学校の世界の差別を橘玲氏が指摘している日本の差別的労働慣行から再考してみた

この指摘は一般の民間企業を対象に書かれていますが、では学校はどうなのか。

今回は、日本の教員の労働慣行(環境)は差別的なのかについて、改めて考えたいと思います。

1.正規・非正規の差別

橘氏は、

労働者を「正規」と「非正規」に分け、同じ仕事をしているのに異なる待遇にするのは差別以外のなにものでもありません。

と述べています。

これは多くの人が指摘していることです。

学校ではどうかというと、学校には多くの非正規の職員がいます。

  • 時間講師(非常勤)
  • 常勤講師
  • ALT(外注の場合もあり)
  • スクールカウンセラー(正規の場合もあり)
  • 事務補助

この中で同一労働にも関わらず異なる待遇をしているという観点からいうと、常勤講師が非常に問題ありです。

彼ら常勤講師は、正規の職員が出産・病気になり休職する際に代わりに採用される非正規の職員です。

彼らは担任も担当し、正規の教員とまったく同じ仕事を要求されるにもかかわらず、身分は不安定で正規職員と異なり昇給もありません。

また、こんな不可思議なことも起きるようです(学校の非正規ならではですね)。


正規と非正規の職員の違いは、自治体の採用試験に合格したかどうかだけです。

2.出向社員・プローパー社員の差別

橘氏は、親会社から出向している社員と子会社の社員の待遇が異なることも同一労働・同一賃金の原則から鑑みて、差別だといいます。

子会社に出向した社員とプロパー社員で給与・待遇がちがうという慣行も当たり前のように行われていますが、これも身分差別です。

学校の世界では教育委員会に出向になることがこれに当たると思いますが、特に給与・待遇が異なることはありません。(むしろ昇進すので給料が上がる)

文科省の役人が現場の校長に就く場合もあるようですが、こういったケースはさほど多くありません。この場合、民間企業の出向社員とプロパー社員と同様、給与・待遇は異なる、ということなりますが。

3.サービス残業は奴隷労働

橘氏は、サービス残業は「現代の奴隷制」と斬っています。

サービス残業という習慣は日本以外にはありません。世界標準ではサービス残業は「奴隷労働」です。

これはもう、学校は、サービス残業の山ですよ、いや森といっていいかもしれません。

サービス残業の森。

学校の先生たち、子どもたちのためにやっていると自負しているかもしれませんが、世界標準では「奴隷労働」のようです。

まあ、私も人のこと言えるたちではなく、たくさん奴隷労働をしていたわけですが・・・。

4.年齢差別

年齢で区切る、定年退職、新卒一括採用についても問題があると橘氏は述べています。

定年は一定の年齢に達した社員を強制解雇する制度ですから、欧米では年齢差別と見なされるようになりました。新卒一括採用にいたっては日本の現行法でも違法で、厚労省が適用除外にしているだけです。

採用に関しては、教員採用試験、一応は年齢制限はありますが、50代だったりするので、民間企業よりはマシといえるかもしれません。

定年退職に関しては、民間企業とまったく同じですね。校長なんて前年(60歳)と全く同じ仕事をしているのに、翌年(61歳)は給与が約半分になるといいます。

だから、教育委員会としては予算を抑えられて(しかも経験もあるので)重宝しているようですが。

5.本社採用・現地採用の差別

日本の会社の本社採用と現地採用における給与・待遇の差は、世界的にも批判されている、と橘氏は指摘しています。

海外に子会社を持つ日本企業は本社採用を異なる人事体系で管理していますが、これは国籍差別としてすでに問題視されています。

海外の日本人学校がこれにあたるのではないかと思いますが、教員に関しては現地採用をしていないので、これについては学校の世界は該当しないと思われます。

6.男女差別

昇進のためには、長時間労働を強いる日本の企業は実質的には男女差別を行っていると述べています。

日本企業は形式的には男女平等になっていますが、現実には長時間労働(とサービス残業)によって会社に“忠誠心”を示さないと昇進できず、子育てをしている女性は管理職になれません。

学校では、教員は公務員なので産休・育休の制度が整っていること、学校は年度が変わるとリセットされるので復職しやすいなどの点では民間企業より恵まれてはいますが、一方で結局長時間労働をしないと昇進できないという点では民間企業とまったく同じ(特に教頭・副校長、教育委員会の指導主事)です。

★まとめ

この中でも学校の世界で、最も問題がある差別は、正規・非正規の差別であると私は思います。

まったく同じ仕事をしているのに異なる給与・待遇にして、学校・教育委員会・文科省は常勤講師の先生たちを都合よく使い捨てをしています。

このように常勤講師は差別を受けるので、成り手がいなくて、学校・教育委員会は人材の確保に四苦八苦しているようです。

大阪府内の公立小中学校で、産休・病休を取った教諭の代わりなどを務める講師が足りずに学校への配置が1カ月以上遅れる事態が、昨年度に少なくとも101校で120人に上っていたことが分かった。(出典:毎日新聞「小中教員不足!大阪府で講師足りずに3か月授業なし」2014年4月10日)

普段、子どもに「いじめ・差別はいけない!」とか偉そうに言うくせに、自らは講師に対して差別を行う学校・教育委員会・文科省。(差別を行っている自覚もないでしょう)

人材確保をしたいのならば、まずは自らが学校・教育委員会・文科省から差別をやめるべきだと私は思っています。予算がつけられなければ、かなり難しいとも思いますが。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「学校の世界の差別を橘玲氏が指摘している日本の差別的労働慣行から再考してみた」でした!