が4.5%でございますので、これに比べますと低い水準でございますが、一方におきまして、教育は子ども一人一人に対するものであるとの観点から、在学者一人当たりの公教育支出で見ました場合、対GDP比で21.8%となっておりまして、OECD平均の22.3%と比べて遜色のない水準にはございます。

支出については、様々な見方で比較する必要があるものと考えておりまして、教育支出の多寡も重要なことでございますが、効果的に活用されて教育の質の向上につながるものとなっているかどうか、これを検証し、PDCAサイクルを回していくということが重要だというふうに私は考えておるところでございます。

ご質問につきましては、関係答弁を申し上げます。

あべ俊子文部科学大臣

まず、教育の質の向上についてお尋ねがありました。教育は「人なり」と言われるように、学校教育の要は教師にかかっており、教育の質の向上を通したすべての子どもたちへのより良い教育の実現を目指して、働き方改革を進めることが重要です。

具体的には、学校における働き方改革を進めることにより、教師の健康を守るとともに、教師の意欲と能力が最大限発揮できる環境が整備され、生き生きと子どもたちに向き合うことができるようになると考えられます。

このため、今回の法案により、国と教育委員会、学校が一体となり、教師の時間外在校等時間を縮減する仕組みを構築してまいります。

次に、今回の法改正を踏まえた今後の措置についてお尋ねがありました。

ご指摘の静谷学校は、江戸時代前半、岡山藩によって創建された地方の庶民のための学校であると承知しており、現代においても公教育の再生に向けて優れた人材を確保する必要があると認識しております。

そのため、本法案では教職調整額の引き上げ等の教員の処遇改善を盛り込むとともに、昨年12月の財務大臣との合意事項を踏まえ、施行後2年を目途として、教員の勤務の状況や人材確保の動向、教員の給与に要する経費についての財源の確保の状況等を勘案しつつ、教員の勤務条件のさらなる改善のための措置について検討を行う旨を規定しており、検討を踏まえ、必要に応じて措置を講じてまいります。

斎藤孝議員(立憲民主党)

立憲民主・社民・無所属会派を代表して、いわゆる法改正案について質問をいたします。

私はこう見えて17年間教員をしていました。教職は素晴らしい仕事です。子どもたちの成長に寄り添い、共に学ぶ日々はかけがえのないものでした。教え子たちが同様に思ってくれているかどうかは分かりません。ただ、今も大人になった多くの教え子たちとつながり、その関係性は生涯にわたって続いていくと思います。私は生まれ変われるのであれば、国政を目指すかどうかは正直分かりませんが、先生にはもう一度なりたい。そう思います。

そんな教職がブラックと言われ不人気で、採用倍率も年々低下しているとされています。厳しい環境の現状と、それを生み出したこれまでの教育政策の不作為等について真摯に認識しなければ改善策は生まれません。

総理のお母様は教員であったとお聞きします。そのようなお立場からも、教育については一家言あるものと思います。どのような教育観をお持ちか。また、これまでの自民党政権下で行われてきた教育改革について、どのような認識をお持ちか、冒頭伺います。ぜひ総理ご自身のお言葉でお願いいたします。

現在も各地で担任不在の学級が存在しています。教育現場の必死の努力にもかかわらず、配置されるべき教職が見つからない、いわゆる教員不足が常態化しており、年度の後半に向けて状況はますます悪化していきます。これは現場や各教育委員会の責任ですか? とんでもないと思います。

子どもたちの学ぶ権利を奪っている教員不足の問題は、総額裁量制導入や定数崩し、要員削減、教職員の増員抑制など、国の方針によるところも大きいと考えます。教員不足の現状について、子どもたちへの責任、教育の保障という観点から、政府としてどのように捉えるか。総理に伺います。

また、教員不足の具体的要因と今後の改善策について、所管する文部科学大臣の認識を伺います。今回、教員の処遇改善に向けての基準となる額について、現行の4%を2026年以降、毎年1%ずつ引き上げ、2031年に10%とする措置が盛り込まれています。処遇改善の方向性については賛同します。

しかし、昨年の概算要求時点では教職調整額を13%にする要求をしていましたが、財務大臣との合意で10%となり、さらに毎年1%ずつ上げるというものになりました。当初の方針より増額の規模が小さくなったことや、実施に時間を要することについては、正直残念に思います。このことについて、文部科学省としてどのように説明をするのか。大臣の答弁を求めます。

現在の教職調整額4%は、1966年当時の月換算時間外勤務8時間に対応して定められたものですが、本来時間外勤務時間として連動して考えるべき性質のものではありません。

一方、教員の賃金は人材確保法によって一般公務員より優遇することが定められています。人材確保法が1974年に制定された後、教員の賃金は一般公務員に比して7.4%以上上回るに至りました。

この優遇は主に義務教育等教員特別手当をもってなされたものです。しかしこの義務教等手当も段階的に引き下げられ、今や優遇分はほとんどない、そういう状況となりました。教員に優れた人材を確保することを目的とするならば、給特法ではなく人材確保法の趣旨に基づき、義務教育等教員特別手当を増やすことで処遇改善を図るべきではなかったか。処遇改善と教職調整額を連動させることが法の趣旨等と矛盾し、文科省の従来見解と異なるとの指摘にどのように答えますか。文部科学大臣、論理的にお答えください。

時間外勤務手当が支給されようと、働き方改革が満たされようと、何らかの罰則が付されようと、長時間労働は改善しません。1人1人の教員の業務そのものが減らない限り、勤務実態を削減することは不可能です。

業務管理等の計画策定を教育委員会に義務づけたとしても同様です。現場も市町村も、行いたくても行えないんです。こんなことで改善するのであれば、とうに改善しています。

働き方改革のために国が行うべきは、責任転嫁のような規定論ではありません。国がすべきは定数増、特に基礎定数を増やし正規教員を増やすこと。指導要領を改定し、膨張した学習内容を精選すること。予算をきっちり措置することなど、具体的な支援を行うことです。

文部科学大臣にお伺いします。働き方改革の実効性を高めるため、国としてどのような責任を果たすべきと考えているか、伺います。

あわせて総理にも伺います。予算編成を担う立場として、定数改善、学習指導要領の精選などを含む教育環境整備に必要な予算について、しっかり確保すべきと考えますが、いかがですか。これからの時代を担う子どもたちに必要な投資です。総理の見解を伺います。

教育公務員特例法についても質問します。法案では、長時間勤務を抑制するため、業務量や内容に配慮した勤務時間管理を行うよう教育委員会に義務付けるとしています。業務量の管理についての義務化は評価しますが、果たして教育委員会にそれができるのか、現場の教員が疑問を抱くのも無理はありません。

業務管理を行うにあたり、現場の実態や課題をどのように把握し、それをどう反映するか。文部科学大臣の答弁を求めます。

また、法案では、勤務時間の上限指針を守ることを校長の責務とし、研修の実施も定めています。しかし、すでに校長は多忙を極め、かつ責任も重く、法案の中でさらなる責務が追加されていることに懸念の声もあります。責務を課す以上、それを可能にするだけの支援が必要です。

文部科学大臣に伺います。学校運営の責任者としての校長の役割を果たしてもらうためにも、業務軽減や事務作業の補助など、どのような支援を検討しているか、お答えください。

教員勤務実態調査によれば、正規の教員の勤務時間は長時間にわたり、精神疾患による休職者も多く、他の国家公務員よりも格段に高い割合です。部活動指導や保護者対応、学校外の会議など、教員が担っている業務の一部は、本来教員が行うべきではない業務であると考えます。

教員が教育活動に専念できる環境を整えるためには、担うべきではない業務を見直し、負担軽減を進める必要があります。これまでさまざまな取り組みがなされてきましたが、十分な効果は出ていません。今後、国としてどのように業務削減を図っていくのか。文部科学大臣の見解を伺います。

