9月10日、さいたま地裁で教員超勤裁判の第10回目が行われました。この訴訟、今後の日本の公立学校教員の超勤問題を左右する裁判だと思い、継続的に注目しています。
今回、10回目の裁判では、原告先生の意見陳述だけでなく、県側からは校長より『陳述書』が出されました。
先日、第10回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)で書面が公開されましたので、今回も全文読む余裕がない方に向けて重要と思われる部分を抜粋して整理しました。
今回の原告先生の主な主張
原告先生は以下のように、教員の仕事は「校長の主宰する職員会議において命令された業務」と主張しています。
・基本的には、仕事の発生は、職員会議(朝の職員朝会も含む)によります。まず、年度当初の職員会議で、学校長から学校経営方針が発表されます。次に、学校長より学校運営に関わる人事の発表があります。
・第2回目の職員会議からは、具体的な仕事内容についての提案がなされていきます。このように、教員が行う仕事については、職員会議に提案されることが基本的な手順になります。私たち教員が行っている仕事のほとんどが、この職員会議を通して発生しているのです。
・職員会議は、学校長が主宰する立場であるため、学校長の方針は、職員会議の中に十分盛り込まれることになります。反対に、教員にとっては、自分の意思にそぐわない内容の仕事が職員会議で通過した場合であっても、基本的にはその仕事をしなければなりません。このことは、組織の一員としての役割が強調されるようになった2000年以降、特に顕著になっていきました。
・学校長が教員に対して、個別に口頭や文書を通じて具体的な仕事を命じることはあまりありません。しかし、学校長が教員に個別的に仕事を命じなくても、学校現場では仕事が発生するのです。これは、教員にとっては、職員会議を通過し発生した仕事を学校長が命じた仕事であると受け止めざるを得ないからです。なぜなら、職員会議は学校長が主宰しており、学校長の判断で会議が成立するからです。職員会議を通過して生まれた仕事は、全て学校長によって命じられた仕事と解釈されるのは必然的であると思います。
校長『陳述書』
・毎週水曜日に全校児童が体育館に集まる「朝会」を行っていましたが、朝会の時に8時25分(勤務開始時刻)には児童と教職員の全員が体育館に集まるよう私から原告に指示をしたことはありません。また、8時20分(勤務開始)以前から勤務を開始するよう指示をしたこともありません。なお、児童が教室から体育館に移動する際は、常に付き添い指導をすることが必要なわけではなく、無言移動・無言待機が児童に身についた後は適宜の指導で足りるため、常時指導が必要なわけではありません。
・授業中は授業に集中することは当然ですが、児童にテストを行わせている間に、ドリルの丸付けなどの事務作業を行うことは可能であり、実際に行っている教員は多数いました。
・給食時の配膳等の作業は高学年になるに従って児童に任せられる部分が多くなり、給食時間中、常に児童に対する指導業務を行う必要がなくなります。特に年度当初における児童に対する指導が非常に重要であり、そこでの指導を適切に行うことにより、その後は 必要に応じた指導で対応が可能となります。なお、教員自身が給食を食べ終わった後、児童の様子を時々観察しながら、事務作業をすることも可能であり、実際に行っている教員もいます。また、除去食対応は、担任のみが行うわけではなく、給食調理員、 栄養教諭、養護教諭、管理職も点検を行い、事故の未然防止に努め ていました。よって、担任自らの責任のみで子どもの命を預からなければならないわけではありませんでした。
・清掃作業は高学年になるに従って児童に任せられる部分が多くなり、時間中、常に児童に対する指導業務を行う必要がなくなります。給食指導と同様、特に年度当初における児童に対する指導が非常に重要であり、そこでの指導を適切に行うことにより、その後は必要に応じた指導で対応が可能となります。なお、児童による清掃作業を見守りながら、教室内の掲示物の張り替え作業等を行っている教員もおり、そのような並行作業を行う事について、私から教員 に対し、並行作業を止め児童の指導に集中するよう指導したことはありませんでした。
・教員の休憩時間については、職員室で休憩を取っている教員もい れば、自発的に校庭で児童と遊ぶなど、子どもとの関わり等に時間を割いている教員もおり、過ごし方は様々でしたが、休憩を取ることが不可能な状態とは言えませんでした。
・職員会議では、校務分掌に基づく各主任から教育活動に係る様々 な提案がなされました。また、職員会議の前には、校長と教員で構 成する運営委員会が開かれ、建設的な話し合いの下に必要に応じて提案の修正が行われました。運営委員会でまとまった案を職員会議 の場で再度協議する中で、問題点が明らかになった場合は、当初の案が変更されることが何度もあったのであり、私の独断により決定 されることが多々あったわけではありません。
・(勤務時間前の)登校指導については、教員で構成する生徒指導部が計画し、私が各教員に協力依頼を行いました。教員個々の事情により、登校指導に参加しない教員もいましたが、その事について、私から教員に指導をしたことはありません。
・(勤務時間前)各教員に校庭のライン引きが週2回割り当てられていました。なお、校庭のライン引きは毎朝行わなければならない ものではなく、前日の放課後に行う事も可能でした。
・教室の整理整頓、清掃用具の確認、落とし物の整理、教室の修理、教室の掲示物の管理、作文のペン入れ、教室の掲示物作成などを行うことについて、私から原告に対して直接命じてはいません。教室の整理整頓は教員としての本来的な業務 であり、本件学校においても、全ての教員が行っていました。
・員の業務は取り組み方やどの程度の時間を費やすかについて、各教員に委ねられている部分が大きいという面があります。業務1つについて、詳細な遂行方法や従事時間を私から教員に対して指示す ることはありませんでした。各教員がそれぞれ創意工夫をし、児童にとって最も効果的な教育は何かを考えながら業務に従事していたと思います。
★まとめ
次回は2021年3月5日、証人尋問が行われます。