その「いじめ防止対策推進法改正案」、本当にいじめ対策になります?

昨日突如として報じられた、「いじめを放置した教職員を懲戒処分の対象とする」とのニュース。

いじめを放置した教職員を懲戒処分の対象とすると明記した議員立法「いじめ防止対策推進法改正案」が、28日召集の通常国会に提出される。与野党の賛成多数で可決、成立する見通しだ。

改正案は、自民、公明、立憲民主、共産各党など超党派による「いじめ防止対策推進法に関する勉強会」(座長=馳浩・元文部科学相)が近く取りまとめる。いじめ防止の強化、徹底が最大の狙いだ。

条文の素案では、いじめ防止対策を「学習指導等と等しく重要な事務」と明記。いじめ防止を教職員の義務と位置付けた。現行でも、いじめをめぐり教職員の悪質な対応があれば、教育委員会などが認定し、地方公務員法に基づき処分している。いじめの放置や助長などが処分対象になると明示することで、「いじめ問題に関心が薄いケースが多い」との指摘もある教職員の意識改革を促す狙いがある。

(出典:読売新聞『いじめ放置した教員は「懲戒」…改正法案提出へ』2019年1月26日

しかしこの改正案、本当にいじめ対策として効果があるのでしょうか。

◆把握できていないのか、放置したのかの見極めは?

まず法案の定義になりますが、いじめを把握できなかったのか、それとも放置したのか、どのように見極めるのでしょうか。

いじめられた子供が明らかにアンケート等で表明していた場合は分かりやすいですが、例えば「先生、あの時見てましたよね?」と主張された場合は?

それで放置したということで懲戒処分になるのでしょうか。

◆気に入らない先生を陥れることができるという懸念も

また、児童・生徒が気に入らない先生を貶めるために、グループでいじめを利用して「先生がいじめを放置した」状況をつくりあげることもできる可能性があります。

◆「いじめ問題に関心が薄いケースが多い」は本当? エビデンスは?

上記記事中には、教員が「いじめ問題に関心が薄いケースが多い」ことが改正案の背景にあるとされていますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。

今は各自治体の研修でも繰り返しいじめの研修を行っているし、私自身の経験でも先生方がいじめ問題に関心が薄いとは到底思えないのですが・・・。

この、「いじめ問題に関心が薄いケースが多い」は本当なのでしょうか。

科学的な根拠、エビデンスはあるのでしょうか。

どうも、教育素人が考え出した思いつきで出した案のような気がしてなりません。

隠ぺいが念頭にあるのかもしれませんが、それは損害賠償や保身を考える校長・教育委員会であって現場の教員ではないのではないでしょうか。

◆懲罰で人が動くと思ったら大間違い

そもそも懲罰で人を動かそうという発想に驚かされます。

本質は、多忙すぎる教員の職場環境です。

いじめの発見、きめ細かい対応、いずれも時間に余裕がなければ行うことはできません。

必要なのは懲罰ではなく、多忙の解消ではないでしょうか。

◆本当は教員不信があるだけじゃないの?人気取り?

このような改正案が出される背景には、国会議員あるいは世論に根強い教員不信があるような気がしてなりません。

しかし、教員不信があったからといって、このような改正案で本当にいじめ対策となるのか、それが問題です。

国会議員のただの人気取りに終始しては何の意味もありません。

それどころか、教員の志望者がさらに減る事態になりかねません。

★まとめ

この改正案、本当にいじめ対策になります?

以上、元小学校教諭・東和誠による、『その「いじめ防止対策推進法改正案」、本当にいじめ対策になります?』でした!

◆新刊のお知らせ