また、学校現場では今、部活動改革が進められていますが、地域移行に関しては受け皿が整っておらず、現場の混乱も生じています。地域移行の円滑な実施と現場の不安解消のために、国はどのような対応をしていくのか、スポーツ庁長官に伺います。

本法律案について、教職員団体等からは、「長時間労働を是正し、教員の健康と子どもたちの学ぶ権利を守るという方向性は理解するが、内容が伴っていない」という声が多く聞かれます。

何より、現場の当事者である教職員の声がどのように法案に反映されたかは非常に重要です。現場の声を聞き、それを反映する仕組みがなければ、制度は機能しません。

法案の策定にあたり、現場の意見をどのように取り入れたか。教職員団体との協議の経過と、今後の関係性について、文部科学大臣に伺います。

現在、教員の志願者数は大きく減少し、採用倍率は低下の一途をたどっています。教員不足は全国各地で深刻化しており、臨時免許や免許外教科担任などで対応せざるを得ない状況が続いています。このままでは、教育の質が損なわれ、子どもたちの学びに深刻な影響を及ぼしかねません。

教員の長時間労働が常態化している現状では、優秀な人材が教職を目指さなくなるのも無理はありません。持続可能な教育環境を構築するには、教職を魅力ある職業にしていくことが不可欠です。そこで伺います。教員不足の解消に向けて、教員の働き方を抜本的に見直し、教職の魅力を高めるために、どのような取り組みを進めていくのか。文部科学大臣のご所見をお聞かせください。

また、教員の処遇改善も重要な課題です。給特法の下では、教員には時間外勤務手当が支給されず、代わりに4%の教職調整額が支給される仕組みとなっています。しかし、4%という水準は、実際の労働実態と大きく乖離しており、長年にわたり是正が求められてきました。

働き方改革を実効あるものとするためには、この教職調整額の見直しが避けて通れません。加えて、勤務時間の客観的な把握や、時間外勤務の縮減、勤務実態の透明化など、制度面の改善も必要です。

文部科学大臣に伺います。教職調整額の見直しに関する議論の現状と今後の方向性について、ご説明ください。また、教員の処遇改善に向けた具体的な取り組みについても、お聞かせください。

子どもたちの未来を育む教育の現場が、過度な負担により疲弊し、教育の質が損なわれている現状を見過ごすわけにはいきません。教員がいきいきと働ける環境を整えることこそが、子どもたちのよりよい学びを保障することにつながります。

最後に、総理に伺います。未来を担う子どもたちの教育に責任を持つのは、私たち大人の責務です。教育への投資は、単なるコストではなく、将来への最大の投資であると考えます。教育現場の抜本的な改善に向けて、国としての責任を果たしていく決意と、総理ご自身のリーダーシップについて、所見をお聞かせください。

石茂内閣総理大臣

教育に対する考え方、政権における教育改革についてのお尋ねをいただきました。

教育におきましては、先ほど申し上げましたが、正解のない時代に自らの問題を探求し、他者と協調しながら自ら考え、自由に人生を設計し飛躍していける能力の育成が重要であると考えております。知識や能力だけではなく、歴史や文化、地域や周りの人々を大切にし、行動する力を有した人材を、学校だけでなく自治体や地域の皆様方が一体となって考え、参画して育てていくことが重要であると考えております。

また、斎藤議員からは、「お前の母親も教員であったと聞いているが、その立場から何か考えがあるか」というようなお尋ねもいただきました。

私の母親も教員でございましたし、上の姉は国語の教員でございました。さらに、上の姉は英語の教員、下の姉は歴史の教員でした。教職を持っていないのは私ぐらいでございましたが、とにかく厳しい人でした。

私は鳥取で育ったのですが、母親が、私が子供の頃、『伝記』とか『世界の美しい話』とか、そういう本を1時間、とにかくちゃんと朗読しないと絶対に許してくれませんでした。

また、ご質問にお答えしましたが、小学校、中学校では本当に厳しい先生が多かったです。もちろん優しく接してくださった先生も多くいらっしゃいましたが、本当に厳しく指導していただいた先生のことをよく覚えております。

私が議員になっても、あるいは閣僚になっても、先生は常に先生であります。すでにお亡くなりになられた方も多いのですが、一生「先生」と言って慕う方がいらっしゃるという方に巡り合えたことは、とても幸せなことだったと思っております。

もちろん、今の働き方改革の中でできること・できないことはございますが、本当に一生「先生」と慕うことができる方に巡られたことを、本当に幸せに思っておりますし、そういう先生方が今の働き方改革の中で地域と一体となって、そういう志を持った方が増えることを望んでおるところでございます。

我が自由民主党におきましては、結党以来、国民一人ひとりの人格の完成と国家社会の形成者として必要な資質を備えた人材の育成を目指し、教育基本法の改正や学校の教育環境の充実など、さまざまな教育改革に取り組んできたと承知いたしております。

教員不足の現状認識についてでございますが、教員不足は、大量の定年退職、大量採用を背景とした三級一級取得者の増加等により臨時講師の採用が増加する一方、正規採用数の大幅な増加などにより、臨時講師の担い手であった既修者が減少していることが要因であると、このように認識いたしております。

教職の魅力を高めるため、教員のやりがいが小さく、負担の大きい業務を見直し、徹底した働き方改革を確実に進めるとともに、任命権者である各教育委員会における多様な人材の確保など、多角的な取り組みを講じていくことが重要だと考えております。

定数につきましては、「定数改善計画」という名称に関わらず、これまで義務標準法の改正などにより、平成29年度からの10年間での通級指導等の基礎定数化や、令和3年度からの5年間での小学校35人学級化など、計画的な定数改善を行ってきたところでございます。

加えまして、昨年末の大臣合意に基づき、財源確保と合わせまして指導運営体制の充実を4年間で実施するとともに、令和8年度からの中学校35人学級への定数改善を行うことといたしており、引き続き計画的に取り組んでまいります。

部活動改革でございますが、学校部活動につきましては、働き方改革を加速化する観点からも、地域における活動として展開していくことといたしております。

その際、指導を希望される教職員の兼業の自治体における規定の整備や運用の促進に取り組みます。財政措置につきましても、本法案附則第3条において、政府は部活動の地域における展開等を円滑に進めるための財政的な援助を行うことと規定されておりますことを踏まえ、適切に対応いたしてまいります。

教育課程や授業時数のあり方についてでございますが、今後の教育課程や授業時数につきましては、これからの社会に求められる資質・能力の着実な育成を目指しますとともに、多様な子どもたちに対応し、一人ひとりが持つ可能性を最大限に引き出せるよう検討を深めてまいります。

その際、国際比較が絶対であると考えているわけではございませんが、国際比較も含め、さまざまな観点から比較することは重要であると考えております。教育課程や授業時数のあり方について、さまざまな観点から検討を加え、過度な負担を生じないように努めてまいります。

今後の給特法の見直しについてでございますが、今回の法案は、計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教員の業務を管理する措置を講ずる旨の規定を盛り込んでおり、働き方改革のさらなる加速化のための仕組みを構築するものでございます。

給特法につきましては、さまざまなご議論があることを承知いたしておりますが、まずは時間外在校等時間が月20時間程度に達するまで、幅広い観点から諸課題の整理を行うことといたしておるところでございます。

財政のご質問につきましては、関係閣僚から答弁をさせていただきます。

あべ俊子文部科学大臣

まず教師不足についてお尋ねがありました。現在の教師不足の状況は、特別支援学級の見込み以上の増加に対し、臨時講師の成り手が減少しているといった構造的な要因が大きいと認識しております。

