【文字起こし】衆院本会議の給特法審議、Q&A形式に整理した

4月10日に行われた衆院本会議で、給特法の一部(教職調整額引き上げ等)を改正するための審議が行われました。

動画を見ていると、各議員が一気にいくつも質問し、与党側が一気に回答するという形式で答弁が行われているので、どの質問に対し、どういう回答しているのか、分かりづらいと感じました。なので、Q&A形式にして整理します。

立憲・坂本祐之輔議員

①総理は長時間勤務を強いられている現場の状況をどう認識されているか。

令和4年度の勤務実態調査の結果では、依然として時間外在校時間が長い教師も多い状況であると認識している。

②今回の改正法案では、萩生田大臣が指摘した、「現在の法律が制定当初に想定された通りには機能していないこと」や「労働基準法の考え方とのずれ」などの課題がどのように根本的に見直されたのか。

ご指摘のとおり、答弁当時は給特法の仕組みが教師の長時間勤務の歯止めになっていなかったという課題があり、議論が行われていたものと認識している。その後、法制的な枠組みを含めて総合的に検討した結果、今回の法案には計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が教師の業務を管理する措置を講じる規定を新たに盛り込み、働き方改革のさらなる加速のための仕組みを構築することとした。

(※回答になっているかどうかは微妙)

③今回の法案では、何をどれだけ削減すれば月30時間になるのか、根拠が示されていない。具体的にどのような業務を削減し、どのように教職員を増やしていくのか。

教師が担う業務にかかる3分類に基づく業務のさらなる厳選・見直し、標準を大きく上回る授業の見直し、校務のDXの加速による事務作業のさらなる縮減を進める。

教職員定数については、昨年末の大臣合意に基づき、指導・運営体制の充実を4年間で計画的に実施するとともに、財源確保と合わせて、令和8年度からの中学校35人学級への定数改善を進める。

④「経済財政運営と改革の基本方針2024」では、教職の給与水準を少なくとも10%以上引き上げる必要があると明記されている。にもかかわらず、文部科学省と財務省の折衝により、結果は年1%の増額にとどまった。これはなぜか。少なくとも2030年度までに10%引き上げることを約束していただけるか。

令和12年度(2030年度)までに段階的に10%とすることとし、毎年1%ずつ引き上げることとしております。本法案の附則第3条では、令和10年1月以降を目途として、働き方改革や財源確保の状況等を勘案し、教員の勤務条件のさらなる改善のための措置について検討を行い、教職調整額にかかる率の変更を行うことを含め、必要な措置を講ずる旨を規定している。

⑤現在の授業時数は子どもにとって多すぎるという認識はあるか。

学校での授業時間については、文部科学省の調査において、小中学生の約6割が「ちょうど良い」または「少ない」と回答しており、それ以外が「多い」と回答しているものの、必ずしもすべての子どもにとって過度な負担になっているとは認識していない。主要先進国との比較でも、日本の小学校は年間平均778時間であり、ドイツは724時間、フランスは864時間、アメリカは974時間と、日本が特に多いわけではない。

⑥学校の教員に対して時間外労働の上限規制を確実に適用させるためには、どのような強化策が必要か、総理の答弁を求める。

教師の業務の適切な管理や健康・福祉の確保については、政府として教育委員会に対し、人事委員会への実施状況の報告や専門的な助言を求めるなど、連携を図るよう求め、取り組みを進める。

⑦過労死防止のためには、健康確保措置が徹底される必要があり、場合によっては「管理職に対する罰則の導入」も検討すべきです。この点について、総理の答弁を求める。

本来、校長や教育委員会は、教師の健康を確保し、安全に配慮する義務を有するもの。今回の改正におきましては、他の公務員の例も踏まえ、罰則を設けることとはしていないが、計画の策定・公表、計画に基づく実施など、教育委員会や学校が健康を確保する措置を講ずる旨を規定している。

⑧学校の働き方改革が進まない最大の原因は、労働基準法第37条の適用除外とした給特法であることは明らか。労働基準法とのずれを早期に是正し、将来的には給特法を廃止すべきと考えます。総理の見解を伺う。

給特法の更なる改正については、様々な議論があることは承知しているが、まずは時間外在校時間が月20時間程度に達するまでに幅広い観点から所要の整理を行う。

維新・高橋英明議員

①今回の法改正が、総理は、この法案によって労務管理の意識が定着すると本気で考えているのか。

今回の法案では、計画の策定・公表、計画に基づく業務管理などを教育委員会や学校に義務づけ、働き方改革の加速に資する仕組みを構築するものである。

②持ち帰り残業や長時間勤務などの実態は依然として改善されていない。総理は、文科省のこれまでの改革の成果をどう評価し、現在最も解決すべき課題をどこに見出しているのか。また、教員実態調査に基づく具体的な改善目標を示してほしい。

