次期学習指導要領改定案「小学校英語教科化+前倒し」を受けて、元小学校教員の私が文科省のパブリック・コメントへ送った反対意見の3つの理由

14日、文部科学省より次期学習指導要領の改定案が示されました。

主なポイントは次の通りです。

学習指導要領改定案の骨子

・小学5、6年の英語を教科化し3、4年に外国語活動を前倒し
・小学校のプログラミング教育を必修化
・全教科で「主体的・対話的で深い学び」の視点による授業改善を図る
・読解力を育成するため小中の国語で語彙(ごい)指導などを拡充
・主権者教育、防災教育など現代的課題への対応も重視

(出典:毎日新聞「学習指導要領 知識使う力、重視 異例の指導法言及」2017年2月14日)

この改定案を受けて、文科省ではパブリック・コメントを受け付けていましたので、今回、一国民として意見を送ることにしました。

今回は、なかでも「小学5、6年の英語を教科化し3、4年に外国語活動を前倒し」に反対する意見について、まとめました。

◆「小学5・6年の英語を教科化、3・4年に外国語活動を前倒し」の概要

次期学習指導要領改定案では、現行では小学5年から行っている外国語活動を3年~に前倒しをし、5・6年は英語教科化+週1時間増になります。

また、前倒しに伴い内容も、

小3、小4は読み聞かせや絵本を活用した音による指導を重視。小5、小6では「読む・書く」を加え、「三人称」や過去形など現在は中学で学ぶ内容にも触れるとした。

(出典:日経新聞「英語教育「過去形」小6で 小3~4は読み聞かせ」2017年1月30日)

これまでは触れてこなかった「読み書き」や文法なども扱うようです。

私は、この改定案には3つの理由から反対します。

 

◆理由① 小学校担任に英語の授業は無理

現状、高学年のみで週に1時間だから、ALT(ネイティブの英語教員)の補助があり、それでもって何とかギリギリ授業を進めていくことが出来ている状態です。

しかし、3年~+5・6年の授業数の増加となれば、大幅なALTの増員がない限り、小学校担任が一人で授業を担当することになります。(教員の人員増に消極的な国・各自治体が、3年後までに増員がなされるとは考えにくい)

しかし、英語免許を保有している小学校教員は、たった5%ほどです。

教科として英語を教えるには、中学英語の免許も併有する小学校教員が担当することなどが考えられるが、文部科学省によると、2015年度調査でそうした併有小学校教員は5%に満たない。

(出典:毎日新聞「社説 新学習指導要領 がんじがらめは避けよ」2017年2月15日)

彼ら小学校教員には現状の5・6年の内容(改定案の3・4年の内容)であれば、英語の歌を歌ったり、本の読み聞かせをしたりという程度なのでギリギリ可能かもしれませんが、改定案の5・6年の三人称や過去形など教えられる知識もスキルもありません。

実施開始となった場合、小学校教員への英語研修が開始されるのでしょうが、ただでさえ忙しいなか、他の教科がおろそかになることが目に見えています。(人員増なしの小学校の英語教育の是非は、語学教育の問題ではなく、教員の労働問題であるとの指摘もあり、その通りだと思う)

小学校教員はまず国語・算数当の既存教科をしっかり教えることの方がより優先度が高いと私は考えます。

以上のような理由から、「英語専科が授業を行う」「あるいはALTが必ずサポートに入る」等の配慮なき小学校英語教科化+前倒しに反対です。

◆理由② 既に授業時数はいっぱいいっぱい

学校現場では既に授業時数はいっぱいいっぱいで、教務担当が何とかして授業時数を確保していうのが現状です。

しかも5・6年に関しては、月~金まで毎日6時間授業で既に埋まっています。

当然、文科省はそのことを理解していて、

小学校高学年は平日6時間の時間割はほぼ埋まっており、英語の増加分週1時間は教育課程(カリキュラム)を編成する各学校が捻出することになる。文科省は(1)夏休みや土曜日を活用して授業日数を増やす(2)授業1時間か、15分の短時間学習のいずれかを増やす(3)(1)と(2)を組み合わせる--の3通りを提案する。

