3月5日、さいたま地裁で教員超勤裁判の第11回目が行われました。私はこの訴訟、今後の日本の公立学校教員の超勤問題を左右する裁判だと思い、継続的に注目しています。
今回、11回目の裁判では、証人尋問が行われました。原告側は原告先生、高橋哲先生、県側は当時の校長が答弁しました。
本記事(③)は、原告先生の当時の勤務校の学校長(2人)の答弁です。
これまで裁判資料については重要な箇所のみの抜粋でまとめてきましたが、今回はノーカットで掲載します。
なお、引用元は、第11回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)です。
平成29年度勤務校 A校長
被告弁護士からの尋問
Q.この陳述書は,あなたが内容を確認して押印したものですか。
はい、そうです。
Q.この内容は,あなたの記憶のとおりに書かれていますか。
はい,そのとおりです。
Q.あなたは,平成29年度において,原告の勤務していた小学校の校長でしたか。
はい,校長でした。
Q.以下,本件で問題とされている平成29年9月から平成30年7月までの期間についてお聞きします。あなたは,原告に対して,文書または口頭で時間外勤務を命じたことはありましたか。
ございません。
Q.あなたは,原告以外の教職員に対しては,文書または口頭で時間外勤務を命じたということはありましたか。
ございません。
Q.この間,原告がその自由意思が強く拘束されるような形態で時間外勤務をしたということはありましたか。
確認が取れませんが,しておりません。
Q.それでいいですか。もう一回聞きましょうか。
お願いします。緊張しています。
Q.原告がこの平成29年9月から平成30年7月までのことを聞いていますけ れども、その自由意思が強く拘束されるような形態で時間外勤務をしたという事実はあったでしょうか。
なかったと思います。
原告代理人から尋問
Q.あなたの陳述書,先ほど示していただきましたので,その陳述書の内容に関してちょっとお伺いしたいと思います。
Q.まず,あなたは全校朝会,朝8時半から開かれていると思いますが,このときに8時25分に児童と教職員の全 員が体育館に集まるように指示をしたことはないと,そのように述べておられますね。
はい。
Q.あなたは、職員会議で配付された資料で、5分前に整列できていることが望ましいとか,そういったことが記載されていた,そういったものを配付され たと,そういう御記憶はないですか。
はい,記憶ございません。 記憶にないということでいいですか。
はい。
Q.それから,教室から体育館への移動の際にはこれは児童が勝手に移動するわ けではなくて,担任教員が引率をするということは間違いないですか。
はい。常にではありませんけれども,子供らの安全を考えて,配慮しながらということはありました。 基本的には引率することになっていたということはいいですね。
Q.引率をすることになっていたというよりも,子供たちが自分たちで行動できるように指導してもらうようにはお願いしたと思います。 移動の際には無言で移動すること,これについても指導するということは担 任の役割でしたね。
望ましいということでお願いしました。
Q.仮にその指導が必要だとして,朝会の開始を8時30分とされているんですが,担任教員である原告,8時30分の勤務開始では間に合わないというこ とは理解できますか。
はい、理解できます。
Q.そのことについて,何か問題だとはお考えになったことはないですか。
はい。
特にあまり深く考えたことはなかったですか。
Q.はい。深くは考えていませんでした。 それから、授業中のことなんですが,あなたの陳述書によると,児童にテス トを行わせている間にドリルの丸つけの事務作業は行うことは可能だと述べ られていますけど,それは可能ということでよろしいんですか。
はい。
Q.要するにドリルの丸つけ等の事務作業を教員が行ってもいいと,むしろ望ま しいと,そういうことでよろしいんですか。
できると思います。
Q.それは,児童の観察だとか,そういったことよりも優先されるべきとお考え ですか。
分からないなら分からないで結構です。児童の体調等については,当然配慮する必要があると思いますが,監 督という意味ではそれほど重要視はしませんし、先生方が丸つけをしていたのも事実だと思います。
Q.それから,給食指導あるいは清掃指導,そういったものがあったかと思いま すけれども,給食指導のやり方については,これは細かく配膳だとか,片づけのやり方が指定されていたということはそのとおりで間違いないですか。
職員会議で提案されておりました。
Q.あなたもそのことは認識されていますね。
はい。
Q.例えば児童がそのとおりにできていないという場合に,これは担任教員としてチェックすべきことではないですか。
チェックというよりも,一番は安全ですので,その安全配慮をするように子供の様子を見ることは必要だと思います。
Q.その安全についてですけれども,除去食対応,これが必要な児童というの は,原告の担当にもいらっしゃいましたね。アレルギー対応です。
正確に記憶はございません。
Q.じゃ,アレルギー対応が必要な児童がいた場合,クラスにおいて除去食,そういった担当について確認をすると,これは担任教員の役割ですね。
担任だけではありません。
Q.担任だけではなくても担任としても確認しないといけないですね。
担任としても注意してもらっています。
Q.当然配膳がされるのはクラス内ですので,クラス内のことは担任がやることになりますよね。配膳自体が配るということだけでしたらば,そのクラスで行いますけれども,実際に除去食じゃないものが入っていないかどうかのチェッ クは、管理職が回ってチェックをしていました。子供の机のところに給食が配られた際にその給食が除去食になっているかどうかは,担任以外にも管理職も確認をしています。
Q.仮にその確認が足りていなくて重大な事故が起こってしまったという場合に,それは担任として責任というのは問われませんか。
すみません。仮にという言い方がよく分かりません。学校で起こった事故については、責任は校長が取るものだと思っています。 ただ,きちんと児童の安全を考えたら,担任としてもきちんとそういった対 応がされているかどうか確認すると,それは当然望ましいことではあります
ね。より複数の目で見ることは,当然必要だと思います。
Q.それから,教員の休憩時間,これを設定していたのは,校長であるあなた御自身でよろしいですか。
はい。
Q.あなたは,学校長として教員の休憩時間を確保すること,これに努めていたと思われますか。
努めていました。
Q.それでは,昼休みの休憩時間のことですけれども,原告の休憩時間中,昼休み中のこの時間中に特別活動などの行事が入ることはありませんでしたか。
ありました。
Q.実際に昼休み中に行事を入れると,そういったことを教員から提案されたときにあなたとして何か対応したことはありますか。
そうですね…。
