「限定4項目外業務」は36協定方式を採るべき!『法学セミナー6月号』高橋哲准教授の論文は必読!

教育法学を専門とする埼玉大学・髙橋哲准教授が、最新『法学セミナー2019年6月号』に「教職員の多忙化をめぐる法的問題」として論文を提出されています。

今回は、この論文のなかでも、「限定(超勤)4項目外業務」における解釈について、これまでの歴史と今後の取り扱いについて書かれた箇所を取り上げ、考えていきたいと思います。

◆「限定4項目外業務」の解釈の変化

髙橋哲准教授はこの論文のなかで、「限定4項目外業務」について、

  • 4週間単位変形労働時間制⇒教員の自発的行為⇒包括解釈

というようにその解釈の仕方が変わってきたことを指摘しています。

包括解釈は、給特法制定時の「施行通達」(昭46/7/9文初財第377号)にはみられない。「勤務時間の割振りを適正に行うためには、労働基準法第三十二条第二項の規定の活用について考慮すること」とし、旧労基法32条2項に定められていた「4週間単位変形労働時間制」を活用することが想定されていた。(P20)

これまで文科省は「現行制度上では、超勤4項目以外の勤務時間外の業務は・・・・・(中略)教員の自発的行為として整理せざるをえない」と、その業務性を否定してきた。(P19)

「限定4項目外業務」の把握には、給特法、及び、教職調整額をめぐる解釈の混乱が関わっている。すなわち、教職調整額が「限定4項目外業務」をも包摂するという「包括解釈」による混乱である。例えば、先の中教審答申においても、給特法に関して、「時間外勤務手当及び休日給を支給せず、勤務時間の内外を問わず包括的に評価して教職調整額が支給される」との解釈が採られている。(P20)

そして、このような解釈の変化が混乱をもたらしてきたといいます。

これまで散々言われてきた「自発的行為」…。

最近お上は、「自発的行為」ではなく、「包括解釈」を前面に出してきています。

(私はこの変化について、教員の残業時間に関する各種調査や報道から、これまでの「自発的行為」を押し通すには無理が出てきたから、「包括解釈」を持ち出してきたのではないかと類推しています。)

埼玉県小学校教員の未払い賃金訴訟でも、県はこの「包括解釈」を採り妥当性を訴えています。

教員の職務及び勤務態様の特殊性を正規の勤務時間の内外を問わず包括的に評価した結果として「教職調整額」を支給している。

(出典:教員無賃残業訴訟・田中まさおのサイト『県答弁書』より)

しかし、この「包括解釈」がまかり通るのであれば、事実上労働時間に上限がなくなることを意味するのではないでしょうか。

◆「限定4項目外業務」は36協定方式を採るべき

髙橋准教授は、解釈論の変化を論じたうえで、「限定4項目外業務」について職調整額の対象に含めることは失当であると述べています。

「施行通達」の内容からすれば、「限定4項目外業務」を教職調整額の対象に含めることは失当であり、まずは「限定4項目外業務」が労基法の定める労働時間に該当するかが判断されなければならない。(P21)

そして、その業務が自発的行為ではなく、労働時間に該当するのかどうかについては、「指揮命令性」と「業務性」の双方によって判断されるべきものとしています。

荒木尚志は、この「指揮命令性」と「業務性」の双方によって判断される労働時間概念を「相補的二要件説」として説明するが、(中略)つまり、労働時間とは「指揮命令」の有無にとどまらず、「使用者の関与」と「業務性」の程度を判断して、客観的に労基法32条が示す「労働させ」たという事実によって把握されることとなる。(P22)

そのうえで、労働時間と判断された「限定4項目外業務」については、36協定を結ぶ措置が最善としています。

解釈論上の対応としては、現行の給特上のもとでも「限定4項目外業務」を労基法36条の対象として36協定を結ぶという措置が最善であると思われる。中教審答申においては、「給特法維持」か「36協定」かという二者択一が示されていたが、現行給特法のもとでも労基法36条は適用されており、36協定方式は可能であることが知られなければならない。(P23)

これは、埼玉県小学校教員裁判の原告先生の主張とも一致します。埼玉県の原告先生も、36協定の締結を訴えています。

「超勤4項目」以外の業務については、労働基準法32条に基づき、原則として時間外勤務は認められず、例外として時間外勤務をさせる場合には、労使間で話し合いを行い、労働基準法36条に基づく三六協定を締結することが必要となる。

(出典:教員無賃残業訴訟・田中まさおのサイト『原告準備書面』より)

★まとめ

髙橋准教授は、教員の労働条件は子どもたちが良い教育をうけるために必要な「教育条件」と述べています。

教員の労働条件は「教師の人間としての生活条件であることに加えて、子どもたちが良い教育をうけるために必要な『教育条件』でもある。(P18)

つまり、これは単に教員の労働問題ではなく、教育に関わる問題だということです。

今こそ、子どもたちの教育条件を整備するためにも、お茶を濁した程度の45時間ガイドラインなどではなく、本質的な働き方改革の必要性に迫られています。

今後、教員の労働条件をめぐる問題への本質的な改革は、この「限定4項目外業務」についての36協定締結になっていくのではないかと感じる論文でした。

この論文、必読です!!