将来的には、教師の平均時間外在校時間を月20時間程度に縮減することを目指し、まずは今後5年間で月30時間程度に縮減することを目標としている。

③今回の法改正では、地方自治体の教育委員会に業務量管理・健康確保措置の実施計画策定と公表が義務づけられた。進捗を良く見せようとする数値改ざんや隠蔽によって、逆にブラック化が進行する恐れがある。この懸念をどう払拭するのか。

本法案では、計画の実施状況が不十分な場合の罰則は設けていないが、各教育委員会が定めた計画の実施状況の公表および総合教育会議への報告を義務付けており、この仕組みによって計画の着実な実施を促していく。

④教育委員会改革について問う。例えば、30万人程度の人口単位で広域化し、人材確保や管理コストの効率化を図る案について、改革の方向性を示していただきたい。

教育委員会は学校教育を所掌する執行機関であり、各地方公共団体に設置されている。近隣の市町村と共同で設置することも可能であるが、各地方公共団体において適切に判断すべき事項と考える。

⑤「補教」実施分に応じた追加ボーナスや特別手当を支給する仕組みの導入は検討できないか。

今回の改正案では、学級担任への手当加算や初任者研修の制度創設により、職務や勤務の困難性に応じた処遇の実現を図る。さらに、努力している教師の処遇については、地方公務員法に基づく人事評価制度を通じて業績を適正に評価し、勤勉手当などに反映させるべきであると考える。

国民民主・西岡義高議員

①「楽しい日本」を目指すうえで、教育をどのように導いていくのか、総理の具体的なビジョンを問う。

正解のない時代において、自ら問題を探求し、他者と協調しながら考え、自由に人生を設計する能力の育成が重要。

②この程度の施策(教職調整額10%)で教職が魅力ある職場になるとは言えない。総理および文部科学大臣の見解を求める。

教師の魅力を高めるには、「業務負担の見直し」が不可欠。業務の仕分けや、学校教育にかかる業務の三分類に基づくさらなる業務の精選、公務のDXの加速、学校の指導運営体制の充実により、教師の時間外労働を削減することが重要。

今回、教職調整額を10%へ引き上げ、その他の手当も改善することにより、昭和55年に人材確保法が制定された当時と同程度の水準を確保できる。教員給与の大幅な引き上げは約45年ぶりとなる。給与面の改善に加え、教職を取り巻く環境整備に向けて、様々な施策を総動員して取り組むことが重要である。このため、教育委員会ごとの働き方改革に関する計画策定の制度化や、教職員定数の改善、支援スタッフの充実など、学校の指導運営体制の強化を一体的かつ総合的に推進していく。

③給特法が悪法と見なされるようになったのは、業務が多忙であるがため、時間外勤務が常態化し、特定業務以外の仕事が教員の「自主的行為」として処理されてきたことによる。本来の法の目的と現実が乖離している。文部科学大臣の見解を伺いたい。

文科省は令和元年の法改正以降、学校現場での働き方改革を進め、以前に比べて教師の時間外勤務を減少させてきた。しかし、現在も長時間勤務の実態は厳しく、さらなる取り組みの加速が必要であると認識している。

(※質問への回答になっていない)

④労働基準法に照らせば、時間外勤務には超過勤務手当が支給されるべきである。だが給特法では、在校等時間に対して手当は支給されない。このように、給特法と労働基準法の間で整合性がとれていない。この点についての文部科学大臣の見解を求める。

給特法は、公立学校の教師の給与や勤務条件に関する特別法であり、労働基準法とは勤務時間に関する考え方が異なる。今回の制度改正については、中央教育審議会においても審議がなされ、「教師の裁量性を尊重する給特法の仕組みは、現在でも合理性を有している」との結論に至った。

⑤給特法の目的が達成されているかを判断するには、教員の勤務実態を定期的に確認する必要がある。しかし、国による勤務実態調査は、給特法制定後、平成18年、平成28年、令和4年のわずか3回である。この頻度の少なさは問題。次回の調査時期と実施方針について文部科学大臣に問う。

この調査は、抽出された学校の教師が1週間すべての業務内容を記録するなど、学校現場への負担が大きい。一方で、近年、教育委員会における教師の時間外勤務の客観的な把握が徹底されてきた。これらを踏まえ、今後は教育委員会が毎年度実施する調査を通じて、全国の教師の時間外勤務の状況を適切に把握していく。

⑥国立学校の教員は職務内容が変わらないにもかかわらず、給特法の適用から外れるようになった。公立学校教員のみに給特法を適用し続けることには説得力が欠ける。文部科学大臣の見解を求める。

公立学校と国立学校の教師に共通している。しかし、国立学校の教師は非公務員であり、勤務条件は民間の労働法制に基づく契約で定められる。一方、地方公務員である公立学校の教師の勤務条件は法律および条例で定められる。このため、公立学校の教師には、一般行政職とは異なる職務と勤務の特殊性を踏まえ、特別法である給特法とそれに基づく条例等により勤務条件が定められている。

⑦今回の法律案では、教職調整額の引き上げ根拠を人材確保法による優遇水準の回復としているが、本来的には本俸の引き上げや特別手当による改善が本筋であると考える。なぜ調整額による処遇改善が選択されたのか、文科大臣に問う。