Q.ないですか。
なるべく早く帰れるときについては調整を取って帰ってもらうようにはお願いしていました。
Q.早く帰れるときというのは,具体的に時間や日にちを指定したことはありま したか。
土曜参観でありますとか行事が早く終わって早めに帰れるときでありますとか,あとは夏休み中とかというときにまとめて調整を取ってくれるようにはお願いをしました。
Q.そういったタイミングがあれば取ってくださいということだけ伝えていたということですね。
はい。
Q.例えば行事で休憩が取れなかったその日に別に休憩時間を与えるとか,そう.いったことはしていませんね。
そういうふうに言ったときもあります。
Q.それから,職員会議について伺いますけれども,年度当初の職員会議で学年主任,生徒指導主任,学級担任あるいは各部の主任,こういったことを決められると思いますけれども,これを決定するのは、校長であるあなたということでよろしいんですか。
最終的にはそうです。
Q.これについては,その年度当初で行われる職員会議で周知されるということでよろしいですか。
はい。
Q.それから,各種の特別委員会,これどのような委員会を設けるかとか,その 辺りについてもあなたが校長として決めて職員会議で周知すると,そういう ことでよろしいですか。
はい、運営委員会等に提案をされて,それを元にして職員会議のほうに提案いたします。
Q.この職員会議というものは,校長の職務の円滑な執行を補助する機関と法律 上されているんですけれども,そういう認識でよろしいですか。
はい。
Q.そのときに校務運営に関する意思決定というのは,校長であるあなたが行うということで,それもよろしいですか。
教職員の総意を重視しながら,最終的な責任を持って校長が判断いたします。 職員会議で提出される資料というのは,あなたは目を通していましたか。
Q.もちろんその前にも運営委員会もございますし。事前に全て目を通していたということでよろしいですか。
はい。
Q.内容は、当然把握されていましたね。
そうです。
Q.そうすると,職員会議で提案された仕事というのは,当然あなたも御認識されていたと思うんですが,その中に教員が従わなくてもいいと,そのような仕事は存在しましたか。
もちろんお願いするものもありますので,従わなくてもいいものも当然ありました。
Q.それは,従わなくてもいいとあなたは伝えたんですか。
いや,従わなくていいというふうには話はしません。できればお願いしますという形でお願いしています。 お願いしますというのは,従ってほしいと,あなたとしてはそういう意思が あるということでよろしいですか。
Q.そうしてほしいという気持ちはあります。 そうすると,職員会議を経て通過したそういった仕事というのは,あなた御自身は承認していたと,教員にもやってほしいと思っていた,そういった仕事という理解でよろしいんでしょうか。
はい。
Q.それから,登校指導というものがありますが,これも職員会議で提案されて通過している仕事ですが,あなたとしては児童の安全のために登校指導とい うのはやるべきだろうと,そういうふうにお考えだったということでよろしいんですか。
■小学校の特質がございました。登校するところの通学路が大変に交通が多くて、子供たちの安全がすごく心配だったことは事実です。先生方にももちろんお願いをしましたけれども,子供の安全を守るために地域の方にもお願いをしたのは事実です。
Q.当然児童の安全を考えて・・・。
そのとおりです。
Q.登校指導をやったほうがいいから,そのように・・・。
お願いしました。
Q.お願いしたということですね。
はい。
Q.この登校指導の実施方法や担当者については,職員会議で提案されて決定し たということでよろしいですか。
提案をされました。決定というよりも提案をして,そこに学年で入ってくださいというふうにお願いをした次第です。
Q.その上であなたが承認したと,そういうことですか。
はい、お願いをしました。
Q.そうすると,少なくとも勤務時間外に教員が登校指導という業務に携わると いうことについて,あなたは承認されていたということですね。
お願いをしていました。
Q.勤務時間の割り振り変更という話を陳述書でも書かれていますけれども,これについては,具体的にはどのような指示を出していたんですか。
資料というよりも,実際に職員会議等が延びた場合についてはその時間を調整取ってくださいとお願いをして,先ほども申しましたように早く帰れるときにふだんから先生方の時間調整をそこで取ってくださいとお願いをしていました。
Q.それは,何か記録だとか,資料として残してはいないんですか。
はい。私個人としては残していません。.
Q.学校の記録としても特段あなたの指示を残したということはないということですね。
私自身が残していません。
Q.それから,あなたの陳述書において,原告が挙げている様々な業務の多くについて,このように述べられています。原告に直接命じてはいないが,教員 としての本来的な業務であり,全てのあるいは多くの教員が行っていたと。例えば教室の整理整頓だったり、掲示物の掲示だったり、ドリル,プリントの丸つけだったり、そういった業務について,このように述べられていま
す。それはよろしいですか。
はい。
Q.原告が勤務時間外の時間帯も含めてこういった教員としての本来的業務というものに従事していたこと自体は,あなたは御認識されていますか。
いつやっていたかということについては定かではありません。
Q.こういったあなたが本来的業務と言っている仕事を原告がやっていたこと自 体は,特に否定するものではないということですか。
やっていただきました。
Q. 本来的業務であって,全てのあるいは多くの教員が行っていたと,そういう 業務ということは,あなたとしては原告もやるべき業務であったと,そうい うように認識されているということでよろしいですか。
今言っていらっしゃる本来的業務というものをどこまで含んでいるか ちょっとよく分かんないんですが,このことはというふうに具体的に言っていただけると答えやすいんですけれども。
Q. あなたが本来的業務と使っているので,そのように聞いているんですが,や らなくてもいい業務というのはあるんですか。
それがどれを指すのか,申し訳ありません、分かりません。
Q.特段思い浮かばないということですね。
はい。
Q.次に,それ以外の業務について, あなたは原告を含む各教員に命じたという ことで述べている業務もあります。具体的には朝自習だとか,出席簿の整理 だとか,通知表の作成だとか,そういった業務についてなんですけれども, この命じたというのは,あなたは何をもって命じたと言っておられるんでし ょうか。
出席簿でありますとか,健康診断簿,それから指導要録等の法で記録が決められているものについては命じています。
Q.命じているというのは,口頭で命じたということですか。
つけるように話をしています。
