福岡市が宣言した「インターバル規制」は本当に良い取り組みなのか。

TBSの報道によると、福岡市では教員も対象の「11時間のインターバル規制」が行われるようです。

福岡市は、教員を含む全ての市の職員が、仕事を終えてから働き始めるまでに「11時間の休息時間」を確保する宣言を行いました。福岡市の高島市長が発表した「勤務間インターバル宣言」は、教員を含む市の職員が終業から始業までの間に11時間の休息時間を確保するものです。

勤務間インターバル「11時間確保」を福岡市が宣言 育児休業100%取得も促す (TBS 2022年9月2日)

一見良い取り組みに思われるかもしれませんが、本当にそうでしょうか。

今日はこのことについて、書きたいと思います。

◆労基法(+超勤4項目)との矛盾

インターバル規制、現在部活動の指導で過労死ラインまで働かさせられている教員にとっては良いニュースかもしれません。

しかし、私は法的な矛盾があり、”副作用”があると思っています。

インターバル規制は、ギリギリまで働かせて良いということではなく、そこが限度という趣旨だとは思います。しかし、次のような解釈も可能となってしまいます。

それはつまり、

11時間のインターバルが必要=仮に朝8時勤務開始とすると前日は21時までは働かせることが可能

ということです。法定の勤務終了時刻が17時までにもかかわらず、です。

これ、「45時間ガイドライン」のときとまったく同じで、労基法(+超勤4項目)との齟齬が生まれます。

「45時間ガイドライン」のとき、埼玉教員超勤訴訟の田中先生は次のように述べていました。

このガイドラインの意味するところは、「教員には残業代は出さないが、45時間までは残業をするように」ということなのです。この点において、私は明らかにおかしいと思っています。給特法によれば、超勤4項目(修学旅行・災害対応などの4つの仕事)を除き、教員については次のように時間外勤務は一切命じないことが原則として定められています。にもかかわらず、このように月45時間の残業を許容する取り組みを提示する文科省はどういった論理を根拠としているのでしょうか。

(引用:「公立学校教師の45時間残業ガイドライン」は職業差別である

今回のインターバル規制にあてはめれば、「教員には残業代は出さないが、21時間までは残業をさせてもOK」ということになります。残業を抑制するのがインターバル規制の趣旨のはずですが、逆にそこまでタダ働きさせてOKと解釈される恐れがあるのです。

◆包括論的解釈を根拠にしている

では、福岡市は労基法(+超勤4項目)と矛盾するインターバル規制をどのような論理でもってきたのでしょうか。

おそらくそれは「45時間ガイドライン」のとき同様、給特法の「包括論的解釈」を根拠にしていると思われます。

給特法の包括論的解釈とは、何なのか。上記超勤訴訟の田中先生の説明が分かりやすいので引用させていただきます。

文科省はいわゆる「包括解釈」を採っています。(本来、存在させてはならないはずの)超勤4項目以外の時間外労働についてまで、(超勤4項目に対応にしているはずの)教職調整額を支給しているのだから問題ない、教職調整額は超勤4項目外の業務までを「包括」して評価している、という論理です。

(引用:「公立学校教師の45時間残業ガイドライン」は職業差別である

この包括論的解釈により、超勤4項目+労基法を無効化する論理をもってきているのです。

そして、問題は上記のような法律との矛盾だけではありません。

このような取り組みを進めることにより、「包括論的解釈」がどんどん既成事実化されしまうことです。

「包括論的解釈」は唯一絶対の正解ではありません。意見の割れている解釈に過ぎません。

★まとめ

私は、法律との矛盾があり、「包括論的解釈」の既成事実化を促進しかねない、福岡市のインターナル規制には良い面ばかりでないことを指摘します。