「特色ある学校づくり」は矛盾しているし、子ども・教員に大きな負担を強いる施策

「特色ある学校づくり」とは、1996年の第15期中央教育審議会第一次答申によって提唱され、1998年の教育課程審議会答申で示された施策である。

そのなかでは、「各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成・実施し、特色ある学校づくりを進めていくことが特に求められる」とされている。学習指導要領においても、各学校が創意工夫を生かし、特色ある教育活動を展開することが繰り返し強調されている。

具体的に学校現場では、

  • ICT教育に力を入れる学校
  • 吹奏楽(全員参加)に力を入れる学校
  • 外国語教育に力を入れる学校

といった具合に実施されている。

この「特色ある学校づくり」、一見良い施策に思われるかもしれないが、矛盾している施策ではないか、子ども・教員に大きな負担を強いてないかというのが私の意見である。

◆全国どこでも同じ教育が受けられるのが公教育だったのでは…?

日本の公教育は、全国どこの学校に通っても格差なく同じ教育を受けられるようにという理念に基づき制度設計がなされている。

にもかかわらず、この「特色ある学校づくり」は、他の学校とは異なる教育活動を行うことを学校に容認する(強制する)ものである。

ここに大きな矛盾がないだろうか。

全国どこでも同じ教育を施すことを理念とするならば、まったく同じ教育内容にすべきであるし、逆に各々の学校が異なる教育を行うのであれば、オランダのように保護者に学校を選べるように選択肢を与えるべきである。

いやいや、「特色ある学校づくり」で行われる教育活動は”プラスアルファ”のもので、最低限の内容については学習指導要領に基づいて行われるのであるから、全国どこでも同じ教育を受けられるという理念と矛盾はしない、そういう批判があるかもしれない。

しかし、そのような批判は正当だろうか。

私はそうは思わない。それがプラスアルファであっても、地域によって財政や教育環境に差異があるわけで、そこに「格差」が生まれるのは必然だからだ。

◆「特色ある学校づくり」が子どもにも教員にも負担を強いる

いわゆる「ゆとり教育」から舵をきってから、学習指導要領改訂の度に学習内容の量は増えている。

学校現場では、授業時間の確保が大きな課題の一つになっている。

にもかかわらず、この「特色ある学校づくり」の学習をしなければならない子どもと教員は、さらに負担が増えることになる。

子どもの不登校や教員の働き方が問題となるなか、本当に必要なのだろうか。

「特色ある学校づくり」は、誰のための施策なのだろうか。

もちろん、なかにはこの施策の恩恵を受ける子どももいるだろう。

しかし、この”見栄えの良い”施策は、私には成果をアピールしたい校長以上の人間のために行われているような気がしてならないのだ。

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