Q.それ以外に命じたという具体的な行為として, あなたは何かありますか。
職員会議でこういうことをやってくださいという形での提案があり,職員会議等で内容についてはお願いをしています。
Q.そうすると,あなたが口頭であるいは文書でやってくださいと伝えたか,職 員会議を通過したか,大体そのどちらかということでしょうか。
はい,そうです。
Q.あなたは,原告がこういったいろいろな業務についていつどのようなことをどれくらいの時間をかけてやっているかということについて,何か把握されていましたか。
正確に把握はしておりません。
Q.では,勤務時間外に原告がどのような仕事をしているのかということについて何か確認されたり,見たり,そういったことはありますか。
もちろん放課後等に教室を回って原告が仕事をされている姿を見た覚 えはありますが,それがいつでどのくらいの時間だったかについては記憶にございません。
Q.そうすると,何をやっているかとか,どうして勤務時間外に残っているのか とか,そういったことをあなたが確認されたことはないんですね。
なるべく早く帰ってくださいというふうにお話をしたかとは思います。
Q.例えばその日までに終わらせなければいけない業務があったとして、勤務 間内にそれが終わらなかったという場合に,あなたは教員にはその仕事をそ の日までに勤務時間外になっても続けてほしいと,そのようには思いますか。
いや、そうは思いません。
Q.そうすると,もう仕事は終わっていなくても帰っていいと,そのようにあな たは指示されるわけですか。
指示というよりも,仕事がこなせるように仕事を割り振ってほしいと思います。
Q.それについて,あなたは具体的に何か提案されたりしたことはありますか。
具体的な提案はなかったと思います。
Q.それから,通知表の作成という仕事がありますね。
はい。
Q.教員にとってはそれなりの時間を要する仕事だというは御理解いただけると思うんですが,これも勤務時間内で終わらせられる仕事だとあなたとしては 思っていますか。
時間をかけて行うこともできる仕事です。
Q.勤務時間内に終わらせることもできるという理解ということですか。
はい。
Q.それから,例えば提出物の点検,添削だったり、テストの採点だったり,行事の準備だったり、いろいろな仕事には期限があるということは分かりますね。
はい、分かります。
Q.そうすると,割り振りといっても限界があって、やれるときにやればいいと,そういう性質のものではないと,そういった仕事があることは御理解で きますね。
すみません。もう一回お願いします。
Q.期限がある仕事に関しては,これはやれるときに後でやればいいと,そうい. うものではないですよね。
期限がありますから,当然そういうものではないと思います。
Q.そうすると,それをやるために時間外労働が発生するということも当然あるんではないですか。
それをやるために提案からそれまでの間に仕事を御自分なりに割り振ってほしいと思います。
Q.それから,あなたが法律上教員にはいわゆる超勤4項目と言われる業務以外の業務について8時間を超えるいわゆる時間外労働,これをさせてはいけな いと,そのようになっていることは御認識されていましたか。
法的なことについては,専門ではございませんので・・・。
Q. あまり意識されたことはなかったですか。
詳しくはお答えできません。
Q.ただ,時間外労働をさせてはいけないとなっている以上は,勤務時間内に処理可能な業務しか与えてはいけないと,それは理解できますか。
はい。
Q.あなたが勤務時間外に業務を行う命令を出したことはないということですけれども,実際に勤務時間が原告について8時半から17時までで守られていたと,そう認識されていますか。
もう一度お願いします。
Q.原告は,実際に8時半から17時までという勤務時間を守って働いていたと,そのように認識されていますか。
その時間に来てその時間に帰るということでしょうか。
Q.じゃ,質問を変えます。勤務時間外にも学校で仕事をしていたということは 認識されていますか。
学校にいらっしゃったのは知っています。
Q.どのような仕事にどれくらい従事していたかは,あなたは把握していないということですね。
すみません。把握しておりません。
Q.それな(把握していない)のに原告が勤務時間内にその業務を処理することが可能だったのかどうか,あなたには判断できるんですか。
お願いをしていたと思います。
Q.原告に限らず,全国で教員の長時間労働ということが問題になっていますけ れども,これはどうしてこういったことが問題になっているんだとあなたとしては思われますか。
私個人の意見でよろしいのでしょうか。
Q.校長としての立場で。
すみません。ちょっと答えるのに窮しています。
Q.じゃ,あなた御自身のお考えでいいですよ。
教育に求められるものが物すごく多くなっているなという気はしま す。いろんな事件が起こっても,それを教育でカバーしようというふ うな風潮があることは私自身も感じています。現場にそういう意味 で,いろんな形の負担が下りてくるんだろうなというふうには感じておりました。以上です。
Q.実際に原告含めて,教員は1日8時間以上働かざるを得ないと、そういう状 況になっていると,現場としてはそういう状況だということをおっしゃりた いということですか。
ちょっと意味が違うような気がします。
Q.あなたは,あまり勤務時間に関しては意識されてこなかったということですけれども,教員の勤務時間に関して,労働基準法が1日8時間までと定めていると,これを守られていると,あなたは学校の労務管理者だったと思いま すけれども,そのようなことがあなたとして言えると思いますか。
力不足だったことは否めないと思います。
牧野裁判官からの尋問
Q.先ほど陳述書の内容について,原告側の代理人から確認されていたことについて質問をします。陳述書の中で,幾つかあなたのほうから原告のほうに命 じたというふうな業務があるというふうな記載について,命じたというのは どういう意味ですかという質問に対して,法律で定められているものについては命じましたというふうなお答えをされていましたね。
はい。
Q.陳述書を見ると,例えば朝自習とか,ウィンバードの記載,こういったもの についても命じたと書かれているんですけれども,ちょっと確認させていた だきたいんですけど,まずウィンバードというのは,これはどういうものですか。
校務用のソフトでして、いろんなことができるんですけれども,少な くとも児童の管理をするのに名前があり,いろんなデータをそこに蓄積することができるものです。
Q.そういう情報を共有できるソフト,プログラムみたいなものですか。
そのとおりです。
Q.朝自習とか,そういうウィンバードというプログラムへの記入というのは, これは法律上教師に必ず求められているものではないですよね。
はい、もちろんそうです。
Q.じゃ,こういう法律上必ず教師に求められているものではないものについて原告に命じたというのは,これはどういう方法によって命じたんですか。
