学期末に子どもが持ち帰ってくる通知表。
「この評価はどうやって決まったの?」「テストが良かったのに、なぜ“よくできる”ではない?」「先生によって評価は変わる?」など、疑問を持つ保護者も多いと思います。
私は公立小学校で担任をしていたとき、実際に通知表の評価や所見を作成していました。
この記事では、その経験をもとに、2026年現在の小学校の学習評価の仕組み、通知表の評価がどのように決まるのか、保護者は通知表をどう見ればよいのかを解説します。
なお、通知表の様式や具体的な評価方法は、自治体や学校によって異なります。
そもそも通知表とは?
通知表は、子どもの学習状況や学校生活の様子を、本人や保護者へ伝えるためのものです。
学校によって名称は異なり、「あゆみ」「通信簿」などと呼ばれることもあります。
通知表には一般に、
- 各教科の学習状況
- 学校生活の様子
- 担任からの所見
- 出欠の記録
などが記載されます。
ただし、通知表の様式や項目は全国で完全に統一されているわけではありません。
通知表と「指導要録」は別のもの
通知表と似たものに「指導要録」があります。
指導要録は、児童の学籍や学習・指導の記録を残すために、学校が必ず作成する公的な記録です。
一方、いわゆる通知表は、学校が保護者や児童へ学習状況などを伝えるために作成するものです。
両者は役割が異なりますが、学校によっては校務支援システム等でデータを連動させていることもあります。
参考:文部科学省「確かな学力」
2026年現在、小学校の評価は3つの観点が基本
現在の小学校では、各教科の学習状況を主に次の3つの観点から評価します。
- 知識・技能
- 思考・判断・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
これは2020年度から全面実施された現在の小学校学習指導要領に対応した評価です。
以前の通知表にあった「関心・意欲・態度」「知識・理解」などの観点とは整理の仕方が変わっています。
「知識・技能」は何を評価する?
「知識・技能」は、その教科で身に付けるべき知識や技能を理解・習得しているかを見る観点です。
例えば算数なら、
- 計算方法を理解しているか
- 正しく計算できるか
- 図形の性質を理解しているか
といった内容です。
テストの結果は、この観点を判断する重要な資料の一つになります。
ただし、通知表の評価は単純にテストの平均点だけで機械的に決まるものではありません。
「思考・判断・表現」は何を評価する?
「思考・判断・表現」は、身に付けた知識や技能を使って考えたり、自分の考えを表現したりできるかを見る観点です。
例えば、
- 文章を読んで根拠をもとに考える
- 算数で考え方を説明する
- 理科で実験結果から考察する
- 社会で資料を比較して理由を説明する
といった学習活動が評価材料になります。
そのため、テストでも「答えだけを書く問題」だけでなく、理由や考え方を書く問題が評価に使われます。
また、授業中の発表、ノート、レポート、作品なども評価材料になることがあります。
「主体的に学習に取り組む態度」は何を評価する?
この観点は、よく誤解されやすいところです。
単に、
- たくさん手を挙げた
- 先生の話を静かに聞いていた
- ノートをきれいに書いた
というだけで高い評価になるものではありません。
現在の評価では、
- 学習に粘り強く取り組もうとしているか
- 自分の学習方法を振り返り、改善しようとしているか
といった点を見ることが重視されています。
つまり、「真面目そうに見えるか」ではなく、よりよく学ぼうとしている過程を見るという考え方です。
通知表は「クラスの中で何番目か」を評価するものではない
現在の学習評価は、基本的に目標に準拠した評価です。
昔のように、
「クラスの上位何%が最高評価」
という形で評価するものではありません。
学習指導要領に示された目標や、学校が設定した評価規準に照らして、その子がどの程度到達しているかを評価します。
したがって、理論上はクラス全員が高い評価になることもありますし、逆に同じ観点で多くの児童が課題を抱えることもあり得ます。
「よくできる・できる・もう少し」は何点で決まる?
ここもよく質問されます。
旧版の記事では、私が勤務していた学校の例として「90点以上ならA、60点以上ならB」と紹介していました。
しかし、これは全国共通の基準ではありません。
現在も、評価規準や評価材料の扱いは、設置者や学校、教科・単元によって異なります。
そのため、
「テストが90点だから必ず最高評価」
とは言えません。
テストだけではなく、授業中の課題、発表、作品、レポート、振り返りなど、複数の資料を組み合わせて評価することがあります。
小学校の評価は何段階?
文部科学省の指導要録では、観点別学習状況について、
- A:十分満足できる
- B:おおむね満足できる
- C:努力を要する
という3段階で評価する考え方が示されています。
また、第3学年以上の各教科の評定については、3・2・1の3段階で記録します。
ただし、実際の通知表では、
- よくできる・できる・もう少し
- ◎・○・△
- A・B・C
など、学校によって表記が異なる場合があります。
テストの点数だけで通知表は決まらない
保護者からすると、いちばん分かりやすい評価材料はテストです。
そのため、
「テストはほとんど90点以上なのに、なぜ一番上の評価ではないの?」
と感じることもあると思います。
しかし、テストが主に測っているのは「知識・技能」の一部であることが多く、他の観点まで十分に測れるとは限りません。
例えば国語で、漢字テストが毎回100点でも、文章を読んで自分の考えを根拠とともに表現する部分では課題がある場合があります。
逆に、ペーパーテストでは点数が伸びにくくても、授業中の思考や表現で力を発揮する子もいます。
通知表の評価は担任一人の「主観」で決まる?
