国際経済労働研究所が2012年に行った「教員の働きがいに関する意識調査」から、驚きのデータを見つけました。
それは、「今の仕事を続けたいか?」という質問に対して、一般企業の平均では年齢とともにYESの回答の割合が上がっていくにもかかわらず、教員は年齢が上がるにしたがいその割合が下がっている(労働意欲が低い)、というデータです。

(グラフ出典:日本教職員組合 )
なぜ教員はキャリアとともに働きがい(労働意欲)が低下していくのか、今回はそのことについて元公立小学校教員として5つ私見を述べていきたいと思います。
1.長時間労働
同調査では、休暇や労働時間についての意識についても一般企業の会社員の平均に比べ満足度が低いことが明らかにされています。
一般企業の会社員の満足度が36.2%に対し、教員(各校種の平均)は19.3%にとどまっています。
- 体力も時間もある若い頃は何とか耐えられてきたものの、年齢を重ねるとともに厳しくなってきたこと
- 年々、長時間労働の傾向が強くなってきたこと
これらの理由が教員の労働意欲低下につながる大きな一因であると私は考えます。
ちなみに、公立小学校で勤務していた私が退職した大きな理由の一つでもあります。
2.家族ができる
独身の頃はまだプライベートを犠牲にすることで仕事する時間を捻出していた人も年齢を重ね、結婚し、子どもが生まれることでそれも困難になります。
長時間労働のせいで子育て(あるいは家族の関係)が困難になれば、労働意欲が落ちていくのは想像に難くありません。
3.無力感
若い頃は熱意にあふれ、意欲も高かった教員が、やる気をなくしていく理由の一つに、「授業の準備が行えないこと」が挙げられると思います。
子どもたちに分かりやすく楽しい授業をしてあげようと思っても、保護者からのクレーム対応や教育委員会からの調査・レポート等によって、なかなか肝心の授業の準備に取れかかれないのです。
ちなみに、2015年実施の北海道教育大学・愛知教育大・東京学芸大学・大阪教育大学の共同調査では、抱えている不満として「授業準備の時間が足りない」と8割の教員が回答してます。(出典:毎日新聞「授業準備、時間足りぬ」8割」2016年7月25日)
授業の準備ができない⇒良い授業ができない⇒理解できない子どもや落ちこぼれる子どもをつくってしまう⇒改善したくても忙しすぎて授業の準備もできない⇒無力感、
みたいな感じで無力感に陥ってしまうのではないでしょうか。
私が辞めた理由の一つも、この”無力感”です。
4.年々大変になる教育環境
一昔前と比べると、教員にとって厳しい教育環境の変化もあります。
ざっと箇条書きにしただけで、
- 教員は尊敬される存在からサービス提供者に
- 家庭でしつけられていない子どもの増加
- 発達障害、学習障害への対応
- ICT教育、小中連携などの新たな教育課題への対応
- 免許更新制度の導入
- 労働時間の増大
これだけ挙げられます。
ただでさえ大変な状況なのに年々大変になる・・・。そりゃあ、やる気が下がるのも理解できます。
5.子どもとの距離ができる
年齢を重ねれば体力だけでなく、子どもとの心理的な距離が離れていきます。
若い頃は若いだけで何とか子どもと信頼関係を築けていた教員も、日々の業務に追われきちんと勉強をせずに年齢を重ねてしまうと、若い頃に比べ指導が難しくなります。
そうでなくても家庭での躾がなっていない子ども(指導が困難な子ども)が年々増えている現状です。
彼らは、指導が上手くいかないので、意欲が下がっていくのではないでしょうか。(意欲が下がるだけならまだマシで、この”指導力不足中年教員”のなかには子どもの指導が上手くいかないからと管理職を目指す者が少なからずいるのがまた別の問題です)
★まとめ
- 長時間労働
- 家族ができる
- 無力感
- 年々大変になる教育環境
- 子どもとの距離ができる
年齢を重なるにつれて、労働意欲が落ちている・・・。ネガティブな報道が多い教員の話題のなかにあっても、このデータには驚きました。
教員の働き方改革がようやく叫ばれ始めた昨今。
労働意欲の低い先生が子どもに良い教育を施せるとは思えません。先生方の健康と子どもたちのために、まずは一刻も早く長時間労働を是正すべきです。それが労働意欲低下改善のはじめの一手になります。