職員会議または私のほうから記入をお願いしますとお願いしました。朝自習については職員会議を通りました。ウィンバードについても提 案があり,それを私の口頭からやってくださいということで,曜日も 指定して,このときにやったらどうでしょうかというふうに提案をいたしました。
Q.基本的に職員会議で提案をしたりというふうなことなんですか。
そうですね。
Q.陳述書で命じたというふうになっている朝自習とか,ウィンバードの記載と かというのの職員会議における「提案」というのと,「お願いしただけ」というふうに言っていた朝の登校指導とかですかね,そこの提案とお願いというのは,何が違うんですか。
子供にとって必要であると感じているもの,特に学校の中で, ウィン バードの場合は先生方の共通理解なんですけれども,仕事を持ってい るものについては命じています。ただ、先ほどの登校指導のように子 供たちの安全に関わってどうしてもお願いしなくちゃいけない内容というのは命じるというのはやっぱり時間的にも勤務時間前ですので,お願いです。
Q.つまりさっき登校指導のことをお願いと言ったのは,要は勤務時間の前だか ら,命じられないから,職員会議で提案したのはお願いだというあなたの中 の理解で, ウィンバードとかというのは、要は教師との間でもこれは子供の 教育のために必要なものだという共通の理解が得られるから,命じるという表現を使っていると,そんな感じの理解でいいんですか。
はい。
Q.別のことを聞きます。あなたが小学校で校長としていらっしゃったとき の話なんですけど、大体朝何時ぐらいに来て、仕事終わりは何時ぐらいに帰られていましたか。
7時半から7時40分ぐらいに登校し,帰りも7時ぐらいだったと思います。
Q.帰りが大体7時くらいだったとおっしゃるんですけれども,そのときってほかの先生というのは,在校されている先生っていらっしゃるんですか。
何人かいらっしゃったと思います。
Q.ということは,先生の中にはあなたが帰るような夜7時くらいの時間にま で,これを勤務時間と言うかどうかは別として,学校に残っていらっしゃるかなたさまだかいないとただちになればいいけど先生はいらっしゃったわけですね。
いらっしゃった。
Q.それに対して,先ほどの証言だと,あなたはなるべく早く帰ってくださいと いうふうに声がけをするというふうなことはされていたというふうなお話だったんですけど,ほかに何か先生の在校時間を減らすためにあなたが校長として工夫したとか,取り組んだことというのは何かあるんですか。
やっぱり先生方の負担を減らすような努力はしたつもりです。どうし ても学校というのは,前年度踏襲というものが多いんですけれども, なくせるものについてはなくしていきましたし,例えば提出書類についても少なくしていくように努力をしました。もちろん外からのお願· いも来ていますけれども,その中でも取捨選択をさせていただくことによって,少し仕事の軽減化をとは思いますし、努力はしました。
Q.ちょっと重なっちゃう質問かもしれないんですけれども,要はいわゆる勤務 時間外の作業を減らすためにはまず先ほどあなたの話だと,教師側が自分な りに仕事を割り振って期限までに間に合うようにやってほしいという話でしたね。逆に校長とか,要はあるいはもっと上のレベルとかでこういっ た教員の在校時間を減らすというためにはあなたとしてはどういうことが必 要だとお考えになりますか。
今現在は,やっぱり先生方が勤務実態というか,何時に学校に来て何 時に帰るのか,それこそタイムカードじゃないんですけれども,そう いうものできちんと管理することが必要だったと思います。あとは, やっぱり仕事内容, どうしても教員の仕事だけではないでしょうけれ ども、一生懸命やろうとするとどんどんどんどんその幅を自分で広 げちゃうんです。その辺をやっぱりここまでにしようと思い切ること もすごく必要だと思うんですけれども,そのアドバイスをもっとすればよかったなというふうに思っています。
裁判長からの尋問
Q.今のお話伺っていると,時間の管理は結局教師それぞれに任されていて,個人の工夫によって効率よく業務をしてくださいよというのが基本的なスタン スのようですけども,ただ,一方で先ほどお話のあった教育に求められてい ることが非常に多くなってきて現場に負荷がかかっているという御認識だと。新たな事象が起こるたびに新たな仕事ができるわけですよね。一方で, 先ほどお話になったように前例踏襲型の仕事だから、どんどん積み重なって いってそれが広がっていくと。そうすると,何かどこかで大きくなたを入れて整理をしなければいけない,これは教師個人個人に求めるんではなくて,学校という組織の中で事務の整理とかなんかをしなければいけないような状 況なのかなというふうに思うんですけれども,さっきのお話だと,なるべく 事務を減らすような,負担を減らすようにはされていましたとおっしゃるけ ども,それは個別のやつで要らないやつはやらなくていいよというふうにお っしゃったという話ですか。そういう大きな枠組みということで学校とし ての施策って,そういった業務整理みたいなことをやったことはおありにな るんでしょうか。
気持ちの上ではありましたけども,私の在任中について,それが断行できなかったと思います。
平成30年度勤務校 B校長
被告弁護士からの尋問
Q.この陳述書は,あなたが内容を確認して押印したものですか。
はい,そのとおりです。
Q.この内容は、あなたの記憶のとおりに書かれていますか。
はい、そうです。 あなたは,平成30年度において,原告の勤務していた小学校の校長で したか。
はい。
Q.以下,本件で問題とされている平成29年9月から平成30年7月までの期間についてお聞きします。あなたは,原告に対して,文書または口頭で時間外勤務を命じたことはありましたか。
ありません。
Q.ちなみに,あなたは原告以外の教職員に対しては,文書または口頭で時間外勤務を命じたということはありましたか。
ありません。
Q.今の期間に原告がその自由意思が強く拘束されるような形態で時間外勤務をしたということはありましたか。
強く拘束されるという…。
Q.原告の自由意思が強く拘束されるような状態で勤務したという事実はありましたか。
ありません。
原告弁護士からの尋問
Q.あなたが小学校教員として最も大事にしていることって何ですか。
子供が真っすぐに成長できるように,そういう思いで私も教員になり ました。
Q.じゃ,原告の在校時間についてちょっと聞いていきます。今回原告が平成30年4月以降も定時を超えて残業していたというふうに主張されている事実は知っていますね。
知っております。
Q.その具体的な時間というのは、訴状の資料で見たことありますか。
細かいところまではちょっと見ていないですけれども,ただ,定時を超えて仕事をされていたところは,確認はしております。
