本当に「授業の持ちコマ数」で教員の勤務負担を測るのは難しいのか?

先日、教員の働き方改革において、日教組が教員1人が受け持つ授業時数の上限規制の設定を設ける意見書を出し、盛山文科大臣がそれを否定しました。

中教審で議論されている学校の働き方改革を巡り、日本教職員組合は9月25日に記者会見を開き、教員1人が受け持つ授業時数について、小学校20時間、中学校18時間、高校16時間の上限規制を設定し、それで足りなくなる教員の配置拡充を求める意見書を説明した。

教育新聞『授業持ちコマ数の上限規制で教員配置の拡充を 日教組意見書』(2023年9月23日)

研究者グループや教職員組合が提案している教員の受け持ち授業数に上限を設ける仕組みについて、盛山正仁文科相は10月6日の閣議後記者会見で、「国が一律に上限を設けるのではなく、実態に応じて柔軟に対応すべき」と否定的な考えを示した。(中略)盛山文科相は4月に公表した22年度の勤務実態調査の詳細な分析結果として、小規模校では持ちコマ数は多いものの在校等時間は短く、大規模校などでは持ちコマ数は少なくても逆に在校等時間が長い傾向にあったことを明らかにし、「持ちコマ数だけで教師の勤務負担を測るのは難しい」と指摘した。その上で、国が一律に上限を設けるのではなく、持ちコマ数が多い教員の校務分掌を軽減するなど、現場で柔軟に対応していくことが望ましいとの見解を示した。

教育新聞『教員の持ちコマ数、国が上限を設けるものではない 盛山文科相』(2023年10月6日)

盛山大臣は、「持ちコマ数だけで教師の勤務負担を測るのは難しい」と説明しました。しかし、その説明は本当に正しいのでしょうか。

広田教授のシュミレーション

8月28日に中教審の緊急提言を受けて行われた大学研究者の会見で、この持ち授業数と勤務時間について、日本大学の広田昭幸教授(教育社会学)が詳細なシュミレーションを公表しています。

会見では、6パターンのシュミレーションが提示されていました。ここでは、その6パターンを分かりやすくまとめました。

シュミレーション①事務仕事・会議を半減

事務仕事・会議を半減⇒小学校が週567分・中学校は週576分

(勤務時間週465時間よりも100分以上多い)

シュミレーション②成績処理の効率化、部活動を半減

成績処理の効率化、部活やクラブ活動を半減⇒小学校は週553分・中学校539分

(勤務時間週465時間よりも70分以上多い)

シュミレーション③生活指導、学校行事も半減

生活指導・学校行事を半減⇒小学校週517分・中学校週505分

(勤務時間週465時間よりも40分以上多い)

シュミレーション④生活指導、学校行事半減+持ち授業削減

生活指導・学校行事を半減+小学校週5.5コマ、中学校は週3.5コマ削減

⇒勤務時間に収まる

シュミレーション⑤持ち授業削減のみ

(生活指導やクラブ活動を現状のままの場合)小学校週9コマ・中学校週6コマ削減

⇒勤務労働時間に収まる

シュミレーション⑥自己研鑽あり・持ち授業削減

(1日30分の自己研修あり)小学校週11コマ・中学校週8コマ削減

⇒勤務労働時間に収まる

しかし週9コマ(小学校)減らさないと、勤務時間に収まらないというのは結構衝撃的です。9コマということは毎日午前授業レベルですから・・・。

このシュミレーションから分かることは、いくら事務仕事を効率化・削減しようが、持ち授業数を減らさない限り、教員の労働時間は勤務時間に収まらないということです。

実際、広田教授もこの会見で、

「思い切って授業の持ちコマ数を減らさない限り、所定の労働時間に収まる仕事にはならない」

と言い切っています。

★まとめ

持ち授業時数の上限規制について、盛山文科大臣は「持ちコマ数だけで教員の勤務負担を測るのは難しい」と説明しました。

しかし、広田教授のシュミレーションを見れば分かるとおり、持ち授業時数を減らさないことには話にはならないレベルで、持ち時数の多さが教員の負担になっているのです。

もちろん現実的には上限規制を行うとすれば、多額の予算と人員が必要になるわけで、そう簡単に認めるのは難しいのでしょう。

しかし、X(旧Twitter)上で多く挙がっているように、総合的な学習の時間や小学校英語を削減するなどすれば、予算ゼロで持ち時数削減は可能なのです。

授業の持ち時数の削減こそが真の教員の働き方改革になり、そのことが教員不足の解消につながるはずです。