名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授の内田良氏が、教員な過酷な勤務実態について告発する、新たな記事を上げています。
【ブラック学校】
●教員の9割は,出退勤時刻が管理されず(タイムカード使用は1割のみ)
●タイムカードを導入しても長時間労働は改善されず
●残業代はゼロ▼教員の出退勤 9割把握されず 労務管理なき長時間労働(内田良)https://t.co/Ywf9hSLgZn pic.twitter.com/kr3wkjjF8b
— 内田良/学校リスク研究所 (@RyoUchida_RIRIS) 2017年4月24日
今回は、私の教員時代の経験を踏まえながら、この記事について取り上げます。
◆出退勤の確認方法 最多は「捺印」
記事では、連合総研『全国調査の報告書』より、出退勤の確認方法の最多は「捺印」であるとし、9割の学校はタイムカードなどによる正確な出退勤時刻が記録されていないとしています。
私の小学校教員時代も、「捺印」でした。
毎朝、出勤簿に印鑑を押しに行くのです。
記事にもあるとおり、当然この方法では、
出欠確認くらいの意味しかもたず、出退勤の時刻はまったくわからない
です。
いつの時代だよ、と突っ込みたくなります。
おそらく、牧歌的な昭和時代には皆が勤務時間終了時刻とともに退勤していたので不必要で、それからタイムカード導入等予算も手間もかかるのでそのまま変わらず今日まで来たのだと思います。
新たな予算をつけることなく無尽蔵に教員を働かせたい教育委員会や管理職にとって、タイムカードなどない方が都合が良かったのでしょう。
◆正確に記録しても効力なし?
ではタイムカードを導入し、勤怠管理を正確に行えば、長時間労働が解決するかといえば、そうでないことを内田氏は、連合総研の報告書のデータを用いて解説します。
「タイムカード・PC 等の機器」の使用の有無を含む上記の5つの選択肢について、長時間労働の時間数に差がないというのだ。タイムカードであろうが、捺印であろうが、あるいはそもそも出退勤が把握されていなかろうが、それに関係なく、おおむね同程度の長時間労働にさらされているということである。
タイムカードで記録しても長時間労働の抑止につながっていない・・・。
これはどういうことなのだろうか。
まずは記事中にもあるとおり、教員は残業代が出ないので、教育委員会や管理職が積極的に取り締まろうとしないという点が挙げられます。
しかし、それだけではないと私は考えます。
それは、このデータが実際の現場を正確に反映しているのならばという前提で、現場の経験者として言うならば、「勤務時間外の時間も含めて仕事の評価に入る学校の文化があるからこのようになる」ということだと思います。
どういうことなのか、順を追って説明すると、
- そもそも勤務時間という概念が薄い
- だから明らかに勤務時間内に終わらない仕事量が割り振られる
- 勤務時間内に終わらないからといって終わらせないわけにはいかない(例えば、通知表「あゆみ」の作成が勤務時間内で終わらないからといって作り上げないという選択肢は事実上ない)
- 万が一、期日までに仕事が果たせなければ評価が下がる、子どもたちが困る
- ほとんど全ての教員がこの不条理なシステムを自己犠牲とともに受け入れている(そのため、一人だけ外れる選択肢は事実上ない)
- また、本来は仕事量を減らすべきだが、この理不尽なシステムを悪用して、教育委員会が調査・報告書の類を増やし、仕事量をさらに増大させる
ということになります。
つまり、タイムカードがあろうとも、膨大な仕事量、周囲からの評価や同調圧力、自己犠牲等によって、長時間労働がまかり通ってしまっているのではないかと私は思うのです。
そして記事中にもあるとおり、結局、
もし職員室に残っている人がいるとすれば、それは自発的に残っているだけなのだ
と扱われてしまう、というのが悲しい実態なのです。
ではタイムカードの導入は無意味かというと、私はそうではないと思います。
内田氏の記事でも産業医・斉藤政彦氏の発言を引用し、
「実態を把握していないことが一番の罪」(愛知県「教員の多忙化解消プロジェクトチーム」)
であると書いています。
同感です。
実態把握が必要なことには変わりはなく、また客観的なデータがあることで事態の前進が望めると思うので、仮にタイムカードが長時間労働の抑止にならなくても、タイムカードの導入は必要と私は考えます。
★まとめ
教員の労務管理はそのほとんどが「捺印」であり、タイムカードは導入しても長時間労働の抑止にはならない、しかし抑止力にはならずとも実態把握のためにタイムカードは必要、これが記事の概要であり、私の意見でもあります。
そして、私は長時間労働を抑止する最も効果の高い施策は、
- 教職調整額の制度を廃止し、残業代を支払う
ことであると思います。
なぜなら、教員にたくさん残業されたらその分だけ予算が膨大になる一方なので、抑止力になる可能性が非常に高いからです。
そして、このような施策を実現させるべく今こそ、(政治的な活動に熱を上げる組合ではなく)本来の意味での労働問題に取り組む、教員の団結を促す労働組合が必要なのではないかと私は思っています。残念ながら現実はそういう流れにはなっていないのですが・・・。
以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「内田先生の教員のブラックな労務管理を告発した記事について現場経験者として私見を述べる」でした!
関連記事:現場経験者の元教員が挙げる、ニッキョウソに感じる3つの違和感
コメント
あっ!コメント欄復活ですね。
記念にコメントさせてください。
我が県では、出勤簿すらありません。
勤務時間調査なるものが、ここ数年ありました。それを入力するため、余計な時間がかかったのは言うまでもありません。
勤務時間調査の結果、あまりにも残業が長いと行政が判断したのか、なんと、月をまたいで半月ずつ入力するように調査内容が変わったのです。
おそらく、半月ずつ2ヶ月かけて調査すれば、1ヶ月当たり残業が半減できると考えたのでしょう。
行政は、正当な残業手当てを支給する訳もなく、単に残業時間の揉み消しに躍起のようです。こんな行政がふんぞり返ってると思うとガッカリです。