人材確保法制定時には、本俸の引き上げや義務教育等教員特別手当の創設などが講じられたが、具体的な優遇措置については法に明記されていなかった。今回の改善は、教師の職務の重要性にふさわしい処遇を実現するためのものであり、本俸相当である教職調整額を引き上げ、給与面での優遇措置を講じることとした。

⑧今回の法律案は、教員という職業の魅力向上に資するものでなければならない。しかし、教員の業務削減や定数改善に関する改正内容は含まれていない。その理由を文科大臣に問う。

教職員定数の改善は重要。このため、令和3年には義務標準法を改正し、小学校において35人学級を段階的に実施するための基礎定数改善を進めている。また、加配定数の改善も進めている。令和7年度予算では、基礎定数を含めた過去20年間で最大となる5,827人分の定数改善に必要な経費を計上しており、今後も学校の指導運営体制の充実・強化に努めていく。

⑨今こそ「教育国債」を発行し、次世代への投資を進めるべきである。国民民主党が提案する教育国債の発行について、総理および財務大臣の見解を伺う。

「教育国債」については、安定財源および財政の持続可能性の観点から慎重な検討が必要である。

公明党・浮島智子議員

①総理に問う。政府として、早急に新たな役職給や手当の創設などにより、働き方に応じた給与体系の構築を検討するとともに、中学校35人学級の早期実現を図るべきと考えるが、見解を問う。

令和8年度から中学校における35人学級の定数改善を実施する。

②制度上は、都道府県の人事委員会が労働基準監督署的な役割を担っているが、実際には十分に機能していない。そのため、社会保険労務士などと連携し、教師が自ら勤務状況を相談できる外部窓口を設ける取り組みをモデル的に実施してはどうか。

人事管理は基本的に教育委員会が担うものであるが、政府としても勤務実態等に関する相談窓口を設置し、適切な対応を促してきた。外部専門家の活用は、相談機能の強化に有意義な側面があると考えられるため、党の意見も踏まえつつ、必要な取り組みを検討・推進していく。

③従来の教員養成にとどまらず、デジタル、サイエンス、アート、スポーツ、発達支援などの分野に専門性を持つ者が、改めて教育学部に入り直すことなく、普通免許を取得し教壇に立てるよう、教員免許法の改正が必要であると考える。見解を求める。

現在、中央教育審議会において、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成の観点から、教員免許制度等の在り方について検討が行われている。

れいわ・大石あきこ議員

①あべ文科大臣に問う。これらの時間のうち、超勤4項目以外の業務について、どのような法的根拠があるのか。それは労基法が規制する労働時間に該当するのではないか。該当するならば、割増賃金を支払うべきではないか。

公立義務教育諸学校の教員に関する給与その他の勤務条件については、特別法である給特法に基づいて定められている。この制度のもとでは、時間外勤務命令によらず、所定勤務時間外に教師が行う業務の時間は、労働基準法上の「労働時間」には該当しない。

②ここで福岡厚労大臣に問う。部活動指導、授業準備等は、厚労省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づけば、労働時間と認定されるのではないか。

超勤4項目以外の時間外・在校等時間が労働時間に当たるか否かは、個別具体的に判断される。労働者の行為が使用者の指揮命令下にあったと評価できるかどうかが、客観的な事実に基づき定まることとなる。

③石破総理に問う。現行の給特法においても、8時間を超える労働に対しては正当な対価を支払うべきではないか。それができないのであれば、給特法第3条第2項の削除を早急に行うべきである。

給特法については様々な議論があることを承知しているが、まずは時間外・在校等時間が月20時間程度に収まるまで、幅広い観点から課題の整理を行う。

共産・田村貴昭議員

①総理、学校現場が危機的な状況にあるとの認識はあるか。

教師不足について尋ねがあった。現在の教師不足は、大量の定年退職や産休・育休取得者の増加により臨時講師の採用が増加する一方、正規採用者数が大幅に増加していないことが要因と認識している。

②根本的な問題は、給特法が公立学校教員に時間外勤務手当を支給しない仕組みである点にある。文部科学大臣、なぜ教員の時間外勤務は「自主的・自発的」であり、時間外勤務ではないとされるのか。

給特法は、義務教育諸学校等の教育職員に関する給与や勤務条件を定めた特別法であり、時間外勤務命令によらず教師が行う業務は労働基準法上の労働時間に該当しない。また、教師への時間外勤務命令は、4つに限定されており、これは給特法制定当時、教師の超勤は原則行わないという趣旨によるものである。

(※回答になっていない)

③本法案では新たな職を創設し、人事評価や管理を強化し、その結果を昇給・昇進に反映させることで、学校現場の序列化が進むことが懸念される。

今回の法案では、教育活動における教職員間の総合調整を担う職として「主務教員」を新設する。これは学校が組織として機能を発揮できるようにし、課題に組織的・機動的に対応するための措置であり、教職員の連携・協働を促進することにつながると考える。また、マネジメント体制が充実することで、学校全体の業務効率化が期待される。