Q.例えば7時であったり、遅いときは8時に帰っていたりとか,そういった記録があったのは御記憶ありますか。
8時があったかどうかは、よく覚えてはおりません。ただ,生徒指導 上のことがあったりだとか,あと他の学年の先生から相談を受けて,その相談を受けて真摯になって一緒に取り組んでいるときに遅くまでかかっていたことは認識しております。
Q.なので,あなたは校長としての立場で,原告が勤務時間を超えて働いていたことはしっかりと認識されていたということでよろしいですね。
私から命令はしていませんけれども,子供のために定時を超えて働いていることがあったことは認識しております。
Q.8時半より前に,午前の8時半ですよ。前に原告が出勤していたことは 御存じですか。
8時半より前に出勤をしていたことはあったと思います。私もその時間帯,登校指導に毎日出ておりますので,どの時間帯に出勤している かは直接目では見ておりませんけれども,それより前に出勤していた ことは認識しております。
Q.ちょっと登校指導の話に入るんですけど,あなたは毎日登校指導をやられていたんですか。
私は毎日やっています。
Q.先ほどのA校長のお言葉をお借りすると、やっぱり、小学校特有の問題で,交通量がすごく多くて,児童の安全のために登校指導というか,登校については教員にもお願いしてやっていたということを御証言されていましたけど、あなたもそういう認識ですか。
私が着任をした年の最初の4月ですかね,着任したばっかりですの で,学校の教育の細かいところまでは目を通しておりませんので,そ れで職員会議のほうに入りましたけれども,登校指導のほうが提案 が,提案といいますか,お願いが安全部のほうからありました。私も- 小学校は交通量が多いということは認識しておりましたので,月 初めですかね,職員に登校指導のほうを可能な限りということでお願いはした事実はあります。
Q.平成30年の年度当初のことについてお聞きしていくんですが,原告から朝 の登校指導は勤務時間外だから、やめるべきだというような提案があったの は覚えていらっしゃいますか。
よく覚えております。
Q.そのときあなたは、何と答えたんですか。私も着任した早々ですので,■小学校の学校の様子を全くよく分かっておりません。私も前任の学校にいるときにここで大きな交通事故があったということも認識しております。私も実際に学校を回ってきたときに非常に狭くて見通しの悪い道路がたくさんありまして,いつ交通事故が起きるか分からない状況だということも自分の目で認識を しました。地域では、かなりの方々が登校指導に立っていただいてお りますけれども,教員の目でも何回かは自分でその状況を見て,それを子供の指導に生かすということが重要だと考えてお願いをしました。
Q.つまりあなたとしては,登校指導というのは非常に重要だから,教員には要はやらせていたということでよろしいですね。
ただ,その回数ですけれども,私は管理職として必要なので、毎日登 校指導を1時間やっています。これは,やはり管理職として必要だと 思ったからです。それは、一人一人の職員方が登校指導にかかる時間 を多く取るわけにはいかない,管理職が自ら行くことによって,私が 地域の方々に声をかけながら,いつもありがとうございますと言って やっております。職員にはできるだけその負担をかけたくないという ふうに思いました。月初めのそれぞれ多分1人1回程度だと思います けれども,その程度は何とかお願いしたいということで,前年度に引き続きお願いをしました。ただ,職員の働き方については私も十分認 識しておりますので、翌年度にはその回数を半分に減らしたりだと か,そういうふうな取組はしてきております。
Q.その登校指導に参加した教員がその後勤務時間を調整することをあなたは具体的にやったりしたことはありますか。
指示はしました。
Q.指示して,実際にどういうふうに,例えば原告で言うと,原告も登校指導に出ていますよね。
はい。
Q.そのときの勤務時間の調整というのは,あなたは具体的にされたんですか。
私がしたのは,口頭では調整をしてくださいと最初言いましたけれど も,それは口頭です。その後文書で出したのは,6月の職員会議のときに登校指導毎回につきたしか1時間だと思いますけれども,調整を取ってください,その6月の職員会議のときには登校指導も含めて,先生方がふだんやられていることについてはこれだけの時間を調整取ってくださいという形で,文書で6月の職員会議のときに示しまし た。また,夏の夏休みに入る前の職員会議の中で先生方に動静表を書いてもらいますけれども,その動静表の中でもちゃんと明記をして, 何々について調整を取ってください,明記をして先生方に書いてもら った事実はあります。
Q.原告は,実際に調整されたんですか。
登校指導については,ちょっとよく,すみません、今覚えておりません。
Q.次に,職員会議のことについて聞いていきます。職員会議では,清掃計画だ ったり,服務規程であったり,安全点検とか,挙げたら切りないと思うんで すけど,そういったことの業務について決定していきますね。
はい。
Q.そこで決定する業務というのは,原告含めた教員というのは,しっかり責任 を持ってやるということでよろしいですか。
私が事細かく学校の教育活動を全て決めて職員に指示をすることはありませんと言いますか,不可能です。それぞれの校務分掌ごとで毎年毎年反省をして,訂正をしながら年度当初に提案をしているというふうに認識をしております。 結局教員というのは,職員会議で決まった業務というのはやるんですよね。
Q.具体的に言うと,全てのことという意味ですか。 例えば掲示物の管理であったり,作成についても職員会議でこうしてほしい というのが決まっていますよね。
はい。
Q.それについては,教員はやるんですよね。
掲示物につきましては、私も着任したときに職員会議の資料を見て,そのとき初めて分かったところも実際のところはあるんですけれども,私はあくまでもそれは一つの参考資料というふうに捉えておりま す。掲示物の提案があった後にこの掲示物のとおりやっていないということを職員に指導したこともありませんし,実際にその先生,先生によって学級経営の方法が違います。多少掲示物を変えていることも あります。そのことに対して,私が指導を入れたこともありません し,逆に工夫をしているときにはこれすごく面白いねというように声 をかけることもありますし、確実に職員会議で提案されたもの,それ ぞれの分掌ごとで提案されたことをきっちりやらなければ校長が指導 を加えるということは,子供の命や安全に関わることだとか,あと不 祥事防止だとか,そういう大事なこと以外については、細かく言うこ とは私のほうからしたことはありません。
Q.次に、水曜日に行われていた朝会について聞いていきます。この朝会というのは,午前8時30分(勤務開始時刻)に全校生徒が集まる集会ということでよろしいですね。
はい、そうです。