文部科学省としては、教師に優れた人材を確保するため、学校における働き方改革のさらなる加速化、指導運営体制の充実、教職の諸改善に取り組んでまいります。

また、現下の教師不足の解消に向け、休職や育休を取得する教員の代替者について、給与費の国負担の対象を臨時講師に限定せず、常勤職員である場合にも対象とする制度改正を行い、計画的な人員配置を促進しています。

文部科学省としては、引き続き各教育委員会に対し、制度改正等も踏まえた計画的な新規採用や、現職以外の教員免許保有者向け研修の実施など、教師人材の確保を強化する取り組みを促してまいります。

次に、教職調整額の引き上げについてお尋ねがありました。教職調整額の引き上げは10%としておりますが、その他の諸改善と合わせると、教員の優遇は、いわゆる人材確保法が制定された当時と同程度の水準を確保できることとなります。

また、教師を取り巻く環境の整備に向けては、処遇改善と併せ、学校における働き方改革のさらなる加速、教職員定数の改善などの学校の指導運営体制の充実も含め、様々な施策を一体的・総合的に推進していく必要があります。これら他の施策の充実と合わせて、教職調整額については、令和12年度までに段階的に10%に引き上げていくこととしております。

次に、教職調整額による処遇改善についてお尋ねがありました。人材確保法では、教師の給与について、一般行政の公務員の給与に比較して優遇措置が講じられなければならないと規定されていますが、具体的にどのような手立てによって優遇措置を講ずるべきかは規定されておりません。文部科学省としては、今般の教職調整額の10%への引き上げなどにより、人材確保に伴う処遇改善が完成した際の優遇分が確保できることから、人材確保法の趣旨に則ったものであると考えております。

次に、時間外在校等時間の削減の手立てと工程表についてお尋ねがありました。教師の時間外在校等時間を削減するため、学校・教師が担う業務にかかる三分類の徹底のほか、標準を大きく上回る授業時数の見直し、部活動の地域展開、小学校における教科担任制の拡充をはじめとした教職員定数の改善など、様々な施策を総動員して取り組んでまいります。

工程表につきましては、今後、今回の法案に関連した国における制度改正や予算措置の全体像などについて、分かりやすくお示しできるよう検討してまいります。

次に、勤務状況の調査についてお尋ねがありました。教員の勤務状況の調査については、過去に実施した教員勤務実態調査が学校現場にとって大きな負担であったこと、近年、各教育委員会において客観的な方法による在校時間の把握が徹底されてきたことを踏まえ、今後は毎年度、教育委員会に対して実施する調査を通じて、全国の教師の時間外在校等時間の状況を把握してまいります。具体的な調査内容については、従前の調査にも留意しつつ、今後検討してまいります。

次に、時間外在校時間の縮減目標の指針への明記についてお尋ねがありました。昨年12月の財務大臣との間の合意では、全国の教師の平均の時間外在校時間について、まずは今後5年間で約3割縮減し、月30時間程度とすることを目標としており、衆議院においてその目標を明記する法案修正がなされました。

給特法第7条に規定する大臣が定める指針の改定にあたっては、衆議院での修正の趣旨も踏まえ、各教育委員会が働き方改革の目標を設定する際の考え方についてもお示しできるよう、検討を進めてまいります。

次に、教師の業務の精選についてお尋ねがありました。教師の業務負担の軽減のためには、学校・教師が担う業務にかかる三分類に基づく業務の精選・見直しのさらなる徹底が必要であり、今後、給特法に基づく指針に位置づけ、一層の取り組みを推進してまいります。

また、文部科学省としては、小学校における教科担任制の拡充や、中学校の生徒指導担任教師の配置拡充のために必要な教職員定数の改善を4年間で計画的に実施することに加え、教員業務支援などの支援スタッフの配置・充実などにもしっかりと取り組んでまいります。

次に、教職員定数の改善についてお尋ねがありました。令和7年度で35人学級が完成する小学校に続き、財源確保と合わせて、令和8年度から中学校における35人学級への定数改善を行うこととしており、具体的な進め方については今後検討してまいります。今後、学校の指導運営体制のさらなる充実に向けた検討を進める中で、必要に応じて上乗せ定数も含め、義務標準法のあり方についても検討してまいります。

次に、教育課程の改善についてお尋ねがありました。次期学習指導要領については、これからの時代に必要な資質・能力の育成を目指しつつ、過度な負担が生じにくいあり方を検討することが重要です。

中央教育審議会では、例えば教育課程全体の柔軟化の仕組みとして、標準授業時数の弾力化についても議論を行っており、一定の要件のもとで各教科の標準授業時数を裁量的な時間に当てることの適用も検討しています。これらを含めた様々な工夫が、教師と子どもの双方に余白を生み出し、全体として教育の質の向上につながるよう、丁寧な検討を行ってまいります。

次に、教職員の資質向上についてお尋ねがありました。教職員の資質向上は、教育の質の向上に不可欠であり、教員研修の充実を図ることが重要です。文部科学省では、初任者研修や中堅教員研修、管理職研修など各段階に応じた研修の充実を推進するとともに、ICTや専門的な指導力の向上を目的とした研修プログラムの開発・普及に取り組んでおります。

また、教職員の働き方改革とも連動し、研修時間の確保や働き方の多様化にも配慮しながら、効果的な資質向上を図ってまいります。

次に、教員のメンタルヘルス対策についてお尋ねがありました。教員のメンタルヘルスの重要性が高まっており、文部科学省では各教育委員会と連携し、相談体制の整備やストレスチェックの実施、産業医等専門職の活用を推進しています。さらに、教職員が安心して働ける環境づくりのため、ハラスメント防止策の強化も重要な課題として取り組んでおります。

次に、ICT教育の推進についてお尋ねがありました。ICT教育の推進は、児童・生徒の主体的な学びを支援し、教育の質の向上に寄与します。文部科学省では、端末の整備や高速通信環境の整備を進めるとともに、教員のICT活用能力の向上を図るための研修や指導資料の整備を進めております。今後も、教育現場のニーズに応じたICT活用を推進してまいります。

最後に、今後の教育政策の展望についてお尋ねがありました。教育は社会の基盤であり、将来を担う子どもたちの成長を支える重要な役割を果たしています。文部科学省としては、教育の質の向上と教育現場の環境整備に取り組みつつ、多様な学びの機会の提供や、誰もが安心して学べる環境づくりを推進してまいります。

今後とも関係者と連携しながら、持続可能で質の高い教育の実現を目指して努力してまいります。以上でございます。

佐々木議員(公明党)

私は公明党を代表し、ただ今議題となった法律案について質問いたします。公明党は教育の目的は子供たちの幸福と考えます。子供の最大の教育環境は教師であり、その教員が生き生きと働けることが重要です。子供と社会の未来を作るのが教員の仕事であり、AIが進化してもなくならないであろう仕事の一つが教師と言われています。国として最も力を入れるべき職種の一つです。

しかし実際は多忙な業務の中で子供たちに向き合う本来の仕事ができない状況にあります。
長時間労働が教職員の心身に悪影響を与え、子供たちの学びとケアにも良い影響を与えていません。メンタルヘルスの不調によって休職する教職員は増加し、学校現場は人手不足の悪循環となっています。こうした学校現場の環境を変え、優秀な教職員の人材を確保し、生き生きと働けるような職場環境とすることが急務です。本法案を通じてどのように取り組むのか、総理のご決意を伺います。

公明党は一貫して教職員の働き方改革と処遇改善は車の両輪として取り組んできました。業務の三分類を提案し、必ずしも教員がやらなくても良い業務の徹底した削減と教育に注力できる環境整備を訴えてきました。そのための教職員定数改善、教員だけでなく地域や専門スタッフ等の他職種が連携するチーム学校の推進、事務的な補助に徹する教員をサポートする業務支援の拡充も前進させてきました。小学校では35人学級が実現しました。中学校については令和8年度からそのための定数改善を行う旨の大臣発言がなされており、しっかりと実現すべきです。

