元教員が挙げる、学校でのユニセフ募金をめぐる2つの問題点

多くの学校で年に一度実施される、ユニセフ募金。

私が勤務していた小学校での実施方法は、まずユニセフ募金とは何ぞやという世界の貧困を知る集会があり、代表の委員の子どもたちが朝、登校時に校門で募金箱を持ち、募金集めをするという流れで行われていました。

多くの学校も同様だと思います。

今回は、そのユニセフ募金をめぐる2つの問題点についてまとめました。

1.今の時代状況に合っていない

今、6人に1人の子どもが貧困状態にあるとされ、子どもの問題が社会問題となっています。

子供の貧困、6人に1人(出典:日本経済新聞2016年1月8日)

2割超が「生活困難」家庭=子どもの貧困で調査-東京都(出典:時事通信2017年02月23日)

「子ども食堂」全国に300カ所 開設急増、半数が無料(出典:朝日新聞2016年7月1日)

自らの生活が困窮している子どもたちが2割程度いるわけですが、彼らが他人(他国)への寄付などできるとは思えません。

むしろ、寄付を受けたい側なのではないでしょうか。

にもかかわらず、前例主義の学校はこれまでやってきたからという理由で、毎年毎年このユニセフ募金を続けています。

確かに、日本が豊かだった時代も過去にはあり、そういう時代には有意義な取り組みだったのだと思います。

しかし、学校として「全員が」取り組める行事(取り組み)ではなくなってきていることは事実だと思うので、このまま続けることは時代錯誤であると思います。

全員強制参加ではない、あるいは、アフリカの絶対的貧困と日本の相対的貧困は異なる、という意見もあるとは思いますが、2割もの子どもが貧困状態の今、そこまでして続ける必要はないと私は思うのでやめるべきだと考えています。

2.多くの学校の寄付先は選択せずにユニセフではなく「日本ユニセフ」

このユニセフ募金、ややこしいのが、「ユニセフ(国際連合児童基金)」と「日本ユニセフ」の2つ振込先があることです。

この2つは別組織であり、

  • ユニセフ(国際連合児童基金)⇒ニューヨーク本部直轄の国際機関事務所。黒柳徹子さんが親善大使。
  • 日本ユニセフ⇒公益財団法人(民間団体)。アグネス・チャンさんが親善大使。

なのですが、多くの学校は「日本ユニセフ」の方に寄付します。

理由は、

  1. 振込手数料がかからない
  2. 学校に勝手に無料でポスター・児童配布用手紙等が送られてくる
  3. ほとんどの教員がこの2つの違い(存在すら)を知らない

からです。

しかし、このように振込手数料・ポスター無料にはきちんと理由があります。

「ユニセフ(国際連合児童基金)」に行った寄付はほぼ全額が「国連ユニセフ」へ行きますが、「日本ユニセフ」に行った寄付については、財団の経費として25%が差し引かれ、残りが国連ユニセフへと入ります。(出典:ユニセフと日本ユニセフの違い、活動の違いについて

つまり、無料なのは、募金から差し引いた経費で賄っているというからなのです。(これについては多くの批判があります。また、経費として差し引かれていることを多くの学校では子どもたちに知らせません。多くの教員もよく分かっていないからです)

子どもたちのほとんどは募金は全額寄付に回ると考えていると思いますが、実際は全額寄付には回らないのです。

一方、「ユニセフ(国際連合児童基金)」への募金も振込手数料がかかったり(300~500円程度)、振込口座が黒柳徹子さんの個人口座であったりすることが批判されています。

私個人としては、経済合理的な選択をすべきだと考えていて、「ユニセフ(国際連合児童基金)」への手数料が500円、「日本ユニセフ」の経費として差し引かれる分が25%だとすると、

  • 子どもたちの募金額が2000円を下回った場合⇒「日本ユニセフ」へ
  • 子どもたちの募金額が2000円を上回った場合⇒「ユニセフ(国際連合児童基金)」へ

という選択が子どもたちの募金がより多く「国連ユニセフ」へと行くので良いのではないかと思っています。(ほとんどの学校では2000円を超えると思いますが)

そして、(実施するなら)きちんと経費についても子どもたちに知らせるべきだと考えています。

★まとめ

ユニセフ募金、時代状況に合わないのでやめるべきだし、実施するのであれば寄付先の選択や経費の説明などを子どもたちにしっかりと行うべきだ、というのが私の考えです。

以上、元教員トウワマコトによる、「学校でのユニセフ募金をめぐる2つの問題点」でした!

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