Q.その朝会について、8時30分(勤務開始時刻)より前に教員が例えば児童を集めるであった りとか,もしくは5分前に朝会の場に整列すると,というような指示をしたことはないですか。
5分前に整列をさせなさいというふうに指示をしたことは一度もありません。
Q.この朝会の資料ですが,これは見覚えありますか。
細かいところまではありませんけど,こういう体育朝会についての提案が体育部のほうから出ているということは,承知はしております。 この下から10行目に5分前に「整列できていることが望ましい」と書いてありますね。
Q.だから,児童は5分前にこれ実際に整列させるようにしていたんですよね。
その職員会議の提案資料が出たのは、多分平成30年度の最初の職員 会議だと思いますので,その職員会議の前に私がそこまでの詳細なと ころまでは申し訳ありませんけれども,確認はしきれていなかったと ころはあります。実際に5分前に子供たちが整列しきっていたかどう かは覚えておりませんけれども,ただ,その時間帯,決められた8時30分(勤務開始時刻)にはそろっているように子供たちが並んでいたことは事実だと思います。
Q.教員は,8時半(勤務開始時刻)以前に出勤してこの朝会に児童を並ばせなければいけないというのは,校長として認識はどうですか。
正直を言いますと,私が校長になってからというよりも私が教員として教壇に立った昭和60年でしたか,そのときからこういう流れで, 8時半(勤務開始時刻)には自分が担任のときにも子供たちには並ばせてという形でや ってきました。なので,自分もそれに対してちょっと前に来て準備をしてやったりしてきましたけれども,8時半ぎりぎりに職員が例えば 来たとしても,私のほうから何で8時半ぴったりに来たんだというこ とは,これは一切私のほうではしておりません。ですから,8時半には職員が必ず出勤するように,そういう認識ではおります。
Q.私が質問したのは,朝会が8時半(勤務開始時刻)に始まって5分前に生徒が並ぶんであれ ば,教員というのは、もう8時25分よりももっと前に出勤せざるを得ない んじゃないですかということを聞いているんですけど、どうですか。
準備をするとなると・・・。
Q.大丈夫です。じゃ,次に朝自習が月曜,木曜,金曜に行われていましたね。
はい。
Q.これも8時30分(勤務開始時刻)に行われていたということでよろしいですか。
そうですね。
Q.この自習の準備というのは,教員らは8時30分より前に出勤してやったんじゃないですか。
これは,それぞれの教員のやり方だと思います。私も教員だった時代 に8時半,全く同じでしたけれども,8時半より前に来て教室で準備 はしませんでした。申し訳ありませんけども。前日に黒板にドリルの 何番をやっておきなさいと書いて,私は8時半前に行ってということ はしませんでした。ただ,教員によってはやり方がそれぞれ違いま す。例えばそういうふうにやるほうがやりやすい教員もいますし,子 育ての関係でどうしても8時半に来る教員もいますから,そういうふ うなやり方を取ります。ただ,教員によっては,自分は前に行ってや ったほうがやりやすいという教員ももしかしたらいるかもしれませ ん。ですから,働き方だとか,指導の仕方については,その教員それ ぞれのやり方だと思いますので,その細かいところまで私のほうから指示をしたりはしておりません。
Q.実態としては,教員は8時半より以前に学校に来て準備していたんじゃないんですか。
8時半ぴったり来ているかどうかは分かりませんけれども,ただ,最近の職員の様子を見ると,かなりゆったりめで出勤をしております。
Q.次に,今回あなたの陳述書では,本来的業務として,教室の整理整頓から落とし物の整理から授業の準備から授業参観の準備であったり,保護者対応に 至るまで,それは教員の本来的業務だというふうに御主張されていますね。
はい。
Q.つまりあなたが具体的に命じなくても教員がやるものだというような業務ですよね。
はい。
Q.このような業務というのは、原告が勤務時間外,17時以降も残ってやっていたということに関して,あなたは認識ありますか。あるかないか。
実際にそのところは見ておりませんので,分かりません。
Q.ただ,勤務時間外に残っているということは,原告がそういった仕事をして いたであろうということは納得はできますか。
想像はできます。
Q.このような本来的業務ができない場合,学級運営に支障を来しますよね。そうなると,最終的な責任はあなたが取るのかもしれないですけど,一義的な責任は,やはり担任のクラスを請け負っている人が取るんじゃないですか。
言っている意味がよく分からないんですけど。
Q.分かりました。私の質問が長かったので。ただ、学級運営に支障を来すよう な場合に・・・。どういう場合に学級運営に支障を教員の本来的業務が円滑にできなかった場合,学級運営に支障を来しますよね。
はい。
Q.そのときに最初に責任を問われるのは,クラスを持っている教員個人なんじゃないですか。
私の認識の中では,今もそうですけれども,職員のクラスで何か問題 があって保護者から何かしら言ってきたとき,私は常に自分が第一責任者だと思っております。それは今でも変わりません。
Q.ただ,保護者対応というのは,原告がやっていたと言うんですけど、実際に そうなんですよね。やっていたのは,原告が保護者対応をやっていたという ことでよろしいですね。
事実です。
Q.保護者対応とかで17時以降も残っていただろうということは,あなたも納得できるんですよね。
私が認識しておるのは,今でも覚えているのは,ある他の学年の教員 が子供の指導ですごく悩んでいたときに私のところに相談に来て,私 も先生が保護者対応とか非常に上手な先生でしたので, 先生 にこの若い教員,少し相談に乗ってあげてもらえないでしょうかとい うふうに,これは事実です。言いました。その後その教員に親身にな って対応してくれていたことも知っております。ただ、どこまでの時 間どういうふうにしているとか,大変申し訳ないんですけども、正確には覚えておりませんけれども。
Q. そういう本来的業務をしっかりと遂行するために原告は勤務時間外にも残って仕事をやっていたんじゃないですか。
そう思います。
Q.次に,あなたが命じた業務ということで,この陳述書では出勤簿の整理,週 案簿の作成,健康診断表の作成等の法令で義務づけられたものについては命 じているということでよろしいですね。
法にのっとるものについては命じております。 自己評価シートの作成であったりとか,家庭訪問の計画表作成についてもあ なたは命じられているということでよろしいですね。
Q.校長の責任ですので,そう捉えております。 これらの業務は,あなたの認識だと午前8時30分より前であったり,17時以降に命じたことはないということですか。
命じたことはないです。
Q.でも、仕事としてはあなた,命じていたんですよね。