今回の法改正についても、党内での複数会議の議論を踏まえ、昨年まとめた提言を基に、働き方改革のさらなる推進、処遇改善、教職員定数の改善などについて提案しています。修正案による新法第3条では、時間外勤務時間を月30時間程度まで縮減することが目標とされました。
その実現のためには教員の働き方改革のための様々な施策を総動員することが必要です。具体的には定数改善と共に教員業務支援のさらなる配置充実にも取り組むべきです。

文科大臣に伺います。教育委員会による業務管理、健康確保措置、施策計画等は働き方改革の一層の推進として評価します。公明党が提案した学校教師が担う業務にかかる三分類の内容を位置づけ計画を作るということも衆議院で答弁をいただきました。

また公明党は教員が勤務状態について相談できる窓口の設置充実も主張しています。社会保険労務士や法律家など外部専門家の活用などもぜひ行うべきです。教員による保護者からの問い合わせ対応、学校や通学路の安全確保なども課題となっています。

公明党は保護者からの相談を学校ではなく市が解説する子育て応援相談センターで受けるという奈良県天理市の取り組みを調査しました。学校内外の安全確保については、公明党は学校や地域の関係者が一体となって学校の安全に取り組むセーフティプロモーションスクールやスクールガードリーダーの普及などに取り組んできました。学校通学の安全確保と共に社会の変化に対応した新しいチーム学校のあり方を検討し、ビジョンとして示し実現に取り組むべきです。

文科大臣に伺います。増加する不登校児童生徒への支援も重要です。公明党が取り組んできた学びの多様化、学校の各都道府県政令指定都市への配置を加速し、校内での安心できる居場所、スペシャルサポートルームの設置促進を行うべきです。

文科大臣に伺います。本法案についての提言で、公明党は人材確保法を踏まえ教員の処遇を抜本的に見直すこと、職務の負荷に応じたメリハリある給与とするための手当ての充実や新たな給付の創設などを提案しています。

今回の教職調整額の改善等は一つの前進ですが、提言にも盛り込んだメリハリ付けについて、前述の大臣合意に基づき検討措置をすべきです。また質の高い人材確保のために、公明党が提案している教員の在学中の奨学金免除について、学部段階でも実現すべきです。

文科大臣に伺います。学校における働き方改革の目的は、子供たち一人一人の特性や個性に応じた学びの実現にあります。公明党は公教育の再生と一人一人の子供に光を当て、自分らしく強みを発揮し輝いていく「輝き教育」を提言しています。そのための学習指導改定に向けた専門的な議論を深めるとともに、教職員定数の改善などの整備を一体的に進めていただきたい。

総理に伺い質問を終わります。ありがとうございました。

石茂内閣総理大臣

教師の職場環境についてのお尋ねをいただきました。教師の魅力を高めるためには、ご提言でもご指摘いただいております通り、負担を感じる業務の見直しが必要であり、業務の仕分けを行った学校教師が担う業務にかかる三分類に基づく業務のさらなる厳選見直し、デジタルトランスフォーメーションの加速化を進めますとともに、学校の指導運営体制の充実により教師の時間外勤務時間を削減することが重要であると考えております。

本法案におきましては、計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講ずる旨を盛り込んでおり、徹底した働き方改革を確実に進めてまいります。

子供たちの特性や関心に応じた学びの実現についてでございます。負担の大きな業務を縮減し、教師の本務である教育等に集中できるよう、教師の時間外勤務時間の削減を徹底して行ってまいります。その上で主体的で深い学びの実現や、多様な子供たちに対応した教育家庭のあり方について検討を深めてまいります。

教職員定数につきましては、昨年末の大臣合意に基づき財源確保と合わせて指導運営体制の充実を四年間で計画的に実施するとともに、中学校の35人学級への定数改善を行うこととして進めてまいります。

ご質問につきましては関係大臣から答弁をさせていただきます。

あべ俊子文部科学大臣

まず学校における働き方改革についてお尋ねがありました。学校における働き方改革は教師の業務の縮減や効率化のほか、学校の指導運営体制の充実など様々な施策を総動員して取り組むことが必要です。

教職員定数については今後数年間で計画的に改善を行うとともに、財源確保と合わせて中学校の35人学級への定数改善を行ってまいります。また教員業務支援については予算において全ての小中学校に配置が可能な予算を計上しており、今後教職員定数の改善と共に様々な支援スタッフの配置充実にも務め、時間外勤務の縮減に取り組んでまいります。

次にチーム学校についてお尋ねがありました。学校における働き方改革のさらなる加速を図るためには、地域の関係者や多様な支援スタッフとの役割分担や連携・共同を通じて、政府から提言されている新しいチーム学校を実現することが重要であると認識しています。そのため文部科学省としては支援スタッフの配置の充実に加え、教師が勤務状況等について相談できる窓口の設置促進、保護者からの不当な要求に対して学校関係者が専門家に相談できる体制の構築や、セーフティプロモーションスクールの考え方を踏まえた学校安全推進体制の構築、スクールガードリーダーの配置を中心とした通学時の安全確保取り組みなどに取り組んでおり、引き続き好事例の発信や教育委員会や学校の体制の充実に向けた必要な支援に取り組んでまいります。

次に不登校児童生徒への支援についてお尋ねがありました。令和5年度の小中学校における不登校児童生徒数は過去最多であり、極めて憂慮すべき状況が継続していると認識しております。文部科学省としては不登校対策について取りまとめた心プラン等を踏まえ、学びの多様学校の設置運営の支援や校内教育支援センターの支援員の配置促進など、多様な学びの場の充実に加え、不登校児童生徒への支援に全力で取り組んでまいります。

次に教員についたものへの奨学金変換免除についてお尋ねがありました。優れた教師人材を確保するため文部科学省においては今年度新たに教師になった者から教職大学院等を終了し、翌年度から正規採用となる者を対象に奨学金の変換支援を行うこととしており、まずはこの制度を着実に実施してまいります。ご指摘の学部段階も含めた奨学金変換支援のさらなる充実については大学院大会での取り組みにより得られた成果を生かしつつ、過去の変換免除制度の廃止経緯、各教育委員会での教師人材確保の状況、高等教育段階の修学支援の同居なども踏まえながら検討してまいります。

金子議員(維新)

会派を代表して、給特法等の一部を改正する法律案についてご質問いたします。学校改革は職員室から。学校の雰囲気は職員室を見れば分かる。これは私が尊敬する教育者であり、民間校長を務められた活躍された衆議院議員の先生の言葉です。今回の改正は教員のなり手不足や若い教職の離職の増加、教員の過重労働など教育現場の様々な課題の解決に向けて、教員の処遇改善と働き方改革、言い換えれば時間外勤務時間の削減を目指すものです。

改革の方向性は我が党も理解するものですが、肝心なことは今回の改正により教員の働き方改革が具体的に進むことです。いかに全ての学校関係者が主体的にこの課題に取り組み、本改正に魂を入れることができるのかが問われています。

タイムマネジメントの意識が乏しいと言われる学校文化を変え、学校全体そして先生方一人一人のライフワークバランスの実現をし、先生方が時間的にも精神的にもゆとりを持って児童生徒と向き合うことができる職場を、本改正を通じてそのように近づくことを願います。ここでご意見を伺います。

子どもたちを取り巻く環境は我々の子どもの時代とは大きく異なり、AI(人工知能)の役割が急速に拡大する中で、知識の詰め込みを重視し、それらを正しく理解することに重点が置かれてきた教育は変化を遂げてきています。また子どもたちはオンラインオンデマンドで興味のある事柄を自ら選択できる環境で育つ中、情報伝達のあり方や学校教育のあり方の変化から、一斉方式から個人を尊重した指導への変化が求められています。このような社会環境の変化の中で令和の学校教育のあり方、そして先生・教師の役割についてどのようにお考えでしょうか。

