いじめ高解消率の裏には「忙しいなかでこれ以上関わっていられない」がある

いじめ調査について、NHKの報道です。

高いいじめ解消率の裏には、早期発見・解決を求める現場への強い圧力がある。提出が義務づけられるようになった「いじめの報告書」では、解決したかまで管理される。

いじめ認知件数、過去最多 NHK『ニュースウォッチ9』2019年10月17日

◆「忙しいなかでこれ以上関わっていられない」

このなかで取材に応じた公立小40代教諭は次のように述べています。

「たくさんいじめを発見し、ことごとく解決する。そういう報告書が一番見栄えは良い。今までは時間を気にせずじっくりと向き合っていた。報告をしなくてはならなくなり、子どもの話を聞くより“早く解決したい”気持ちになってしまう部分がある。忙しいなかでこれ以上関わっていられない

忙しいなかでこれ以上関わっていられない…この気持ち、現場経験者としてよく分かります。だから、”握手”を演出して「解決」したことにする、と。

いじめ調査への対応について、拙著『問題だらけの小学校教育』では、次のように説明しました。

いじめ調査、まず教育委員会から送られてきたアンケート用紙を子どもに配布し、記入させるところから始まります。(中略)次に集計を行い、いじめを受けているという子どもに対し、それがどのようなことか一人ひとり呼び出して聞き取り調査をしなくてはなりません。(中略)それをいつ実施するかというと、特別にそのような時間が設けられているわけではないので、自習させながらの授業中だったり、給食の時間に廊下に呼び出したりして行います。そして、当然、問題がある場合は対応を行っていきます。当該の子どもを呼び出して仲裁をしたり、深刻ないじめであれば学年の教員と相談して対応方法を考えたりしていくのです。

一方で、教育委員会側もいじめを発見したにもかかわらず、それが「解決」処理されていなければ、後々大事になった際に、”何をしていたんだ!”と批判を受けてしまいます。だから現場に「解決」を急かすのです。

◆教員の忙しさを取り除くことが必要

ではどうしたら良いのか。

簡単です。取材を受けた小学校教諭が述べているように、問題は「忙しいなかでこれ以上関わっていられない」ということです。

いじめ対応の時間をしっかりと確保する、スクールカウンセラーなどの専門家の人員を配置するなど、教員の忙しさを取り除くことです。

教員の多忙を解消することが、児童生徒のためになるのです。逆に言えば、杜撰ないじめ対応が起きたときに、教員に忙しさを言い訳にさせないことです。