こういう内容の仕事をしてくださいということは,本来的業務につい ては直接細かいところまで命じはしません。私が教員のときもそうで した。だから,一つ一つ事細かく例えば整理整頓をしなさいだとか, そういうことまでは命じていませんけれども。
Q.私が聞いているのは,命じた業務として学年会計の作業であったり,自己評 価シートの作成であったり,家庭訪問の計画表作成であったり,いろいろあ ると思うんですけど,そういった仕事については,実際に命じていたという ことで陳述書に書かれていますよね。
そうです。校長の責任の下ですので,命じておりました。
Q.原告の主張によると,こういった作業(学年会計,自己評価シートの作成,家庭訪問の計画表作成など)も勤務時間外にやっていたということなんですが,それは,あなたとしては納得はできますか。もしくは,いや, それ勤務時間外にやることないでしょうという認識ですか,どっちですか。
明確にこうだというストレートな答えはできないと思います。状況にもよりますので。ただ,校長とすれば,それらの業務を勤務時間内に終えられるようにできるだけ勤務状況を整える,そういう努力は常に してきておりますし,原告が他の学校に異動した後も現在にわたって努力はし続けております。
Q.そうすると,あなたの努力にもかかわらず,原告は勤務時間外に残っていたということになるんですか。
そこはよく分かりません。
Q.原告だけが残っていたわけじゃないですよね。逆に言いますと、5時を超えて・・・。私が聞いているのは,原告だけが勤務時間を終えても職員室に残っていたか、どうかということなんですけど。
残っていた教員もおります。
Q.どの程度残っていましたか。
5時ですか。
Q.例えば5時でいいです。
5時ぴったりですと,今でもはっきり言えますけれども, 5時定時に帰る職員は,本校の中では数名います。今現在でも同じです。3名程度ですか,いますけれども,それ以外の教員については,多くの教員は5時ぴったりで帰ることはないのは事実です。
Q. そういった教員というのは,あなたが命じられた業務であったり,本来的業務をやっていたんじゃないんですか。
そういう状態がなくなるように日々努力していますとしか答えようがありません。申し訳ないですけれども。
Q.あなた,先ほど時間外勤務命令は命じたことがないというふうにおっしゃい ましたね。ただ,時間外に終わらない仕事については命じているんです。終わらないかどうかは分かりませんけれども,今言われたような仕事を命じたことは事実です。でも,多くの教員が残っているじゃないですか。なので、終わらない,あなたの責任とは言っていないですよ、私。ただ,教員として終わらない仕事を課せられているということはお認めになられますか。
分かりません。
Q.いや、分からないことないですよ。多くの教員が残っているんですよね。そ ういう中で,本来的業務であったり,あなたが命じた業務というのをやらざ るを得なくて残っているんじゃないですか。
やらざるを得ないで残っているというところがあるかどうかは分かりませんけれども、働き方の中で自分は5時に帰るんだと決めて仕事を している教員もおります。そういう教員は,自分の中で仕事の内容を 多分精査しているんだと思うんです。私も一担任だった時代もありま すけれども,教員教員によって何を大事にするかが違っています。例えばある教科については自分は時間外であってももうどんどん子供のためにやりたいという教員もいれば,そうじゃないところで,学級 経営のところで工夫をして何々会を催したい,そのための工夫をするために時間外であってもという教員もおります。中には家庭のことをやはり第一に優先に考えて5時に帰ろうというそういう教員もおり ます。それを一般的にこうだと答えることは難しいと言っているわけです。5時に帰る教員,いると思いますよ。
Q.ただ,多くの教員が残っているんですよね。
はい。
Q.その人たちは,自発的にやっているんですか,それともやらざるを得なくて やっているんですか,どっちですか。
分かりませんけれども,自分で自発的にやっている教員も数多くいると思います。
Q.自発的にやっている業務というのは,教員の本来的業務であったり,あなたが命じた業務なんですよね。ということでよろしいですか。
私が命じた業務は,私は基本的には教職員が自分で学年や学級で創意工夫を生かしながら教育活動に取り組めるような、そういうような学校を目指しております。本当に法的にやらなければならないような必 要最小限のところにとどめるように努力をしております。それ以外の 部分については,それぞれの学年でこういうことをやりたいというこ とで工夫しながらやっていたりだとか,自分の学級でこういうところ を大事にしながらやったりだとか,そういう部分も多分にありますし,または省略している部分もありますし,それを一概に1つにまとめて言うことがなかなか難しいと言っているわけです。
Q.あなたのそういう学校作りというのはすばらしいと思いますけど,例えば民 間の世界で,例えばの話ですよ。なので,答えられないなら答えられないと おっしゃっていただいて大丈夫なんですけど,民間の世界では、仕事を与え られてそれで深夜まで残ってやっていたら,それは労働というふうに評価されるわけですよ。じゃ、教員については,本来的業務であったり,あなたが 命じた業務を5時以降も残ってやっているということであれば,これ自発的 というのはおかしいと思いませんか。
繰り返しの言葉になってしまいますので,先ほどと同じです。やはり それぞれ,一人一人の教員が自分で子供のためにやりたいと考えてい ることをできるだけ尊重したいというふうに考えております。それ以 外に私が命令をすることについては,繰り返しになりますけれども, 法的なこと以外についてはもうできるだけ最小限になるように,そう いう思いといいますか,考えで職員には当たるようにしております。 働き方についても常に職員とコミュニケーションを取っているつもり です。今現在どうだろうか,きついんであればこれをなくそうか,ま たは学校の教育活動というのは,全て教育課程の中に組み込まれておりますので,翌年度の教育課程を作るときにも各校務分掌の職員のほうには提案をするときにできるだけ削減をするように,そういう指示
をしております。教務主任にも年間の計画の中でできるだけ削減できものは削減するように指示をしております。実際に私が着任をしたときにも翌年には夏の水泳指導はもうなくそうというような幾つか出され・・。
Q.分かりました。あなたの学校作りはすばらしいと思うんですけど,私が聞いているのは,自発的だということについておかしいと思いませんかというこ となんです。あなた,先ほど一番最初に子供の成長を一番に願っているとお っしゃいましたよね。その子供たちの前でこういう残業,勤務時間外も働い ていることは自発的で,例えば労働じゃないというようなことを胸張って説 明できますか。
今の自分の学校経営の中では、自発的な部分が大きいと思っております。
Q.平成30年度の原告がいたときはどうなんですか。そのときも変わらないんですか。