社会環境の変化と子どもの学ぶ姿勢の変化をしっかり把握して、子どもたちの個別最適な学びを広げることは非常に重要だと考えます。教師の役割については、このように時代に応じて変化すべき部分があると思いますが、同時に常に変わらない、変えてはいけない教師の役割は何だと考えますか。

続いて法案の内容について質問いたします。法案の内容は安倍文科大臣に伺います。今回の法改正における働き方改革の中心施策は、教員の業務の適切な管理と健康・福祉を確保するための措置を実施するための計画を教育委員会が策定・公表し、計画の実施状況の公表を義務づけることです。この方向性は理解しますが、これまでも現場ではこうした計画の策定は当然行われてきたと考えられ、働き方改革の法律としては実効性に乏しい印象です。実行性の向上のためにはこの計画内容をしっかり作り込むことが不可欠ですが、まずこの計画の対象である教員の業務は具体的にどのような項目を想定しておられますか。また各項目をどのように定量的に測定し管理するのでしょうか。

また政府はこの計画のモデルを作成し各教育委員会に示すということですが、いつ頃どのようなモデルを示す予定でしょうか。業務の把握については、各学校の担当業務や状況等が様々であることから統一的には在校等時間で把握することが適当・適切との政府答弁がありましたが、教員の職務の特殊性から生じる多様な業務についてはむしろ項目別に丁寧な定量的管理が必要と考えます。

以下、いくつかの主な項目について質問します。

まず補教についてです。補教とは教員が急に休んだり出張したりする際に他の教員が代わりに授業を行うことです。その時間が空き時間となっている教員が負担しますが、授業時間や授業準備等の必要な時間が減り、その結果時間外勤務時間の増加につながります。いわゆる「定額働かせ放題」と批判される内容の一つです。この補教についてしっかりと業務を把握すべきではないでしょうか。

次に部活についてです。部活動の地域移行が進む中、教員の部活動との関わり方は地域や学校、教師ごとに異なる状況が生じています。部活動指導に当たる教員の業務も個別に定量的な把握を行うべきではないでしょうか。地域クラブの指導方針と学校教育理念との調整、また指導員のDBS対応など新たな課題も生じる一方、部活動の教育的意義を理解し指導を希望する教員もおられる中、部活動の地域移行は確実に進めるべきだと考えます。教員の副業規定を見直して副業の自由を拡大し、希望する教員は部活動指導を引き続き行い、そして部活動は副業として正当な対価を支払う、このような改革が必要ではないでしょうか。お伺いします。

また保護者対応の増加は教員の時間的・精神的負担の増加につながっています。こうした保護者対応は関係者の納得を得るまで継続され、一著しく長い時間を要することが多いですが、保護者対応についても個別に業務を把握すべきではないでしょうか。

また学級担任が保護者と対応する構造をなくし、教員の負担軽減と問題解決の専門家による迅速化・円滑化を図るため、元校長等の人材を活用して専門チームを編成し、例えば教育委員会あるいは首長部に配置したりスクールロイヤーの活用を推進するのはいかがでしょうか。

学校が土日や祝日に設定された場合に代休を取得する必要がありますが、この代休取得は8週間以内に取得する旨を規定する場合が多く、結局代休が取れない教員が多くおられると伺っています。休日の出勤数及び代休取得率についても把握すべきではないでしょうか。そしてしっかり代休が取得できない状況を見過ごさず、他の公務員とのバランスを考えて代休取得の有効期間を延長するなど、取得率向上に向けた対策もご検討ください。

以上主な4項目の業務把握と管理について質問いたしました。政府が考える在校等時間の管理による業務管理の統一的な把握と同時に、各項目の丁寧な業務把握のために我が党は改正案不足第5条を提案させていただきました。

第5条は学校全体のライフワークバランスを実現するため、業務管理の実効性の向上のための措置について検討を行い、必要な措置を講ずるとしています。この必要な措置の具体的な内容は何でしょうか。

我が党はこの必要な措置として人事評価の改善を提案しています。具体的には各教員が毎年記載報告し、管理職が内容を確認する人事評価にライフワークバランス欄を追加し、その中で具体的な補講時間や保護者対応、突発事項への対応や同僚へのサポートなどを定量的に報告し、それを管理職が把握・評価するという仕組みです。学校現場に労務管理という意識を一層定着させ、学校全体及び教員一人一人のライフワークバランスの実現を目指すこの提案について文科大臣の見解を求めます。

ここからは総理にお伺いします。補講や部活動、保護者対応など教員の多様な業務の一つ一つを丁寧に把握し管理して初めて教員の働き方改革が進みます。この点について総理の考えをお聞かせください。

教員の働き方改革は総理が言及されているように国民全体の教育の質向上に資する重要な課題です。ぜひ政治の責任としてこの課題にしっかり取り組むことが重要であると考えます。

最後に今後のスケジュールについてお伺いします。今後この法案の施行に向けて教員の働き方改革の計画作成・公表、状況把握の体制整備、モデル作成などの具体的な準備が必要ですが、いつ頃、どのようなスケジュールでこれらを行う予定でしょうか。現場の教員の負担を軽減し、教員の働き方改革を実効的に進めていくためにも早期の具体的準備を期待いたします。

以上で私の質問を終わります。

石茂内閣総理大臣

学校教育のあり方と教師の役割についてのお尋ねであります。そしてまた常に変わらない、変えてはいけない教師の役割は何だと考えるかという大変難しいご質問を頂戴いたしました。正解のない時代に自らの問題を探求し、他者と協調しながら自ら考え、自由に人生を設計し飛躍していける能力の育成に学校教育が、教師や教育士の皆さん方が大きな役割を果たしていただくことを期待いたしております。

教育内容や教育環境が時代とともに変化したといたしましても、教師が子ども一人一人の能力を最大化するために基本的な役割を担うことは常に変わりません。その上で知識や能力だけではなく、歴史や文化、地域や周りの人々を大切にし行動する力を有した人材を学校だけではなく自治体の人々が一体となって考え育てていくことが必要であるという風に考えているところでございます。その根底にありますものはおそらく子どもたちに対する限りない愛情だと思います。そして正確な知識だと思っております。

限りない愛情を持って、そして正確な知識を伝えていくということは変わってはならないものでございまして、それは単なる優しさではなくて、例え反発を受けることがあっても使命感、信念、愛情に基づいて厳しい指導というものを行う。そういうこともあって叱るべきではないだろうか。もちろん働き方改革の趣旨に踏まえた上でそういうようなことは変わってはならないのではないかと私は個人的に考えているところでございます。

教師の働き方に応じた処遇についてでございます。ご指摘のように頑張っておられる教師の業績につきましては、公務員法に基づく人事評価制度を通じて、期末手当てなどに適切に反映されるべきものと考えております。人事評価の基準及び方法などにつきましては任命権者が定めることとされていますが、教師の業績が適切に把握され評価が適正になされますように取り組んでまいりたいと考えております。財務のご質問につきましては関係から答弁をさせていただきます。

あべ俊子文部科学大臣

まず、教師の業務の測定・管理の具体的な方法についてお尋ねがありました。個別の業務ごとにその時間を把握することは、これ自体が教師にとって負担となることから、教育委員会に求めることは想定しておりませんが、教師の業務については文部科学大臣が定めた指針において、教師の在校時間を客観的な方法で把握・管理するよう求めています。この中で校長等が各教師の業務の状況を把握し、その改善につなげていくことが重要であり、今回の法案に規定する仕組みを通じて、教師の業務の削減を図ってまいります。

