教職は「ブラックなイメージ」なのではなく、「ブラックそのもの」。改善が進みつつあるは限りなく嘘に近い

RKB毎日放送2023年12月25日

12月、まるで示し合わせたように大手メディアにより、教職には「ブラックなイメージ」があり、そのイメージの払しょくが課題である、というような報道が続きました。

教職の本格的な復権には、「ブラック」と呼ばれるネガティブなイメージの払拭(ふっしょく)がカギとなりそうだ。(中略)近畿大教職教育部の柴浩司教授は「学生を教職に呼び込むためには魅力を正確に伝えるイメージ戦略が重要となる」と話す。

処遇改善で「ブラック」イメージ払拭が課題 公立小教員の競争率、過去最低(産経新聞2023年12月25日)

近年の教員採用試験の倍率は低下している。学校現場は「ブラック」というイメージが広がっていることが一因とされ、なり手不足解消のためにも働き方改革が急務となっている。

教員の「残業代」増額検討 長時間労働対策 文科省(時事通信2023年12月31日)

福岡教育大学で25日開催された「教師の魅力再発見!公開フォーラム」には、学生や教育関係者など約150人が参加しました。この公開討論会は、「ブラック職場」や「志望者の減少」などマイナスイメージが定着しつつある「教師という仕事」の魅力について伝えようと開催されたものです。

「ブラック職場」のイメージを払拭できる?教師の“魅力”を考える討論会(RKB毎日放送2023年12月25日)

近畿大学教職教育部の柴浩司 教授は「教師の仕事は、給料が低く大変でブラックだという印象が根強く、目指すことをためらうケースも多いと思う。しかし実際は改善が進みつつあるので、学生たちに最新の状況を知ってもらう取り組みを進めたい」と話していました。

教員目指す学生に働き方改革など学校の現状紹介 近畿大で授業(NHK関西2023年12月18日)

これらの記事によれば、ブラックなのは「イメージ」だけであり、実際は労働環境の改善が図進みつつある、とのことですが、本当にそうなのでしょうか。

◆労働環境は改善されてきている?

NHKの記事によると、

守口市の小中学校では、

▽夏休みにすべての学校で5日間、教員が出勤しない期間を定め、連休を確保する取り組みを行っているほか、

▽テストの解答や通知表の作成にデジタル技術を取り入れ、教員の業務を削減するなど、

を行っていることで、労働環境が改善したとあります。

しかし、これだけで労働改善したといえるのでしょうか。個人的には、私は「焼石に水程度の改善にしかならないと思います。

実際、2023年4月に発表された『勤務実態調査』では、1日あたりの勤務時間は30分のみ減少したようですが、依然長時間労働の傾向は変わりません。

文部科学省は28日、昨年度に実施した公立学校教員の勤務実態調査の結果(速報値)を公表した。2016年度以来6年ぶりの調査で、教諭の平日1日あたりの勤務時間(在校時間)は小中学校とも前回調査と比べて約30分減少。一方、1カ月あたりの時間外勤務(残業)は、中学校で8割弱、小学校で6割強の教員が文科省の定める上限基準(45時間)に達していた。

公立小中教員の勤務時間、30分減少も基準超え常態化 文科省調査(朝日新聞2023年4月28日

しかも、この調査は持ち帰り仕事が換算されていなかったり、管理職による改ざん指示があったりして、本当に実態を表わしているのかとの指摘もある調査です。

◆過去最多の精神疾患休職者数

一方で、12月に発表された昨年度の精神疾患での休職者数は、過去最多となったようです。

文部科学省によりますと、昨年度、うつ病などの精神疾患で休職した公立学校の教員は、▽小学校で3202人、▽中学校で1576人、▽高校で849人、▽特別支援学校で872人などで、合わせて6539人となり、前の年度より642人、11%増えて過去最多となりました。6000人を上回るのは、調査を始めた1979年以降初めてです。このうち1270人は、ことし4月時点で退職しています。

精神疾患で休職の教員過去最多 初の6000人超 20代が高い増加率(NHK2023年12月22日)

そして、多くの教員を診てきた三楽病院の精神神経科・真金薫子部長は、次のように取材に答えています。

『教育現場は忙しい』とか『ブラックだ』と聞いたうえで覚悟を持って教員になった人が多いが、実際に働き始めたら『予想以上だった』という声がよく聞かれる。若手であってもベテランの先生と同じような指導力を求められる中で、これまで以上に多くの仕事をこなさなければならず、先輩教員から学ぶ時間も取れなくなっている。

★まとめ

労働環境が改善されているのであったら、勤務時間の減少幅が30分にとどまることはないし、精神疾患での休職者数が最多になることもないでしょう。

今、教職は「ブラックなイメージ」なのではなく、「ブラックそのもの」なのです。ひょっとしたら、予想以上の可能性さえあるほどです。

ですから、私は「改善が進みつつある」というのは限りなく嘘に近いと思います。

まず、そのことをしっかりと認めて、労働環境の改善などまだほとんどしていない、と正しい状況認識が出来て、はじめて労働環境の改善が始まるのではないでしょうか。

私はそう思います。

コメント

  1. さかっち より:

    現職の小学校教員です。今年(23年度)から公立の小学校の教壇に立っています。
    私が小学校の教壇にたって1年がたちますが、この間のことを振り返るとトウマコさんの現状分析は全く正しいと思います。しかし、文科省の発表にもあるように現状は改善しつつあるかのような報道も見られるようになってきました。これってなぜなんですかね?
     文科省の発表(勤務時間の)は「前回と比べて30分減少」とか言っていますが、私の実感では、この「30分」は、今まで学校でやっていた仕事を単に持ち帰り残業にしただけの短縮時間か、もしくは、全国的に時間の改ざんをすることが常態化していて、その結果のようなきもしますが・・・?ちなみに、私のいる自治体では、中学校の部活の地域移行も全くすすんでおらず、相変わらず中学校では午後8時や9時になっても職員の車がまだたくさん残っています。しかし、なぜか市教育委員会は、「令和7年末には、地域移行を完了させる。」等と広報などで言っています。
     これらの状況は私の勤務している自治体だけなんですかね?