そのときにもそういう思いではおりました。思いは変わらないです。 ただ,何年かいることでそれは積み重なっていきますから,自分がで きることも。だから,今の状態でもかなりいいとは思いますけれども,平成30年度でも同じ思いでいたことは変わらないです。
牧野裁判官からの尋問
Q.陳述書によりますと,あなたは昭和61年から学校教員を行っているという ことで,今は校長でいらっしゃるというふうなことですけど,いわゆる教壇 に立っていた,クラス担任を務めていたというのは、いつ頃くらいまでにな るんですか。
管理職になって,あと行政職も含めて12年ほど、間違っているかもしれませんけれども、担任を離れておりますので。 じゃ、大体平成20年ぐらいまで,今から12年前ですから・・・。大体です。違っているかもしれませんけど、申し訳ありません。 大体そのぐらいまでということですか。
Q.はい。 特にあなたが教師として働き始めた昭和,平成初頭の時代ぐらいですけど, と比べて,教員のいわゆる在校時間みたいなものってあなたが若い頃と今の教師と比べて,何か違いはあるなと思いますか。
今現在ですか。
Q.今現在と,あなたがまだ教師なりたての頃ぐらいと比べてどうですか。
今の小学校で言えば、かなり早く帰れるような状況になってきておりますので,それほど大きく変わらないと思います。
Q.じゃ,今のというと,今は先ほどいろいろな工夫をされて,結構改善されているというふうなことだったと思うんですけど,改善前とか,要は現状と比べてやっぱり在校時間というのは,あなたが若かった頃と長くなっているなというふうな印象は感じますか。
一般的には長くなっているような気がします。
Q.それって,あなた御自身の校長としての感覚でいいんですけれども,一般的 に昔と比べて学校の先生の在校時間が長くなってしまっているのって,それ って何が原因だと思いますか。
私の考えで。
もちろん,もちろん。あなたが校長として思っていらっしゃることで構わな いです。
私が教員になった頃は、教員が自由にいろいろなことができました。 自由にというのは,生徒指導も含めてです。今ですと,保護者の目が 非常に,非常に厳しいです。昔ですと子供のためを思って指導したこ とが,いわば親は先生がそう言うんだったら,そのとおりだと言って 一緒になって考えてくれました。でも,今はそういう保護者もいれ ば,なかなか厳しい保護者もいます。昔ですとそういう保護者対応を しなくて済むことが本当に丁寧な保護者対応をしないと大きな問題に なって,教員の負担がどんどん,どんどん大きくなる,これは一つの 例ですけれども,そういうふうな社会の在り方,地域の在り方がその当時と比べて大きく変わってきているのかなというふうに思います。
Q.じゃ,まず1個保護者対応の時間が増えるということもありましたけど,こ れ違っていたら違うというふうにおっしゃっていただいて構わないんですけ れども,そうするとやっぱり社会とか,保護者の教職に対する目が厳しくな というとルールと言ったら言い過ぎかもしれないですけど,ある程度各教 員の中でもこういうふうなことをやっていきましょうとか,こういう方針で やっていきましょうみたいな共通の認識みたいなものを作らざるを得ない場 面というのは,やっぱり昔と比べて増えたんですか。
それを作るというよりも,組織で対応するということだと思います。 以前ですと,例えばさっきの保護者対応についても何かがあったら担 任がある程度もう頑張るといいますか,困ったときには学年主任に相 談する,その程度のレベルでした。今ですと,何かそういう可能性が あるな,そういう目があるな,批判の何か電話があったなと思ったと きにはもう校長なり教頭なり,または別のメンバーも入れて組織で対 応して,担任一人に負担がかからないようにということで非常に気を 配って,それが一応過重労働にならないような工夫なのかなというふうに思っております。
Q.今回の訴訟では、職員会議なんていうこともちょっと問題に上がっていたり しますけれども,同じような質問なんですけど,職員会議の中身とか,在り 方,そこで話し合われることというのは,やっぱり昔と比べて今は変わった なというふうに思いますか。
職員会議に提案する量がまず昔に比べると多くなってきたのかな。それは、やはり学校に求められるもの,それは教育委員会からというよ りも地域や社会から求められる,また家庭から求められるものが多く なってきているので,それに対応するために職員会議の提案のものが 増えてきているのかなというところは思います。ただ,それをしない と逆に教員を苦しめてしまう,細かい対応をしなければ,さきの例も そうですけれども,今の時代余計な過重労働になります。逆の意味 で。そうならないためにも組織でしっかり対応することが今の時代はすごく重要なのかなというふうに思っております。
Q.つまりあなたの御認識としては,トップダウンでいろんなことが下りてきて 業務の量が増えているというよりも、周りの環境の変化に応じて対応しなく ちゃいけないこととか,考えなくちゃいけないことというのが増えてきたというのがやっぱり昨今の教育の状況をめぐる変化の原因の一つではないかというふうにお考えになっているということですか。
私はそう思います。上から何とかというよりも,教員にとって一番つらいのは,私はそういう保護者だとか、いろいろなところから,こういうことのほうがはるかにつらいですし,そうならないようにという ことでやはり学校長とすれば気を配っているところです。
裁判長からの尋問
Q.職員会議の在り方なんですけども、先ほど証人が校長という立場から今運営 している職員会議の在り方について御説明いただいたんですが,これという のは、人が変わった場合はどうなんでしょう。人が変わった場合というのは,どういう意味ですか。 だから,ほかの方が校長の場合にやっぱりトップが変わると運営の形が変わ ったりするというのは,組織社会としては一般的にあるところなので,皆さん同じような運営の仕方をしているのかどうかというのは。
おなじだとは思いますけど、私はやはり今言ったように職員の意見を聞きながら,トップダウンというよりもいい意見があればもう遠慮な く変えますし,事前の運営委員会の中でも提案した内容よりも違った 修正意見が出てきて,その意見がもっともだなと思うときには当然修 正をしますし,私自身が自分の考えをごり押しした例はここ3年間の中でもほとんどないです。それは,子供の安全に係る,最初に言いました登校指導のあのときはお願いしますと,命に関わることなんで, しましたけれども,それ以外のことについては体育祭にしてもいろい ろな行事についても,修正意見が出たときにはこちらとしては臨機応 変にじゃその方向でやってみよう、でも私とすればできるだけ負担に ならないようにということは,それぞれの主任のほうには常に声かけはしております。
★まとめ
以上が、3月5日に行われた証人尋問でした。