次に計画の型についてお尋ねがありました。本法案で定める計画策定に関して、教育委員会の参考となるような計画の型を示す予定ですが、学校教師が担う業務にかかる3分類の内容など、計画に盛り込むべき事項を検討した上で、これを踏まえて計画の型を作成し、可能な限り早期にお示しできるよう取り組んでまいります。

次に教師の副業についてお尋ねがありました。教育公務員の副業については法律の規定により教育委員会が認めた場合には報酬を受けながら副業を行うことが可能です。部活動を地域展開した地域クラブ活動において指導に携わることを希望する教師については副業により地域クラブ指導者として従事することも可能であり、そうした場合には報酬を得ることも可能です。
文部科学省としては先般取りまとめられた有識者会議の提言も踏まえながら、地域の実情に応じた部活動の地域展開等を全国的に推進してまいります。

次に保護者対応についてお尋ねがありました。保護者などから過剰な苦情や不当な要求などへの対応が教師の負担となっていることは認識しております。このため文部科学省ではこうした事案への対応にあたり学校管理職OBなどと連携した行政による支援体制の構築に向けたモデル事業を実施しています。またスクールロイヤーの配置充実のため、相談体制の構築に向けた手引きの作成などの取り組みも行っています。

次に休日出勤及び代休取得の把握についてお尋ねがありました。地方公務員である公立学校の教師の勤務条件は各自治体の条例等で定められており、公立学校の教師が学校行事などで休日や休日に勤務を命じられた日数は学校等において把握されているものと認識しております。こうした休日等の勤務に対する代休は確実に取られる必要があり、その状況についても適切に把握されるべきものと認識しております。

次に第5条及び人事評価についてお尋ねがありました。
衆議院における法案修正では第5条において教育職員の業務の管理の実行性の向上のための措置について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨が規定されたものと承知しております。

国会で行われた修正について政府の立場からの答弁は控えさせていただきますが、教師のワークライフバランスの実現に向けては人事評価制度を活用することも一つの方策であると考えられます。人事評価の基準及び方法などについては任命権者が定めることとされていますが、教師の業績の把握がなされ適切に評価されるよう取り組んでまいります。

伊藤議員(国民民主)

ただ今議題となりました法律案について令和元年の給特法改正に対する評価から伺います。当時萩田文科大臣は長時間労働で疲弊する学校現場に向け、応急処置として勤務時間を超えて公務に従事している時間を在校時間と位置づけ、まずは時間外の在校時間を月45時間、年間360時間という上限をターゲットとして縮減する仕組みを提案したと述べられ、法改正後に指針を策定されました。

令和4年度文科省が行った教員勤務実態調査に基づく推計によれば、時間外在校時間が月45時間を超える割合は小学校で6割、中学校で8割弱に登っています。結局大半の教員が長時間労働を続けています。それどころか5年半前より事態悪化しており、精神疾患による病気休職者は令和5年度に7119人と過去最多を更新しました。

学校の教員採用倍率も低下傾向に歯止めがかからず、令和6年度の小学校の倍率は過去最低の2.2倍です。こうした実態を踏まえた時、果たして令和元年の改正は応急処置として適切だったと言えるのか、総理の見解を伺います。

また萩生田大臣は抜本的な見直しをして教員の皆さんが誇りを持って仕事できる環境をしっかり作っていきたいと答弁されました。伴って参議院文教科学委員会の負決議では3年後に教育職員の勤務実態調査を行った上で、本法その他関係法令の規定について抜本的な見直しに向けた検討を加え、その結果に基づき所要の措置を講ずることとしました。

しかし今回政府提出の改正案による教職調整額は令和8年度から段階的に1%ずつ引き上げ、10%に到達するのは6年後の令和13年だと言います。あまりに貧弱かつ危機感が感じられない内容です。総理は今回の改正案を持って抜本的な見直しと捉えているのか、誇りを持って仕事ができる環境を作ることができたとお考えになっているのか伺います。

合わせて教員の長時間労働の解消には給特法の廃止を含む見直しが必要と考えますが、国立付属の価と合わせて総理の見解を伺います。

ところで本当にそれは先生の仕事ですか。学校における働き方改革を進めるには、私たちはこの問いを何度も重ねていかねばなりません。校内清掃や部活動、学校給食費や教材費が箕面の保護者に対して電話や文書で徴収し、時に家庭訪問までして徴収管理する。総理、本当にそれは先生の仕事ですか。

小中学校のいじめの認知件数は2023年に71万163件になりました。およそ10年で4.1倍。暴力行為の発生件数は10万3626件で2.2倍です。教室の中にいる被害者と加害者双方の学ぶ権利を守り、主張が食い違う保護者の敵体を解消するための専門的な介入をする。総理、本当にそれは先生の仕事ですか。

日本語指導が必要な児童生徒数は6299人、およそ10年で1.8倍。ポルトガル語、中国語、フィリピノ語、スペイン語、ベトナム語と年々多様化する言語に対し、日本語指導アドバイザーや支援の確保が追いつかない中で文化を尊重した教育と保護者対応が求められる。総理、本当にそれは先生の仕事ですか。

不登校児童生徒数は34万6482人、およそ10年で2.8倍。特別支援学級に在籍する児童生徒数は36万8847人で2倍。通級により指導を受けている児童生徒数は19万6288人で2.3倍を超える中、変わりゆく学校現場の課題に対応しようと過去10年で施行された学校や教職員に対する新たな義務または努力義務を課した法律は議員立法14本、確保6本の計20本です。

教員が事業準備や児童生徒との対話ではなく国や教育委員会、自治体からの調査書の作成に多くの時間を費やされる。総理、本当にそれは先生の仕事ですか。

OECDの国際教員指導環境調査によれば、日本の先生の最大のストレスは事務的な業務が多すぎること、次に保護者の懸念に対処することであり、いずれも調査国の平均を大きく上回っています。

カナダでは2012年から、ドイツでは2015年からワンインワンアウトが導入され、行政手続きを1つ増やすなら1つ減らすことが法令上義務化されています。アメリカでは2017年からワンインワンアウトです。

総理に伺います。学校における教員の事務作業や学習指導、生徒指導の改定時にはワンインワンアウトを導入すべきと考えますが、ご所見をお聞かせください。

加えてイギリスでは1998年及び2003年に政府が、教師が受け負うべきでない仕事の一覧(例えば生徒や保護者からの集金や大量の印刷、出席管理、試験監督やICTのトラブル対応など)を明示し、教師は事業や学習に集中できるようサポートを受けるべきであり、専門知識を用いていない事務を教師に求めることは不適切であると原則化しました。

2023年にはさらに給食時の対応や医療同意、アンケートの管理、保護者や生徒への過大な情報共有、また生徒からのハラスメントやモンスターペアレント対応も教師の仕事ではないと通達しました。

働き方改革がいつまで経っても実現しない日本との差は政府の本気度に他なりません。文部科学省は従来学校や教師が担ってきた業務について基本的には学校以外が担うべき業務、必ずしも教師が担う必要のない業務、教師の業務だが負担軽減が可能な業務の3分類に基づき見直しを図ってきましたが、教育委員会による取り組みの実施率が5割を超えたのは3分類14項目のうち半数以下の6項目にとどまっています。

2019年に3分類が策定されてからすでに6年が経過しています。業務の見直しが十分に進まない理由と3分類の再検討と厳格化の必要性について総理の認識をお聞かせください。

またイギリスの例に習い我が国においても文科省が教師が受け負うべきでない仕事の具体例を明示通知するとともに、これらの業務を代わりに担う人材と予算を国の責任で確保していく必要があると考えますが、総理の見解を伺います。