(出典:毎日新聞「学習指導要領 知識使う力、重視 異例の指導法言及」2017年2月14日」)

といっています。

夏休みや土曜授業だけでは、毎週1時間増の授業はとても捻出できないので、学校現場からは(2)の15分短時間学習を行う可能性が高いという声を聞きます。

その15分、具体的には、朝の全校朝会や集会、読書のために設定されている時間、昼休み、掃除等の時間を削ってできる時間等だそうです。

新しいことを実施するなら、これまで行っていた内容を削減するのが当たり前だと思うのですが、

他にもプログラミング教育などが新たに盛り込まれるが、授業時間が削減される教科はない。

(出典:時事通信「「多忙化」「子どもに負担」=授業時間増など教員ら不安根強く-学習指導要領改定案」2017年2月14日)

新たに削られる時間はありません。

どういうことかというと、上記のような集会や掃除など各学校がそれぞれ定めている時間を少しずつ削って上手く調整してください(ただしゼロにするのはダメですよ)ということで、つまりはまた例によってお得意の現場丸投げなわけです。

削減なしに始まる小学校英語教科化+前倒しに反対します。

◆理由③ 子どもの負担増

そうでなくても今、学校現場では授業時数の増加や多くの行事で子どもたちはあまりにも多くのことを要求されています。

前述のとおり、授業時数がしっかりと確保されていないということは、必然的に子どもたちが短い時間で多くのことを要求されるということになります。

英語が得意、英会話教室に通っているなどの子どもたちは何の問題もないでしょうが、勉強が苦手、英語が苦手、学習障害をもっている子どもたちが心配です。

内容が中学生でも全員理解しているのか怪しい「過去形」まで取り扱うのですから尚更です。

短い時間で教員にせかされて、苦手意識だけを抱えてしまう子どもたちが出てくることが予想されます。

山梨県内の公立小の男性教諭(47)は、学習内容や授業時間が増えることで「子どもたちにとっても負担になるのではないか」と心配する

(出典:時事通信「「多忙化」「子どもに負担」=授業時間増など教員ら不安根強く-学習指導要領改定案」2017年2月14日)

教える側だけでなく、教えられる側にとっても更なる大きな負担になる外国語活動、特に高学年の「読み書き」「文法」には強く反対します。

★まとめ

そうでなくても、いじめや不登校が相次ぐ子どもたち、休職者が年間5000人を超える教員を抱える学校現場。

まず、現状を改善するような(削減の)取り組みこそが望まれているにもかかわらず、更に子どもや教員に負担を強いる施策を打とうとしている文部科学省には強い憤りを感じます。

私は、発表された形での「小学5・6年の英語を教科化、3・4年に外国語活動を前倒し」に強く反対をします。

本当は、アクティブ・ラーニングやプログラミング教育にも言いたいことはありますが、今回はより重要度の高い、外国語活動の改定案について取り上げました。

実際に私が送ったコメントは2000字の文字制限もあるので説明箇所等は削りました。皆さんもパブリック・コメント(文部科学省)に意見を送ってみてはどうでしょうか。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「小学校英語教科化+前倒しを受けて文科省のパブリック・コメントに送った反対意見の3つの理由」でした!

関連記事:元教員が挙げる、土曜授業を今すぐやめるべき5つの理由

コメント

  1. 現場教師 より:

    200%同意です!
    まさにその通りです。

    休み時間は、有意義だからそれなりの時間を充てているのです。
    朝の時間は、ただでさえやることを詰め込まれているのだから、やることで埋まってます。

    子供達全員にiPadを貸与し、英語アプリで英語マスターさせると言うのならまだしも、「やれ!」と言うだけの軍国主義的圧政。

    そもそも、あれだけ英語をやってるのに何故身に付かないかと言う根本が解明されないままですから、この政策はクソだと断言できます。