【文字起こし】6月3日国会(参院)文部科学委 共産党・吉良議員VS参考人

吉良よし子(共産党)

では早速ですけれども、露口参考人と本田参考人に給与のあり方について伺っていきたいと思います。冒頭の話の中で、本田参考人からは、やはりこの教職調整額というのが現在の教員の労働時間に見合わないんだというご指摘があったと思います。

また同時に、露口参考人からは処遇に関して公正に行われることが重要であるとのご指摘もあったと承知しています。

今回の法改正では、この教職調整額を段階的に引き上げるだけではなくて、中教審も受けてということで、学級担任への手当の加算もあるという一方で、問題となっているのは、特別支援学校、特別支援学級、そして通級を担当する教員の調整額、給料の調整額を引き下げるという改定・改悪だと思うんですけれども、これについて文科省には「全体としてはマイナスにならない、改善になるように調整しているんだ」と言い張っているわけですけれども、マイナスにはならないとしても、その改善幅、引き上げ幅というのが小さくなるのは明らかで、そういう事態の中から現場の側からは、特別支援が必要な子どもも、それを担う教員の立場も軽んじられているんじゃないかと、こう批判の声が上がっているわけです。

やはりこうした給料の調整額を引き下げるこの行為そのものは、公正とは言えないし、むしろそういった教育を軽視するというメッセージになってしまうのではないかと思うのですが、この点に関してのお二人のご意見をそれぞれお聞かせください。

本田由紀(東大教授)参考人

はい、特別支援手当てを引き下げることは、軽視につながると思います。教員の方たちが軽んじられているという思いを強くすることは、現場にも悪影響があると考えます。以上です。

露口健司(愛媛大学教授)参考人

はい、ご質問ありがとうございます。私の方で現職の先生方から聞いている意見があります。特別支援学級の担当であると、1日あたり1000円から1200円に対して、学級担任をされている主任さんの方が200円である。これが果たして公正かどうか、というような意見を原職の先生方から伺っています。

そこで今回、学級担任手当ということで加算していくわけですが、その金額も非常に微々たるもので、ある先生によりますと、これは日額か月額かわからないというレベルです。現場の先生からすると、学級担任を持つかどうかで1年間の仕事の在り方が決定的に変わってきます。そういった先生方の業務や熱意に対する評価を、もう少し上げていただけたらという意見を持っています。以上です。

吉良よし子(共産党)

はい、学級担任の手当の引き上げも当然必要だと思いますけれども、一方で特別支援に携わる教員の皆さんは、この学級担任の手当の加算の対象からも外されるという意味では、非常に不公平と言わざるを得ない中身になっているのではないか。それは軽視につながるのではないかとも感じているところです。

続いて、本田参考人に伺っていきたいと思います。最初のお話で、教員の問題点についてのご指摘があったかと思います。私自身も学校現場の皆さんの話を聞くにつけ、学校や子どもたちの教育にとって大切なのは、同僚性が発揮される教職員の協働であると考えています。

文科省も問題視している通り、森人の先生方の負担も重いでしょうし、主任を担当している先生方も様々な任務があって大変です。そういった大変な教員がお互いに支え合うという同僚性、協働性こそが何よりも学校現場で大事だと思う時に、この役職手当の導入で階層化するというのは、そういった協働性の発揮を妨げることになるのではないか。そして分断を生み、さらに言えば、新たに主任教員となる方の負担にもつながり、過労にもつながるのではないかと思います。そのあたりについて、ぜひ詳しく教えてください。

本田由紀(東大教授)参考人

はい、資料にも書いてある通りなんですけれども、同じ考えを持っております。教員について「サポートをする」といった表現が使われたりしますが、サポートをする・されるという関係は、される側の一般の教員にとっては指示を受けるのと同じことになります。

そうではなく、全員が同じ資格を持って対等に敬意を払い合い、相談し合い、アドバイスし合いながら決めていくということそのものが、教員・学校にとって非常に重要であり、それは既に危機的状況に陥っていると言えます。

その中で一部の教員だけを名指して、役割と手当をつけるということは、それ以外の教員との間の格差を際立たせることになります。何の益もなく、むしろその弊害の方が大きい。中堅教員に対して多少の賃上げとして用いるのであれば、それは本質的ではないと考えます。以上です。

吉良よし子(共産党)

「益もないのではないか」というご指摘を重く受け止めるところです。それでは、青木参考人、鍵本参考人、そして本田参考人に伺いたいのですが、前回の参考人質疑の際にも伺ったように、やはりこの長時間労働を改善するには、持ちコマ数を削減していくこと、1人あたりの教員の定数、基礎の改善が本丸ではないかと思います。それについて一言ずつご意見をいただければと思います。

青木参考人

はい、お尋ねありがとうございました。定数改善につきましては大事なことだと思います。ここまでの議論を拝見していますと、「上乗せ数」というものが論点になっていると思いますが、私は十分詳しくない分野なので、どう答えていいか考えながらお話ししています。

「上乗せ数」が開発された時代は、日本の人口が増加していた時代でした。現在の少子化が急速に進んでいる中で、「上乗せ数」がどのように機能するか、まだ十分考えが及んでおりません。

その上で、例えば今、先生方が大変で、学校でいろいろな問題が起こり、お休みされる先生も増えている。その中で今回の定数改善の議論とは少し離れるかもしれませんが、副校長先生と教頭先生をダブルで配置するなど、教頭先生は教育を司る規定があり、何かあったときにバックアップ的な機能も果たす。また若手教員を育てるという機能も担っていただく。他方、副校長先生に一般行政の方を任せて、マネジメントをしっかり行うという形で、定数改善を中期的に考える必要がある。

つまり、学校あたり1人まずは数を増やすということもあっていいのではないかと思っています。以上です。

鍵本参考人

持ちコマ数についての考えですが、教員は授業だけでなく他の公務分掌も含めて、生徒指導や進路指導なども行っております。また授業数が多くても、持ちコマが少なければ負担は軽くなるということもありますので、授業数のみで負担を把握するということには検討が必要だと思います。

ただ、小学校においては、これまでも議論がありましたように、教員の持ち授業数が軽減されることが非常に重要だと考えています。高学年、例えば4年生に進む中で、今後も継続的に負担の軽減が図られ、計画的な教員数の改善が引き続き行われることが大切だと思っています。以上です。

本田由紀(東大教授)参考人

コマ数であれ、「上乗せ数」であれ、あるいは学級のクラサイズ(クラスの規模)を削減するのであれ、手を尽くして教員の基礎定数を増やしていただきたいところです。

先ほど青木議員から「学校あたり1人増やす」という提案が出ましたけれども、現状は学校あたり1人すら増やす状況に達していないのです。仮に1人増えたとして、それがどれだけ先生方の業務削減になるか、それすら達成されていない。

これは、これまでいかに過酷で無理な学校現場を強いてきたかという現れです。ですので、抜本的な改革が必要だということを強調しておきたいと思います。以上です。