朝日新聞の記事「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」にインタビューが掲載されたので紹介する

本日、朝日新聞が生活面で、「2分の1成人式」の問題点について取り上げた記事を出しています。

「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」(出典:朝日新聞2017年5月18日)

(手前味噌ながら)私もインタビューに応じ、そのとき話したことが記事に掲載されています。

この記事、2分の1成人式の問題点について様々な立場の方のインタビューから構成されていて、文章も読み易く、秀逸な記事です。

◆そもそも2分の1成人式とは?

2分の1成人式、ご存じない方もいらっしゃると思います。

一応説明すると、子どもが10歳になったことを祝う学校行事です。

4年生が対象で、子どもが親への感謝をつづった手紙を読んだり、親から子どもへ手紙を渡したりする会です。(他にも歌を歌ったり、将来の夢について語ったりする学校もあります)

学習指導要領に明記されているわけではありません。ですから、絶対にやらないといけない行事ではなく、あくまでも学校現場が自主的に行っている行事、ということになります。ここ10年ほどで急速に拡がりを見せているイベントです。

このイベント、クライマックスは、子どもから親への手紙です。

なぜなら、多くの親たちが我が子から「(育ててくれて)ありがとう」と言われ、喜び、感動するからです。

(子どもは親への手紙を書くよう先生に指示(強制)されて、一番無難で楽なのが「ありがとう」だからそう書いているだけ、という可能性が結構あるのではないかとひねくれ者の元小学校教員の私は思うのですが。)

ですから、この2分の1成人式、多くの学校で「感謝」や「感動」の演出が強くなり、“親にありがとうを言う会”になってしまっているのが現状なのです。

◆9割の親が満足?

(出典:ベネッセ教育情報サイト9割が満足! 親子で感涙する「2分の1成人式」とは!?

なぜこの行事は拡がってきたのか。

幾つかの要因があると思いますが、その一つに「親の満足度が高い」ということがいえます。

記事では、ベネッセが行ったアンケートで、約9割の親が「とても満足」「まあ満足」と回答していることを提示し、この行事に対する親の満足度の高さを解説しています。(↑が記事で挙げられている調査です)

また、ネットで「2分の1成人式」と検索すると、「嬉しかった」「感動した」などの親の書き込みがたくさん出てきます。

この親の満足度の高さ、これと教員が親からの評価を気にする(怯える)時代背景とが相まって、この行事が拡がってきたのではないかと私は個人的に考えています。

◆問題点は?

このように高い満足度の親が多い一方、この行事に苦しむ子どももいるようです。

記事では、東京都羽村市議の馳平耕三さんが聞いた話として、2分の1成人式で苦しんだ児童の体験談を載せています。

 親は離婚し、一緒に暮らす父親は子どもに無関心だった。そんな状態で学校から2分の1成人式のために親への感謝の作文を書くよう言われ、「ウソをつくのはいやだ」と感じた。それでも周囲の目を気にして自分を殺して書いたが、読んだ担任は「感謝の気持ちが足りない」。2度書き直しを指導された。

 親から子どもへの文章も必要だったが、父親は書いてくれず、祖父に頼んだ。女の子は「何の感謝もしていないし、つらいことの方が多かった。みんなが幸せな家族じゃないのに」と、当時を思い出して泣いたという。(出典:「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」朝日新聞2017年5月18日)

この児童の体験談がすべてを物語っています。

このように、全員が参加しなければならない学校行事で、一部であっても苦しまなければならない子どもがいる。これがこの行事の最大の問題点なのです。

この児童が言うように「みんなが幸せな家族じゃない」のです。

片親に育てられている子ども、施設で生活している子ども、虐待を受けている子ども、親が仕事等で式に来られない子ども、親の事情で親から手紙を貰えない子ども、公の場でありがとうを言いたくない子ども・・・・・。

2分の1成人式は、彼らがいらぬ苦痛を受ける機会となってしまっているのです。

◆2分の1成人式ではなく自らと向き合う学習へ

記事では、配慮が必要だと考えた(小学校4年生担任をしていた)私が、例年行われていた親との手紙のやりとりをやめ、式ではなく普通の授業として、子どもたちが自身の将来について考える学習に変更したことを紹介していただきました。

複雑な家庭の子どもに配慮しようとする教員もいるが、一度始めた行事を変えるのは大変なようだ。関東地方の公立小に勤めていた30代の男性は数年前、担任する4年生のクラスに父親を亡くした子どもがいた。ほかのクラスの担任や校長と話し合い、保護者は呼ばず、子どもが将来の夢などを考える授業に変えた。

 ところが、保護者からは「上の子どもの時はやったのに、どうして今年はないのか」「楽しみにしていたのに」などの苦情が寄せられた。子どもからの文句はなかったという。

 男性は「子どもにとっては『面倒くさい行事がなくなった』ぐらいなものだった。親を喜ばせるためのイベントで苦しむ子どもがいるくらいなら、やめてしまった方がいい」と話す。(出典:「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」朝日新聞2017年5月18日)

私の考えは、記事にもあるように、「親を喜ばせるためのイベントで苦しむ子どもがいるなら、やめた方がいい」です。

★まとめ

記事は、最後に名古屋大学大学院准教授・内田良先生のコメントで締めくくられています。

学校や保護者は「感動」を追いかけて、そうした子どもたちが見えなくなってしまってはだめだ。学校はつらい思いをする子どもが出ないように配慮する責任がある。(出典:「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」朝日新聞2017年5月18日)

その通りだと思います。

学校現場は、記事にもあるように前例主義が蔓延る文化がありますが、そうではなく教育の本質に則った教育活動を行っていくべきであり、保護者には世の中に様々なな事情の家庭があるという想像力を働かせてほしいものです。

今回、全国紙である朝日新聞が取り上げてくれたので、これを機に学校や教員、保護者が「2分の1成人式」との向き合い方を考え直して貰えたらと願っています。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「朝日新聞の記事「2分の1成人式、学校に浸透 親へ感謝の手紙」にインタビューが掲載されたので紹介する」でした!

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