まずは学校だけでは解決が難しい事案について行政が保護者等から直接相談を受けるなど新たな支援体制の構築を指針に位置づけるのが第1歩と考えますが、総理の見解をお聞かせください。

本法案では教育委員会に対し業務管理、健康確保措置実施計画等の策定と公表などが義務づけられましたが、民間では昨今女性管理職比率や男性育児取得率など人的資本の情報開示により自社の透明性や信頼性を高めることで投資を呼び込み採用につなげています。

今後学校現場に人材を招き入れたいのであれば、自治体の標準職務表を共通フォーマットで作成し、教員1人当たりの持ち事業数の上限を設定し、もちろん公務DXを推進した上で教員を支えるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、教員業務支援や部活動指導員など専門スタッフの拡充をしていく必要があります。

それに加えて育児や介護休業の取得率や勤務間インターバルの導入状況などを公表する。そこまでやって初めて民間と競争できるスタートラインに立てると思いますが、総理の考えを伺います。

最後に文科省が2023年に実施した教員の多忙実態調査で、時間外在校時間の半数以上が部活動の指導時間であると推計されています。

部活動の多くは教員が顧問として勤務時間外に指導していますが、多くの学校で部活動は強制ではなく自主的な参加とされています。

部活動の指導は総理が述べられたとおり子どもたちの成長にとって極めて重要であり、指導者が専門性や熱意を持って行うべきです。

しかし本来部活動の指導は学校外のクラブチームなど地域スポーツ団体に担っていただくのが望ましいというのが国際的な常識であり、専門指導者の確保が不可欠です。

総理に伺います。地域スポーツ団体など学校外の団体による部活動指導の支援を政府として強化すべきとお考えでしょうか。

また、部活動の指導に当たる教員への給与とは別の手当の支給、勤務時間外の指導に対する相当な報酬の支払いについて、総理の考えをお聞かせください。

最後になりますが、昨今学校のあり方は大きく変わっています。教育委員会、学校、保護者、子ども、地域がそれぞれ連携し互いに信頼し協力して支え合うことが欠かせません。

それこそが子どもたちに豊かで幸せな学びの環境を実現するための最も大切な土台になることを強調しておきたいと思います。

以上、私の質問を終わります。

石茂内閣総理大臣

令和元年の給特法改正に対する評価についてでございますが、この改正は当時の給特法の仕組みが教師の長時間勤務の歯止めになっていなかったという状況を踏まえまして、国が時間外在校時間の上限を含め教師の業務を適切に管理するため、法律に基づく指針を定めることなどを内容としたものでございます。

この改正によりICTの活用などにより教師の在校時間の状況を客観的に把握する取り組みが進んだものの、ご指摘いただきましたように依然として時間外在校時間が長い教師が多い状況にございます。働き方改革のさらなる加速化のための仕組みを構築する必要性が高まっているとこのような認識を持っているところでございます。

給特法の抜本的な見直しについてでございますが、今回の法案は計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講ずる旨の規定を盛り込むなど、給与面と合わせて徹底した働き方改革を進め、教師の処遇改善を図るものでございます。

給特法につきましては様々な議論があることを承知しておりますが、国立大学付属の事例もよく研究しながら、まずは時間外在校時間が一定の水準に達するまでに幅広い観点から適切な整理を行うこととしております。

教師の仕事についてでありますが、ご指摘いただきました清掃活動や調査への回答は必ずしも教師が担う必要のない業務、学校徴収金の徴収管理は学校以外が担うべき業務、いじめや日本語指導の面で支援が必要な児童生徒への教育は専門スタッフの連携協力も得ながら教師が取り組む業務と考えております。

学校の業務削減についてでございますが、今回の法案では教育委員会が教師の業務の管理等にかかる計画を策定するとともに、学校が学校評価に基づき運営改善を図る場合にはこの計画に適合したものとすることとしており、学校や教師の業務が過重に積み上がることがないよう国として求めてまいります。教育委員会のあり方につきましても学校や教師に過度な負担が生じることがないよう努めてまいります。

教師の業務の見直しについてでございますが、業務の仕分けを行った学校教師が担う業務にかかる3分類を休法に基づく指針の中に位置づけを与えることとし、指針に基づく業務のさらなる見直しを徹底いたします。

保護者等からの不当な要求など教師のみでは解決が難しい事案につきましては、教育委員会や首長部局、市長部局等と連携した支援体制の構築に取り組むことといたします。

働き方改革の実施とその加速化についてでございますが、教師の魅力を高めるためには教師のやりがいが小さく負担の大きい業務を見直し、働き方改革を確実に進めることが必要であります。

業務の仕分けを行った学校教師が担う業務にかかる3分類に基づく業務のさらなる見直し、標準を大きく上回る事業数の見直し、公務DXの加速化、これらを進めてまいりますとともに、学校の指導運営体制の充実により教師の時間外在校時間を削減いたしてまいります。

今回の法案におきまして計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講ずる旨の規定を盛り込み、各教育委員会等の取り組み状況を見える化しながら徹底した働き方改革を進め、教師の処遇改善を図ってまいります。

若年層の採用についてでございます。教師の任命権は各自治体にございますことから採用数をお答えすることは困難でありますが、教師の年齢構成を正常化する観点からも若年層の方々に積極的に就職していただくことは意義があるものと考えております。

これまで政府といたしましては、各自治体による社会人等の採用のための特別な施策の実施の促進、社会人等が教職に関心を持っていただけるようなオンデマンド研修教材の開発などに取り組んでまいりました。先日の関係閣僚会議についてのご指摘をいただきましたが、この会議におきましては若年層の積極的な採用に向けた検討を指示したところであり、引き続き確保に取り組んでまいりたいと考えております。

吉良よし子議員(日本共産党)

私は会派を代表し、公立教員給与特別措置法改定案について総理に質問をします。

学校の教員の忙しさが止まりません。私たち教員は毎日心をすり減らして命を削って子どもたちのために働いています。この4月に転勤した小学校では、30人の学級の担任を1人でしています。支援員さんも学生ボランティアさんもいません。1人1人を大切にしてあげたいんですけど、本当に限界があるんです。朝の4時には目が覚めて、持ち帰った大量の学級事務を毎日必死でこなしています。日曜日に休日出勤したら、9人も仕事しに職場に先生たちが来ていました。

一体国はいつまで私たち教員の使命感とか情熱に甘えて、長時間労働に目をつぶり続けるのでしょうか。いい加減にしてほしい。

学校現場の教員の皆さんから悲鳴のような訴えが上がっています。果たして今回の法案は、この現場からの悲鳴に応えるものになっているのか? 教員の長時間労働を根本から是正するものになっているのか? 総理の認識をお答えください。

本法案は、教員の処遇改善として、現行基本給の4%とされている教職調整額を来年から毎年1%ずつ6年かけて10%に引き上げるものです。しかし調整額を上げるだけでは、現行の残業代を支払わない「働かせ放題」の枠組みは変わりません。衆議院での与党による修正でも、その枠組みは温存されたままになっています。

働かせ放題の枠組みを温存したまま調整額だけ上げることで、むしろ「給与が上がった分働いて」と長時間労働が固定化され、さらに助長されるのではありませんか。必要なのは、残業代不払いという制度そのものの見直しです。残業代制度は、長時間労働を抑え、人間らしく働くための世界共通のルールです。それなのに、教職調整額の支給と引き換えに、公立学校教員を労働基準法の残業代制度の適用から外したことは、あまりにも不合理です。

すでに国立学校や私立学校の教員には、残業代を支払う制度があります。残業代を支払わず、コスト意識ゼロで教員の仕事を次々に増やし、長時間勤務を蔓延させてきたことを反省し、公立学校の教員にも、働いた分の残業代を支払う制度を適用すべきではありませんか。お答えください。

さらに今回の調整額の引き上げが、本当に「処遇改善」と言えるのかも疑問です。教職調整額を6年かけて1%ずつ引き上げる一方で、特別支援学校・特別支援学級の教員の給料に上乗せされていた調整額の引き下げなど、他の教員手当の見直し・削減も行うもので、全体として給与の増額はわずかなものになりかねません。

特別支援学校・支援学級を直接担当している教員の皆さんは、障害に応じた様々な専門知識を持ち、まさに命がけで日々の教育活動に携わっています。その調整額を引き下げることは、障害のある子どもたちの教育の充実に背を向け、責任を果たそうとしない政府の姿勢の現れそのものではありませんか?

