名古屋大学大学院准教授・内田良氏がYahooニュースに『学校の先生 なぜ休憩とれない? 「教師の一日」労基法の休憩 記載されず』という記事を上げています。
記事では、
- 多くの教員が実質的に休憩時間を取っていないこと
- それどころか休憩時間を知らない(把握していない)教員が多いこと
- 特殊な職場であるからこそ休憩時間の説明が必要ははずなのに初任者研修資料「教師の一日」には休憩時間の記載がないこと
- 無法地帯に陥っている学校現場に法律知識が必要なこと
等について述べられています。
つまり、内田氏の指摘では、「なぜ休憩がとれないか?」という答えとしては、「休憩時間を知らない教員が多いから」(+「特殊な職場だから」)ということで、現場経験者としてもそれは正しいと思うのですが、それだけではないとも思います。
そこで今回は、私が考える「学校の先生が休憩がとれない理由」について、書いていきます。
◆「休憩時間なし」が好都合の人間たちがたくさんいる!
学校には、休憩時間がない方が都合が良い人間が多くいます。
- (市区町村)教育委員会
- 校長、副校長(教頭)
- 生活指導主任、特別活動主任、体育主任などの主任の教員
- 上に媚びる教員
- 早く帰りたい教員
まず、(市区町村)教育委員会です。教育委員会は民間企業でいえば雇用主にあたる存在で、教員をできる限り働かせたい意図があります。例えば、市区町村教育委員会は、議会や都道府県教育委員会、文科省から調査や施策を数多く要請されますが、それが勤務時間(休憩時間)を遵守していてはこなしていくことができないことを知っています。さすがに大っぴらに教員に休憩時間は関係ないとはまでは言い(書き)ませんが、多くの場合、教員の無知に乗じて自ら進んで休憩時間には言及しません。(内田氏指摘の「教師の一日」が良い例です)
次に、校長、副校長等の学校管理職。この人たちも教育委員会と同じです。できる限り教員に働いて貰わなければ困る立場です。外部の方には信じられないでしょうが、多くの学校では年度当初から勤務時間内に業務が収まるように年間計画を立てていません。ですので、平気で休憩時間に会議を組み込みます。(会議が長くなって休憩時間にズレこむのではなく、最初から組み込まれていることが多い)
そして、主任の教員たちのなかにも休憩不要教員がいます。彼らも仕事を回すため(自らの評価を下げないため)には休憩時間の会議や仕事を必要とします。何せ、年間計画からして勤務時間内に収まるように時間設計していないので。それで、主任以外の教員も彼らとの人間関係もあるので、休憩時間に協力して、あとは日本人得意の同調圧力によって休憩時間が有名無実化します。
さらに上に媚びる教員も稀にいます。勤務時間も休憩時間も関係なく働くよ~っていう教員です。管理職はこういう教員を評価します。よく頑張ってるね、と。そしてこういう人たちが出世して・・・という悪循環です。
最後に、早く帰りたい教員です。自治体によって休憩時間の設定時間は異なるようですが、私が勤務する自治体では児童が下校した16:00前後に設定されていました。ですので、休憩時間を取ることより、休憩時間なしで働いて一刻でも早く帰ることを選択する教員もいます。彼らは仕方なくしているのでしょうがない側面もあるのですが、一方で上に都合よく使われる土壌を作ってしまっているということもできます。
◆ちなみに、私個人の休憩時間をめぐるたたかい
なぜこんなに休憩時間について書いてきたかというと、小学校教員時代、幾度も職場に休憩時間の要求をしてきたからです。
私が勤務した3校の小学校では、休憩時間がなくても、組合は何もしないし、管理職も同僚教員も休憩時間を平気で無視するような職場環境でした。
特に初任校では、民間企業退職直後だったこともあり、強い違和感を感じたので、職員会議等で休憩時間の徹底を何度もしつこく要求しました。
親心からか何人かの先輩教員から「波風が立つからもう言わない方が良いよ」とか「民間企業とは違うよ」とか「何となく上手く休憩する時間を見つけていった方が良いよ」等とアドバイスもされましたが、1年くらい継続しました。
すると、少しづつではあるものの、段々と職場全体が休憩時間を意識するようになり、どうしても難しいとき以外は(それでもおかしいのだが)、休憩時間に会議や仕事を組み込むことがなくなりました。
しかし、転勤となった2校目では初任校の最初の状態で、休憩時間がまったくありませんでした。それどころか勤務時間前に子どもを教室に入室させる学校運営になっており、休憩時間よりもそちらを優先して改善することに注力したため、変えることができませんでした。
そして、3校目。ここでも休憩など”あって無いようなもの”でまったく取れませんでしたが、それよりも体調を崩してしまい、休職⇒退職をしてしまったので、ここでは何もできませんでした。
そんな私が常に思っていたことは、
- ただでさえ大変な仕事なのにこんな余計なこと(当然守られるべきこと)に労力を奪われなければいけないのだろうか?
- 組合員は一体何をやってるんだ!(どの職場にも何人か組合員がいた)
- 子どもに決まりを守るよう教えるくせに、職員室は無法地帯じゃないか!
ということです。
そして、なぜ私がここまで休憩時間にこだわっていたかというと、それは私は他の人と比べて体力がないからです。
このままではいつか倒れるのではないかと常に恐れていて、それが現実になってしまいました。
世の中には私のように、休憩時間がないことにより(それだけではないが)、体調を崩してしまい、退職を余儀なくされている教員もいるのです。
★まとめ
『学校の先生がなぜ休憩をとれないか?』
それは、「その方が好都合の人がたくさんいるから」です。
また、内田先生の指摘のとおり、休憩時間を知らない教員が多いからということもあるでしょう。
しかし、休憩時間を知らない(把握していない)教員、私から言わせれば、世間知らずにも程があります。
そして、休憩時間を知ったうえで、黙殺している教育委員会・管理職、あなたたちは違法行為を行っていることを自覚するべきです。
言うまでもなく、休憩時間は労働者に与えられた正当な権利です。学校が特別な職場だからといって、時間設定の配慮はあっても、休憩時間がはく奪される理由にはならないと私は強く思います。
以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、「内田先生の新記事『学校の先生なぜ休憩とれない?』に現場経験者として答えると、「その方が好都合の人がたくさんいるから」ということになる」でした!
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