朝日新聞・社会部教育班の杉原里美記者が出版した、『掃除で心は磨けるのか―いま、学校で起きている奇妙なこと―』。
今回は、この本のなかで便教会(べんきょうかい)という驚愕の教員研修が取り上げられていて、その取材内容が衝撃的だったので、紹介します。
◆便教会の最大の特徴は、便器を素手で磨くこと
杉原記者の取材によれば、便教会の正式名称は「教師の教師による教師のためのトイレ掃除に学ぶ会」とのこと。その目的は、トイレ掃除を励行する先生を育て、生き方を伝えていくこと(?)だそうです。
便教会は、「教師の教師による教師のためのトイレ掃除に学ぶ会」ともいう。2001年、愛知県立碧南高校の元教諭、高野修滋さんが立ち上げた。2017年には20都道府県に広がり、全国でトイレ掃除を励行する先生を育てている。高野さんによると、便教会の目的は掃除指導法の普及ではなく、「生き方を伝えていくこと」だという。(P16)
続いて、杉原記者は「便教会の最大の特徴は、便器を素手で磨くこと」だと説明します。
便教会の最大の特徴は、便器を素手で磨くことだ。(中略)便器用の基本道具3点セットが用意された。安井先生が言う。
「最初はスポンジ、汚れが取れなければナイロンたわし、それでもダメならサンドメッシュを使います。すぐにサンドメッシュを使うと、子どもにいきなり『こらっ』と言うのと同じで傷つきます。
「『今月は、ここも汚れているな』と気づくこともあります。自分の感覚を楽しみにしていただくといいかな、と思います。出来る限り指を入れて取りそれでも取れない場合は、サンドメッシュを使ってください』(P18)
指を入れて?
個人的にはめちゃくちゃ抵抗感あります。
◆素手で掃除をすると生徒と目線が同じになる?
この便教会(研修会)に、教員参加者とともに参加した杉原記者。次のような記述から、参加者たちの空気感が伝わってきます。
参加経験のある先生たちは、「この会に参加すると、いろんな気づきがある」「トイレ掃除をすると、へぼい自分、弱い自分に出会える」などと、掃除の効果を口にしていた。(P17)
トイレ掃除なんかしなくても自分の弱さを毎日痛感している私なんかは、正直意味不明ですが…。
また、彼らによると、素手で掃除をすると生徒と同じ視点になるようです。
「素手で掃除をすると、生徒と目線が同じになります」と、効果を教えられた。目線を低くしてトイレ掃除をすることで、換気扇に挟まったタバコ、便器にはりついたガムなども発見でき、生徒の変化にも気づけるのだという。(中略)
「掃除は片手ではなく、必ず両手でやってくださいね。片手では問題から遠ざかります」(P19)
片手だと問題から遠ざかる…?
更に、終了後には反省会もあったようです。
終了後、全員で感想を述べあう「反省会」もあった。
「やっていくうちに、いつの間にか便器に頭を突っ込んでいた。便器に向き合う時間は初めての経験だったが、これを生かして、生徒と向き合っていきたい」
「自分がだらけているときに掃除をすると、次にやるべきことに目を向けていけると思った」
「きれいになったという価値観をみんなで共有できるところがいい」(P20)
すみません、完全に意味が分かりません。
★まとめ
私はこれを読み、新手の自己啓発セミナーだと感じました。
参加者が自宅で勝手にやる分には何の問題はなく結構ですが、生活指導の一環とか言って学校で児童・生徒にも強要するのであればそれは違うのではないかと思います。トイレ掃除させるにしても、素手でやらなければならない科学的な根拠はありません。
『掃除で心は磨けるのか』では、便教会の他にも無言清掃、過剰なあいさつ、スタンダードの流行、理不尽な校則など、今学校現場で起きている奇妙な指導について詳しく書かれています。
奇妙な指導については、このように外部から一つひとつ指摘していく必要性を感じざるを得ません。
コメント
「素手でトイレ掃除をする研修」を受けてみて、わかったこと。