教員には残業代が出ないことを知らない人がまだまだ多いようなので、改めてそのブラックな実態を説明する

私が公立小学校に勤めていたときも、ネット上の書き込みを見ていても、公立学校の教員には残業代が出ないということを知らない人がまだまだ多いようです。

このように、誤った認識をもっている方のなかには、民間企業のように教員も残業代が出るという前提でいるために消費者意識を学校にもちこみ、様々な要求をしてくる側面があるのではないかと私は思うのです。

いやいや、そうでなくて、教員は責任感や「子どもたちのために」ということで、自らのプライベートを削って、無給で働いている、残業代など出ない、かなりブラックなんですよ、ということを今回改めて説明していきたいと思います。

◆教員は残業代出ません!

まず、公立学校の教員は、原則時間外勤務はしないことになっています。

教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。(出典:文科省「教員の職務について」)

古き良き暇な昭和の時代にはこれで良かったのでしょうが、現在、勤務時間で仕事を終える教員は皆無です。

ですから多くの教員は時間外労働をさせられるのですが、驚くべきことに、残業代が出ません。(教員が残業代出ないのを知らない方は、この世界があまりに斜め上をいっているからだと思います)

公立学校の管理職以外の教員には、労働基準法第37条の時間外労働における割増賃金の規定が適用除外となっており、時間外勤務の時間数に応じた給与措置である時間外勤務手当が支給されず、全員一律に給料に4パーセントの定率を乗じた額の教職調整額が支給されている。(出典:文科省「教員の勤務時間管理、時間外勤務、適切な処遇の在り方」)

赤字部分のとおり、勤務時間内に業務が終わる時代の名残でなぜか今でも、教員は時間外労働における割増賃金の規定が適用除外になっているのです。

◆教職調整額4%って何?

しかし、先ほどの引用(太字・黒字部分)を読んで、こう思われる方もいるかもしれません。

いやいや、でも4%の「教職調整額」貰ってるんでしょう?

これが実質、残業代じゃない?と。

しかし、この教職調整額、残業代ではありません。「超勤4項目」といって、例外的な4つの業務についての時間外手当に過ぎないのです。

公立学校の教員に時間外勤務を命じることができる場合は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令(平成15年政令第484号)」により、実習や学校行事、職員会議、非常災害などに必要な業務(いわゆる超勤4項目)に従事する場合であって臨時または緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとされている。(出典:文科省「教員の勤務時間管理、時間外勤務、適切な処遇の在り方」)

超勤4項目とは、

イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
(出典:文科省「教員の職務について」)

の4つの業務を指します。

つまり、この4つの例外的な業務において、あらかじめ一律に4%の時間外手当を出しますよ、というのが教職調整額です。

修学旅行や災害があったときなど、勤務時間終わったんで帰ります、では困りますから、ここまでは理解できます。

額としては、例えば月30万円の基本給の教員の場合、1万2千円程度になります。

まさかいないとは思いますが、「な~んだ1万2千円も貰えるんじゃん!」と考えるのは違います。

◆実質「みなし残業」状態

問題はここからです。

前述のとおり、本来、この教職調整額は超勤4項目に限定しての手当なのですが、勤務実態はほとんどこの4項目以外での時間外労働です。

教員、週60時間以上の労働が7割超 勤務時間「管理もルーズ」(出典:日本経済新聞2017年1月26日)

このように、7割を超える教員が週60時間勤務(=1日4時間の時間外勤務、1か月80時間の時間外勤務)を行っている、という報道もあります。

超勤4項目の、校外学習、修学旅行、職員会議、非常災害、これだけで月80時間もいくわけがありません

明らかに、超勤4項目以外での時間外労働を(残業代なしで)させているのです。あるいは、教員が自発的に好きで勝手に仕事をしているということになっています。

ひどい管理職になると、知ってか知らずか「教員は教職調整額を貰っているのだから、(超勤4項目に限らず)残業して当然だ」とかいう者もいます。

実際、私も言われたことがあります。言われたとき、あまりに腹が立ったので、その誤った前提で時間外労働を時給換算して計算してみたこともあります。

  • 基本給30万円(そんなに貰っていませんでしたが計算しやすい為)
  • 80時間の時間外労働
  • 1万2千円の教職調整額。

この条件で計算すると、時給=150円でした。

誤った前提においても、150円ですよ。

まあ、本当は150円どころか、超勤4項目以外に関して言えば、0円なんですが・・・。

これはもう実質、民間企業では許されていない「みなし残業」が許されているも同然です。

ブラック過ぎます。残業代など、ないに等しいのです。

◆まとめ

教職調整額(調勤4項目)という制度のせいで若干ややこしくなりましたが、教員は残業代を貰っていない、ということを改めて説明しました。

様々な不祥事やいじめ問題への対応のまずさ等により、世の中からの風当りが強い教員ですが、多くの真面目な学校教員は、子どもたちのために無償奉仕している、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

ですからくれぐれも時間外(5時以降)に、消費者意識で学校に要求するのは自重してほしいと思います。

そうでなくてももう十分に「やりがい搾取」されているので。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「教員には残業代が出ないことを知らない人がまだまだ多いようなので、改めてそのブラックな実態を説明する」でした!

関連記事;民間企業から教員に転職して驚いた教員の世界の常識~10選~