木村英子議員(れいわ)
本日は、特別法改正案で新設される「主務教諭」についてお尋ねします。
今回の法改正においては、新設される主務教諭が児童等の教育を司るとともに、学校の教育活動に関して教職員間の総合的な調整を行うとあります。しかし、この主務教諭の創設によって限られた教員に業務が課され、負担が増加し、生徒の学校生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。
たとえば、現在の教員の残業時間は、小学校で80時間以上、中学校では100時間を超えており、「過労死ライン」とされる月80時間を上回っています。
資料をご覧ください。2023年度の教員の精神疾患による病気休職者は約7100人で過去最多となっており、長時間労働が蔓延する現状において、学校は「ブラック職場」としてのイメージが定着し、教員志望者は減少しています。
そして、教員の過酷な労働環境の影響は子供たちにも及んでいます。資料をご覧ください。小中学生の不登校は増え続け、令和5年度には34万人余りとなり、11年連続で増加し、過去最多となっています。また、いじめの件数も令和5年度は小中高合わせて73万件を超え、前年度よりも増えて過去最多です。さらに、令和6年の自殺者数全体は減少した一方で、児童生徒の自殺者数は過去最多となっています。
こうした背景には、教員の過重労働によって、生徒と十分にコミュニケーションを取る時間が確保できないことなどが、自殺やいじめを引き起こす大きな要因となっていると考えます。
そうした状況の中で、現場の職員の声を紹介したいと思います。
資料をご覧ください。
「私たちは子どもたちのために仕事がしたいと思っていますが、次の日の授業準備も十分にできず、子どもたちの前に立つことも多く、また子どもたちの話もゆっくり聞けません。これは1日の担当授業が多すぎて、勤務時間中には授業の振り返りや準備、子どもたちと向き合う時間が確保できないからです。さらに、目の前の子どもから出発する教育にとって不要・不急の業務が多すぎて、長時間勤務で過密な勤務となり、やりがいと健康を奪われています。」
このように教育現場で追い詰められている教員の悲鳴は氷山の一角であり、その被害は子どもたちにも及びます。学校生活で受けた傷は子どもたちの基礎となり、大人になってから社会で病となり、また次の世代へと引き継がれ、取り返しのつかない状況となってしまいます。
今回新設される主務教諭の創設によって、深刻な教員不足を解決しないまま業務だけを増やすことは、負の連鎖を引き起こすことになります。
今、優先すべきは教員の人手不足を解消することであり、教員が本来の業務である子どもたちとのコミュニケーションを深める時間を確保することではないでしょうか。主務教諭を新設しても、こうした状況を放置したままでは解決には至らないと思います。
ですから、主務教諭を新たに創設する前に、まずは教員の増員を図るべきだと思いますが、大臣はいかがでしょうか。
あべ文部科学大臣
まさに私どもも、教師を取り巻く環境の整備はしっかり進めていかなければならないと考えています。そうした中で、主務教諭については、教育活動が組織的に行われるよう、教職の核として総合的に調整する役割を担うものであり、新たに学校が担う公務が追加されるわけではないため、追加的な定数改善は現在のところ想定しておりません。
一方で、教職員定数の改善は重要と考えており、令和7年度予算では過去20年で最大となる約5800人の定数改善を計上しています。また、令和8年度からは財源確保と併せて中学校の35人学級のための定数改善を進めることとしており、引き続き教師を取り巻く環境整備にしっかり取り組んでまいります。
木村英子議員(れいわ)
今、大臣がお答えになったように、教職員を増やすとしても、全国には3万校以上の小中学校がある中で、約5800人の増員ではとても足りないと思います。
主務教諭の新設については、現場の職員から反対の声が寄せられていますので、紹介します。
香川県の教員の方からは、「学校現場は圧倒的に人が足りず、最低限の教育すら守れない状態です。そんな中で子どもたちのために協力しながら働いている現場に、主任教諭は指揮命令系統を持ち込み、現場の協力関係を破壊します」との声。
また、「学級担任手当や主任教諭の給与に差をつけることで、今まで様々な業務をシェアしてきた体制が崩れます。百害あって一利なしです」との声もあります。
さらに、愛媛県の教員の方からは、「給与表に格差をつけ、副校長、主幹教諭、指導教諭などのポストが設けられていますが、その実態は業務がつかず、学校運営を複雑にし、教育活動を妨げ、業務量を増やして長時間労働を生み出しています」との声も。
学校に複雑な構造は必要なく、トップダウンの仕組みは子どもの権利条約が求める学校にふさわしくありません。
また、障害者の立場から言わせていただくと、教員不足を放置したまま業務を増やす体制は、障害児と健常児が共に学ぶインクルーシブ教育の妨げにもなります。
障害児や保護者が普通学校に通うことを希望しても入学を拒否されることが多い日本において、普通学校や学級から障害児が排除される状況を、文部科学省自身が生み出してしまうことに私は強い怒りを感じます。
こうした日本の現状に対し、インクルーシブ教育の先進国であるカナダ・バンクーバーでは、障害児の受け入れ拒否は法律で禁じられており、障害のある子どももない子どもも同じ教室で共に学ぶ環境が整っています。
教師の待遇も日本より格段に恵まれており、ブリティッシュコロンビア州では公立学校の教師は年収最低でも600万円、手厚い年金制度があり、仕事は8時から16時まで、基本的に残業もなく、教える・成績をつける以外の業務はほとんどありません。
障害児の状況に応じて教員などの人員配置もなされており、1つのクラスに3〜4人が配置され、チームで子どもたちを手厚く支える体制が整っています。