特別支援学校や支援学級の調整額引き下げなど、他の手当の引き下げは改めるべきではありませんか?

本案では新たに「主務教員」を設け、職務と責任に見合った処遇にすると言います。衆議院でも「頑張っている先生を評価せよ」ということが盛んに議論されていましたが、現場では「みんなが頑張っている。競争させなければ頑張らないという思い込みはやめてほしい」と教員の皆さんが訴えています。

学校現場、子どもたちの教育にとって大切なのは、同僚性が発揮される教職員の共同です。人事評価や管理を一層強化し、学校現場の管理強化を進めることではありません。教員の同僚性を壊し、共同を困難にする新たな主務教員の創設はやめるべきではありませんか?

何より、教員の長時間労働の実態を国が正確に把握し続けるべきです。衆議院での与党による修正で、教員の勤務の状況について調査を行う旨が規定されましたが、それは勤務実態調査を継続するということですか?

教育委員会による在校時間の把握では、現場の実態からあまりに乖離しています。今や当たり前のように発生している持ち帰り残業や、休憩時間がどれだけ取れているかの把握ができていません。教員の労働実態の正確な把握を続けるためには、国として勤務実態調査を引き続き継続的に行うべきではありませんか?

そもそも文科省は、公立学校の教員の時間外勤務を労働時間と認めていません。衆議院では、公立学校教員の時間外勤務について、労働基準法上の労働時間には該当しないと繰り返されました。こうした文科省の答弁に、心がえぐられるような憤りも感じますと、現場教員から怒りの声が上がっています。

労働基準法にも特例法にもなかった「在校等時間」などという、理解ができない時間管理ではなく、教員が業務として行っている時間外勤務は、労働時間と位置付けるべきではないですか?

本法案で教育委員会に業務管理確保措置実施計画の策定を義務付け、時間短縮の目に見える成果を求めるといいますが、これはむしろ校長や管理職による締め付けの強化や「時短ハラスメント」、教職の持ち帰り業務の増加を招くことになりませんか?

結果として、把握も管理もされない残業が増えるなど、長時間労働の実態を隠す行為を助長することになりませんか? お答えください。

深刻な長時間労働をなくすためには、1人当たりの業務を削減し、抜本的に教員を増やすことこそが必要です。勤務実態調査で明らかになったのは、授業をするだけで勤務時間のほとんどが終わってしまうということです。小学校では1日5コマ、6コマが当たり前です。1日に6コマの授業を行い、休憩時間を法律通りに取れば、授業準備などに当てられる時間は、定時の退勤までにわずかしか残りません。

持ちコマ数を1日4コマ以下に削減すれば、授業と休憩等で4時間、残り4時間を授業準備その他の公務に当てる、1日8時間労働が可能になります。教員数を増やすことにもつながります。

衆議院での修正では、政府の取り組むべき措置として、教員1人当たりの担当授業の削減と、義務標準法の教職員定数の標準の改定が明記されました。それはつまり、教員1人当たりの授業の持ちコマ数の上限を設け、加配での増員ではなく、義務標準法での算出比率である定数の改善など、基礎定数により教員定数を抜本的に増加するということですか?

合わせて、今や教員にも子どもたちにも負担となっている年間授業時数そのものも減らしていくべきではないですか? 第7次で止まってしまっている定数改善計画を復活させて、教員定数を計画的に改善すべきではありませんか? お答えください。

時間外勤務を労働時間と認め、公立教員にも残業代を支払うこと。抜本的に教員定数を増員することなしに、危機的な教員の長時間労働はなくせないということを申し上げ、質問を終わります。

石破総理

長時間労働是正における本法案の実行性についてでございます。

教師の負担軽減を図る観点から業務の仕分けを行ったうえで、学校教師が担う業務による三分類に基づく業務のさらなる厳選・見直し、標準を大きく上回る授業時数の見直し、ホームDXの加速化を進めますとともに、学校の指導運営体制の充実により、教師の時間外在校時間を削減いたしてまいります。

今回の法案は、計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講ずる旨の規定を盛り込むなど、働き方改革のさらなる加速化のための仕組みを構築するものでございます。

給特法の見直しについてでございます。教師の時間外在校時間を抜本的に削減することなしに、教職調整額や残業代が支給されたとしても、教師のやりがいや負担感は十分に改善されないものと考えております。優先すべきことは、徹底した働き方改革を着実に進めることであって、今回の法案はそのために、計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講ずる旨の規定を盛り込んでおるところでございます。

給特法につきましては様々なご議論があることを承知しておりますが、まずは時間外在校時間が月20時間程度に達するまでに、幅広い観点からの初期の整理を行うことといたしております。

給料の調整額についてでございます。今般の教師の処遇改善は、教職調整額の引き上げに加え、教師の職務や勤務の困難性に応じた処遇の実現を図ることといたしております。

特別支援教育に携わる教師に給料の調整額を支給いたしておりますが、近年、通常の学級にも特別支援教育の対象となる児童生徒が増加し、すべての教師が特別支援教育に関わることが必要となっていることから、一部見直すことといたしております。

給料の調整額は見直しますが、教職調整額の引き上げにより、特別支援教育に携わっている教師個人の給与水準は毎年度引き上がることとなります。

主務教諭の創設についてでございますが、今回の法案に規定する教は、特別支援教育、情報教育、防災・安全教育など、学校で組織的に対応すべき横断的な教育活動について、教職員間の核となって総合的に調整する役割を担うものでございます。

主務教諭の創設により、学校が抱える課題等に組織的・機動的に対応し、業務をより効率的に行うことが可能になるとともに、教職員間の連携・協働が進むことにもつながると、このように考えております。

教師の勤務状況の把握についてのお尋ねをいただいております。教師の勤務の状況につきましては、現在、全国の教育委員会におきまして、ICTの活用等により、教師の在校等時間の状況を客観的に把握する取組が進んでおります。

このことから、今後は毎年度、教育委員会を対象とする調査を通じて把握することとしております。

学校における働き方改革において大事なことは、これまで学校・教師が担ってきた業務の仕分け等を行い、業務を削減していくことにございます。校長や教育委員会は、把握した状況を踏まえて、業務の改善のための措置を講ずることが重要であり、持ち帰り業務は行わないことも含めて、こうした趣旨を徹底いたしてまいります。

教職員定数についてのお尋ねです。教師の時間外在校時間を抜本的に削減することなしに定数改善を進めても、やりがいが小さくて負担の大きい教師が増加しかねません。

優先すべきことは、徹底した働き方改革を着実に進めることであり、国会で行われた法案について、政府の立場からの答弁は控えさせていただきますが、教職員数につきましては、昨年末の大臣合意に基づき、財源確保と合わせまして、持ち授業時数の軽減にも資する指導運営体制の充実を、4年間で計画的に実施するとともに、中学校35人学級への定数改善を行うことといたしており、必要な取組を進めてまいります。

標準授業時数につきましては、次期学習指導要領に向けた検討におきまして、各教科の標準授業時数の柔軟な運用など、働き方改革に資するような教育課程の改善の方策が議論されていると、このように承知いたしておるところでございます。

以上でございます。