【地裁】第8回埼玉教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた

さいたま地裁で埼玉教員超勤裁判の第8回目が行われました。この裁判、今後の日本の公立学校教員の超勤問題を左右する裁判だと思い、継続的に注目しています。

先日、第8回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)で双方の書面が公開されましたので、今回も全文読む余裕がない方に向けて重要と思われる部分を抜粋して整理しました。

今回の双方の主な主張(反論)

県教委の主張 原告先生側の反論
職員会議は校長の職務の円滑な執行を補助する機関であり、意思決定権限を有していない。 職員会議によって決定された事項は、教職員間の協議に基づき、各教職員が 自主的に協力するという性質のものではなく、校長が自らの権限と責任において決定した、校長による業務命令の性質を有している
教室の整理整頓・掃除用具の確認・落とし物の整理に要する時間は各教員によって異なる。 各業務に要する労働時間が教員によって多少異なることは当たり前である。 原告は自らの体験をもとに所要時間を具体的に主張している以上、被告はこれに対して真正面から反論し、その時間をもって勤務時間内に終えることができるかを答えるべきである
教室の点検修理及び報告の方法は安全部の教員からの提案につい て職員会議で協議し、各教員の共通理解を図ったのであり、校長から原告に対して点検修理及び報告を行うことを直接命じたことはない。

教室等の施設の異常箇所について、自分で修理するよう校長から 原告に対して直接命じたことはない。

しかし、校長は各教員らに対し、点検表の配布を通じて、 点検修理及び報告を行うことを直接命じていた。したがって、教室の安全点検・修理及び報告は、いずれも校長の命令により義務付けられていた業務であり、原告が自発的に行っていた業務ではない。

しかし、点検の結果「異常」があった場合には、「自分で修理をする」ことが「安全点検について」と題する文書に明確に記載されており、同文書の配布を通じて、校長は原告に対して、教室等の施設の異常箇所を自分で修理するよう直接命じたものといえる。

教室の掲示物の管理は校長から命じられて行うようなものではな く、教員の本来的業務である。 校長が命じたのではなく、「教員の本来的業務である」とする被告の主張が多く見られる。 しかし、原告の主張する「命じた」とは、明示のみならず黙示の命令も含むものである。そして、当該業務が「教員の本来的業務」である以上、校長は原告に対して、当該業務に従事することを黙示に命じているといえる。さらに、 勤務時間内には終えることができない「教員の本来的業務」への従事を、校長が原告に対して黙示に命じている以上、その時間は時間外労働に該当する
「教員に対して掲示計画の基本案は示しているが、学級毎に創意工夫をし、基本案どおりに行わないことについて、校長から原告に対して指導したことはない。 しかし、甲48「教室の掲示について」には学年で統一する記載されているとおり、同文書は基本案ではなく、校長が各教員に対して、学年で統一した掲示を命じる文書である。仮に、いかなる掲示物を掲示するか、 または掲示しないかも含めて、教員の自由な裁量に委ねられているのであれば、文書を作成する必要は全くない。甲48の文書はまさに、校長が教員らに対して、各掲示板を設けること、さらには何を掲示するかさえも具体的に指示していることを示している。
(教材研究の時間について)在校時間だけでは終わらないとまでは言えない。 被告は、教材研究の時間を在校時間の枠内で終わらせることも可能と主張する以上、教材研究に要する時間を具体的に示すべきである。なんらの根拠もなく、原告の業務を在校時間で終わらせることも可能という主張は、いわば「言いっ放し」の主張であり、実態に目を背ける著しく不合理な主張である。
(ドリルノート等の提出物の内容確認業務について)原告が自発的に行ったかは不知 このように、被告及び校長は、原告の業務の実態を全く把握していないことを自ら認めている。提出物の内容確認業務は、原告が行わざるを得なかった業務であるにもかかわらず、被告及び校長が教員らの労働実態を把握していないことも、原告ら教員の長時間労働の一因となるものである。
(学年花壇の利用・管理について)校長が直接命じているものではない。 学年花壇の利用・管理する業務が教員らの業務遂行(学習指導)の 上で必要不可欠である以上、同業務は校長の黙示の命令により義務付けられて いた業務であり、原告が自発的に行った業務ではない。
(家庭訪問の実施時間について)正規の勤務時間内で行うことが可能 である。 被告の主張は、(16時15分~16時45分の)教員らの休憩時間を無視しており、実態とは全くかけ離れた主張である。
授業参観の際、特別な授業を構成するよう校長から原告に対し、直接指示したことはない。

授業参観という行事の性質上、教員らは保護者の参加を前提とした 特別な授業を行わざるを得ない。校長も各教室を見回り、授業参観終了後に教員らに感想を伝えることも、授業参観が特別な授業であるからである。

★まとめ

個人的には、県の答弁には驚かされます。

次回は9月10日です。