日本の教育現場は、教師も生徒も疲弊しています。問題の解決に向けて、教員を増員し、生徒とのコミュニケーションを取れる環境を整えるためにも、主務教諭の新設は見直すべきだと思います。大臣のお考えをお聞かせください。
あべ大臣
本当に子供たちにしっかりと対応していくために、私どもは教員同士が連携して対応すべき案件が多様化・複雑化・増加している中で、こうした現場の案件に一層組織的に対応できる体制を構築するために設けるものでございます。
共有の配置によりまして、学校全体の業務をより効率的に行うことが可能となるとともに、教職員間の連携・協働に資するというふうに私ども考えているところでございます。また、これによりまして、子供たちへの教育活動の充実にもつながるというふうに考えているところでございます。
文科省としては、こうした共有の創設の趣旨につきまして、しっかりと周知徹底をしてまいりたいというふうに思っております。
木村英子議員(れいわ)
はい。子供たちの教育課程の効率化というようなことも今言われましたけれども、現場の職員、教員の声を聞くということが大事かと思います。
資料をご覧ください。先月、現場の教員など有志の人たちが集まって行われた給特法改正法案に反対する院内集会では、教員である夫を過労死で亡くした方が、法案に盛り込まれている共有の導入について、地域との連携や若手教員の指導など教育に求められている業務内容は、生徒指導専任として多くの仕事を抱えていた夫が亡くなった当時の状況と酷似していると指摘しています。
教育現場において様々な課題への対応で現場が疲弊し、今回の改正案にも反対する声が多い中で、この法案を強行に通そうとしていることに懸念を持っています。共有への業務の集中や労働時間の増加など施行後の影響については、現場の声を拾い上げる会議体や検証の仕組みなどは当然用意すべきだと思います。
次に、教員の残業についてお聞きします。
法では、教員の業務はすべてが自発的な業務とされているため、どれだけ時間外労働をしても残業代が出ない仕組みとなっており、「定額働かせ放題」と言われています。教員の勤務実態は、授業準備、学習指導、成績処理などの授業関連と、生徒指導、部活動などの児童生徒の指導で、所定労働時間の7時間45分は埋まってしまいます。
これ以外の朝の業務、職員会議、学校行事や学年運営、研修などの事務は、業務命令があろうとなかろうと、所定時間を超過してもこなさなければなりません。さらに、総合的な学習や外国語の導入など学ぶ科目と内容が増やされ、子供たちの多様化に伴い、教員が業務時間内に到底処理することのできない業務量が常態化し、時間外労働が大きく肥大化しています。
また、精神疾患による病気休職者が過去最高となるなど、教員の長時間労働が蔓延する現状において、今、教員の働き方改革と待遇改善を進めなければ、教員不足によって――すみません、休憩お願いします。はい、お願いいたします。速記を止めてください。
(速記中断)
今、教員の働き方改革と待遇改善を進めなければ、教員不足によって学校教育が崩壊しかねないという危機的状況にあります。
そもそも労働者は労働基準法によって残業代が支払われるのが原則であり、多くの他の公務員や、同じく教員として働く私立学校や国立学校の教員については残業代が支払われている状況にもかかわらず、公立学校の教員だけが給特法によって残業代が支払われていない状況では、金銭的にも精神的にも限界に達してしまい、人としての最低限の健康や人権が守られません。
今や教員の勤務実態は、過労死ラインの80時間を超える残業時間であり、「自発的な業務」の名のもとで長時間労働の常態化に歯止めがかからなくなっています。
急いで教員の長時間労働を解消し、「定額働かせ放題」を改め、法に基づいて残業代を支給する仕組みに改めることが必要だと思いますが、大臣、お答えください。
あべ大臣
教師の働き方改革をしなければいけないという思いは、私どもも同じでございます。
そうした中で給特法でございますが、公立学校の教師につきましては、給与その他の勤務条件について、労働基準法および地方公務員法の特例を定めたものでございます。
教師の業務につきましては、教員の自主的で自立的な判断に基づく業務、また校長等の管理職の指揮命令に基づく業務とが日常的に混然一体となって行われているという、この教師の職務等の特殊性から、時間外勤務手当てではなく、勤務時間の内外を包括的に評価するものとして教職調整額を支給することとしております。
中央教育審議会におきましては、法制的な枠組みを含めて総合的な議論が行われました。その結果、教師の裁量性を尊重する法を維持することといたしまして、その上で高度専門職としての教職の重要性にふさわしい処遇を実現するために、教職調整額を10%に引き上げることにしたわけでございます。
今回の法案におきましては、教職員の時間外在校時間を縮減するために、教育委員会に対し業務の管理、健康確保措置、実施計画の策定および実施状況の公表等の義務付けを盛り込みまして、全ての教育委員会において働き方改革を加速していく仕組みを構築すると同時に、教職員定数の改善など、学校の指導運営体制の充実にも、しっかりと努めてまいりたいというふうに思います。
木村英子議員(れいわ)
はい。大事なのは、やっぱり子供たちが今、安心して学校で生活できるということだと思うんですよね。
その子供たちを支えているのは教員ですから、教員の待遇改善をしっかりとしなければ、本当に子供たちが大人になったときに社会がどうなってしまうか分からない状態ですので、そこをしっかりと考えていただきたいと思います。
今、その課題が山積していることを解決できないような状況である、それを解決できない法案には賛成しかねるというふうに思います。以上で終わります。