大阪の高校教諭が「安全配慮義務違反」を認定される可能性を過去の判例から考える

大阪の高校教諭が適応障害を発症して休職したのは、府に安全配慮義務違反があったとして、訴訟を起こしたというニュースが流れてきました。

大阪府立高校の男性教諭が、適応障害を発症して休職したのは授業準備や部活動指導などによる長時間労働が原因として25日、大阪府に約230万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。原告側代理人によると、公立学校の現職教員が過重労働の責任を問う国家賠償法に基づき自治体に損害賠償請求するのは初めてという。(中略)「校長は長時間勤務を知っていたのに勤務内容を軽減する措置を取らなかった」などとし、府には安全配慮義務違反があったと主張している。

(出典:産経新聞『「長時間労働で適応障害」大阪府立高校教諭が府を提訴』2019年2月25日)

報道によれば、この訴訟は給特法の解釈(未払い賃金請求)をめぐる裁判ではなく、「安全配慮義務違反」かどうかを問う裁判になりそうです。

その意味において、この訴訟は2004年に京都府の学校教員が「安全配慮義務違反」を訴えた訴訟に近いものがあるのではないかと思います。

本記事では、京都の判決をヒントにして、裁判の行方を考えてみたいと思います。

◆そもそも安全配慮義務違反とは?

労働契約法第5条では、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と、使用者が労働者に対して負うべき労働契約上の付随義務を定めています。これを「安全配慮義務」と呼びます。

使用者がこの義務を怠り、労働者に損害が発生した場合、使用者は労働者に対して損害賠償責任を負うことになります。

◆2004年京都市の判決

2004年に京都府の学校教員が起こした裁判では、予備的に未払いの超勤手当を請求したものの、主位的には「安全配慮義務違反」を問うものでした。

判決は、大阪高裁で一度「安全配慮義務違反」が認められ、その後最高裁で覆され棄却されました。

※大阪高裁判決は、「時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識、予見できていたことが窺われるにもかかわらず、改善等の措置を特に講じていない点において、適切さを欠いた」として、管理職の安全配慮義務違反を認める判断を下した。しかし後の最高裁では一転、「時間外勤務命令に基づくものではなく(中略)強制によらず各自が職務の性質や状況に応じて自主的に上記事務等に従事していたもの」「外部から認識し得る具体的な健康被害又はその兆候が生じていた事実が認定されておらず、さらに、各校長が健康状態の変化を認識し又は予見することは困難な状況であった」と安全配慮義務違反を認めない判断を下した。

最高裁が棄却した理由は、上記の通り、「原告の自主的労働」「原告は病気に罹患していない」というものでした。

◆今回は安全配慮義務違反が認められる?

報道によると、今回、訴訟を起こした大阪の高校教諭は「適応障害」を発症したとのことです。

上記の京都府の判例から考えると、命令された業務が超過勤務であると認められれば今回の訴訟は安全配慮義務違反が認められる可能性大なのではないかと私は考えます。

今後の裁判の行方について、要注目です。

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