教職には「魅力がある」とよく言うけれど、本当なのだろうか??

先日、文科省が各教委による教職の魅力を発信するコンテンツをホームページに一覧にして作成したとのニュースが流れました。

教育人材情報をまとめている文科省の教育人材総合支援ポータルでは新たに、全国の教育委員会が作成した教職の魅力を発信しているコンテンツの一覧ページを作成し、公表した。

日本経済新聞『各教委が教職の魅力発信 文科省HPにコンテンツ一覧設ける』(2023年9月11日)

教師は学校教育の要であり、子供たちに寄り添いながらその成長を実感することのできる、他では得がたい経験のできる魅力的な職業です。子供たちに日々よりそい、活躍されている教師の皆様からの視点で、「教員の魅力・やりがい」をご紹介しております。各自治体からの教師の魅力発信コンテンツをご覧ください。

文科省『教師の仕事の価値・やりがいに関する情報』

昨今の教員不足に際して、よく聞かれる「魅力」という言葉。

「教職には魅力がある」「教職の魅力発信」「教員として働く魅力」・・・等々。

また、「長時間労働でブラックではあるけれど、魅力はある」とも言われます。

しかし、私は、実際のところ、本当に「魅力」があるのだろうかと疑念を抱いています。

◆『教員の働きがいに関する意識調査』

エビデンスをもとに、話を進めていきます。

少し古いデータですが、日本教職員組合は教員の働きがいの実態とその要因について、2012年に『教員の働きがいに関する意識調査』という調査を実施し、発表しています。

その調査では大きく2点、教員に質問をしています。

①教職の魅力について

一点目の質問は、「仕事が楽しいか?」「仕事に生きがいを感じるか?」「仕事を続けたいか?」「仕事に満足しているか?」というもので、教職の魅力を問うものです。

これらの質問では、一般企業に従事する労働者に比較して教員の「YES」の割合が高いことが伺い知れます。教員の仕事に魅力があるという話は嘘ではなさそうです。

②今の仕事を続けたいか?

二点目の質問は、「今の仕事を続けたいか?」というものを年齢別にまとめたものです。

一般企業の労働者が加齢とともに「YES」の割合が増加しているのに比べて、教員は加齢とともに右肩下がりです。

つまり、教員は若年層では非常に高い意欲があるにもかかわらず、その後は持続せず、次第に失われていくのです。

この調査結果を見て、それでも教職は「魅力」があると言えるでしょうか。

私は言えないと思います。

仕事というのは、年齢を重ねるごとにキャリアが形成されていくわけで、本当にその仕事に魅力があれば、一般企業の労働者のように加齢とともに「YES」の割合が増加するはずです。

にもかかわらず、そうではないということは、教職というのは、キャリアを積み重ねていけばいくほど嫌になってしまったり、バーンアウトしてしまったりする職業なのではないかと推察できます。

★まとめ

教職には「魅力」があるという前提で語られることが多いですが、「本当にそうなのか?」と疑ってかかった本記事。

日教組の調査結果によると、若年層では確かに仕事を魅力を感じている教員が多いが、年齢ともに魅力を感じなくなる教員が増えるというものでした。

個人的には、このように年齢とともに意欲が低下していくような職業において、大々的に「魅力」を発信する資格があるのだろうか、という思いです。

なお、6年前にはなぜ年齢とともに意欲が低下していくのを考えた記事を書きましたので、よろしければこちらもぜひ。

参考記事:年齢を重ねるほど労働意欲が低下している仕事、教員。元教員がその5つの理由を挙げてみる