旧版の記事では「担任の主観がかなり入る」と強く書いていました。
現在も、人が評価する以上、判断の違いが完全になくなるわけではありません。
しかし、本来は担任の好き嫌いや印象だけで評価してよいものではありません。
学校では、学習指導要領や評価規準に基づき、あらかじめ評価方法を考えておくことが求められています。
また、同じ学年で評価方法を確認したり、学年会議などで基準をそろえたりする学校もあります。
したがって、
「担任がなんとなく決めている」
という理解は正確ではありません。
一方で、作品、発表、記述内容など、機械的に点数化しにくい学習活動では、教師の判断が必要になります。
先生によって評価が変わることはある?
同じ評価規準を使っていても、教師による判断の違いが全く生じないとは言えません。
特に、
- 文章表現
- 図工や音楽などの作品・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
などは、テストの点数だけでは判断できません。
そのため、学校では評価規準を共有したり、児童の作品や記録をもとに確認したりすることが重要になります。
保護者としては、通知表の記号だけを見るのではなく、個人面談や日頃の学習状況と合わせて見ることをおすすめします。
「もう少し」「C」が付いたらどう見る?
「もう少し」やC評価が付くと、不安になる保護者も多いと思います。
Cは、文部科学省の指導要録上では「努力を要する」状況を示します。
ただし、これを見てすぐに、
「勉強ができない」
「落ちこぼれている」
と決めつける必要はありません。
大切なのは、どの観点で課題があるのかを見ることです。
例えば、
- 知識・技能に課題があるのか
- 考えを説明することが苦手なのか
- 学習の進め方を自分で調整することが難しいのか
によって、家庭でできる支援も変わります。
気になる場合は、担任へ具体的に聞いてみるのが一番です。
通知表について担任に聞いてもいい?
もちろん構いません。
「なぜこの評価なのですか?」と責めるように聞くより、
「この観点で“もう少し”だったのですが、どの部分に課題がありますか?」
「家庭ではどのようなことを意識するとよいですか?」
と尋ねると、担任も具体的に説明しやすくなります。
通知表は、学校と家庭が子どもの学習状況を共有するための材料でもあります。
所見には何が書かれる?
通知表には、担任が文章で子どもの様子を書く「所見欄」がある学校もあります。
内容は学校によって異なりますが、
- 学習で頑張ったこと
- 学校生活で成長したこと
- 友達との関わり
- 係活動や行事での活躍
などが書かれることがあります。
近年は教員の業務負担軽減の観点から、所見を書く回数や時期を減らした学校もあります。
そのため、所見の長さだけで「熱心な先生・熱心ではない先生」と判断するのはおすすめしません。
所見は「良いことしか書かれない」の?
所見では、子どもの良さや成長を具体的に伝えることが重視されます。
ただし、必要な課題を全く伝えないという意味ではありません。
学校生活で継続的な課題がある場合は、通知表だけではなく、面談や電話、連絡帳などで事前に家庭へ伝えていることも多いです。
通知表を開いて初めて重大な問題を知る、という状態はできるだけ避けるべきだと私は考えています。
通知表で一番大切なのは「前回より○が増えたか」ではない
通知表を見ると、つい、
「前より最高評価が増えた」
「今回は一つ下がった」
という点に目が向きます。
しかし、評価の記号だけを比べても、その子が何を身に付け、何につまずいているのかは分かりません。
通知表を見るときは、
- 得意な観点はどこか
- 前学期から成長したところは何か
- 課題になっているところは何か
- 次に何を意識すればよいか
を見る方が大切です。
通知表をごほうびの基準にするのはおすすめしない
「“よくできる”が5個あったらゲームを買う」
といった約束をする家庭もあると思います。
しかし私は、通知表の記号だけをごほうびの基準にすることはあまりおすすめしません。
評価は教科や観点によって意味が異なりますし、結果だけを目標にすると、学ぶ過程そのものより「評価を取ること」が目的になりやすいからです。
それより、
「苦手だった算数を毎日練習した」
「文章を書くときに理由まで書けるようになった」
といった具体的な努力や成長を一緒に確認する方がよいと思います。
2026年現在も評価制度は今後変わる可能性がある
現在、次期学習指導要領に向けた議論が進んでおり、学習評価の在り方についても見直しが検討されています。
ただし、2026年現在の小学校では、基本的に「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点による評価が行われています。
今後制度が正式に変更された場合は、この記事も更新します。
まとめ:小学校の通知表はこう見る
- 通知表は、学習状況や学校生活の様子を本人・保護者へ伝えるもの
- 現在は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点が基本
- 他の子と比べる相対評価ではなく、目標に照らした評価が基本
- テストの点数だけで評価が決まるわけではない
- 主体的な態度は、単なる挙手回数やノートのきれいさだけで評価するものではない
- 「もう少し」が付いたら、どの観点に課題があるのかを見る
- 所見の長さだけで担任の熱心さを判断しない
- 評価の記号より、子どもの成長と次の課題を見ることが大切
通知表は、子どもを順位付けするためだけのものではありません。
「今どこまでできていて、次に何を伸ばせばよいか」を考える材料として見ると、通知表の見方も少し変わってくると思います。