過去の教員の残業代未払い訴訟・安全配慮義務違反訴訟の判例を分かりやすく整理した

現在、埼玉県の小学校教諭が残業代未払い請求を、大阪府の高校教諭が安全配慮義務違反による損害賠償請求を、それそれ県、府を相手取り訴訟を起こしています。

産経新聞『時間外勤務の手当支払い求め小学校教諭が県を提訴 埼玉』(2018年9月25日)

産経新聞『「長時間労働で適応障害」大阪府立高校教諭が府を提訴』(2019年2月25日)

これらの裁判を考えていくうえで、過去の判例、裁判所の判断等が必要になっていくと思いますので、今回はそれらの情報を整理しました。

◆1999年愛知県大府市の裁判(精神的苦痛による損害賠償請求)

この裁判は、時間外勤務に追われて、教員としての本来の仕事が十分できずに精神的な苦痛を受けたとして、愛知県大府市の学校教員が、愛知県と大府市を相手取って損害賠償を求めた訴訟です。

判決は、1審名古屋地裁、2審名古屋高裁、いずれも原告の訴えを棄却。

以下、判決文の引用。

(会議について)「黙示の時間外勤務命令の発令を肯定するほど原告の自由意志を強く拘束する状況下にあったとは認めることはできない。結局、各時間外勤務は、原告の自発的、自主的意志に基づいて遂行されたものと推認するのが相当である」

(進学関連業務の処理について)「学年会や進学関連業務は、いずれも教員の本来の職務に付随する業務であること、学年会は、学年主任である原告が主催するものであり、その開催の要否、時期、議題、進行等は原告の判断にゆだねられていたこと等から給特条例七条の立法趣旨にもとるものとまではいまだ認められず、これらの時間外勤務は原告の自発的、自主的意志に基づいて遂行されたものと推認するのが相当」

(テスト作成・採点業務について)「校長は期末テストの日程を掲示しただけで、問題の作成、テストの実施、採点を命じておらず、原告の自発的、自主的意志に基づいて遂行されたものと推認するのが相当」

(出典:名古屋高裁判決文(PDF)

◆2002年北海道の裁判(残業代未払い請求)

この裁判は、超過勤務が常態化しているのに手当が支給されないのは違法だとして、北教組に加入する公立学校の教員1155人が、道と96市町村を相手取り、起こした訴訟です。

判決は、1審札幌地裁、2審札幌高裁、いずれも原告の訴えを棄却。(最高裁は上告棄却・不受理)

以下、判決文の引用。

(給特法が労働基準法37条を適用除外しているとの原告の訴えに対して)「給特法、給特条例の規定は教員の職務と勤務の特殊性に照らし、極めて合理的なもの(中略)また、教職調整額が超勤手当不支給の代償措置であり、勤務時間の内外を通じて包括的に再評価して新設されたものであるから、超勤しても超勤手当の支給を受けられない」

「超勤に至った事情や超勤の職務内容等に照らし、超勤を命じられたと同視できるほど教員の自由意思を極めて強く拘束する形態で超勤がなされ、それが常態化しているなど、給特法・条例が超勤を限定している趣旨を没却するような事情が認められる場合には超勤不支給の条項の趣旨が没却されているとして、超勤手当の支給を認めるのが相当であると判断されるべきものであるが、教員は必然的に超勤になることを前提に職員会議で職務分担を決めているのだから、超勤は自主的に行ったものである」

(出典:労働法律旬報2018年12月号『超勤手当訴訟の教訓』)

◆2004年京都市の裁判(安全配慮義務違反による損害賠償請求)

この裁判は、京都市の小中学校教員が違法な超過勤務の是正を求め、安全配慮義務違反による損害賠償を求めた裁判です。

判決は、1審京都地裁、2審大阪高裁、いずれも原告の訴えを認める判決。しかし、最高裁でその判断が覆され、棄却。

まず、大阪高裁の判決文の引用。

「時間外勤務の時間からすると、配慮を欠くと評価せざるを得ないような常態化した時間外勤務が存在していたことは推認できたこと、時間外勤務が極めて長時間に及んでいたことを認識、予見できていたことが窺われるにもかかわらず、改善等の措置を特に講じていない点において、適切さを欠いた」

(出典:京都市教職員組合2011年7月13日声明)

次に、最高裁の判決文。

「使用者や管理監督者に安全配慮義務があり、この考え方は、公立学校の教職員にも適用されるが、原告は時間外勤務命令に基づくものではなく(中略)強制によらず各自が職務の性質や状況に応じて自主的に上記事務等に従事していたもの」

「外部から認識し得る具体的な健康被害又はその兆候が生じていた事実が認定されておらず、さらに、各校長が健康状態の変化を認識し又は予見することは困難な状況であった」

(出典:京都市教職員組合2011年7月13日声明)

◆2004年埼玉県川口市の裁判(残業代未払い請求)

この裁判は、埼玉県川口市の小中学校教員が超過勤務分の未払い残業代を求めた裁判です。

判決は、1審さいたま地裁、2審東京高裁、いずれも原告の訴えを棄却。

以下、判決文の引用。

「正規の勤務時間中には必要な教育活動が終わらず、時間外勤務をせざるを得ない状況にあったことが優に認められるが(中略)、原告の意思・判断に任されていて、給特法が想定する自主的、自発的労働の範疇に属すると言わざるをえない」

「部活動の指導は、時間を減らしたり他の担当者に変わってもらうことも十分可能であった」

(出典:全日本教職員組合談話2009年10月1日)

★まとめ

上記に挙げた過去の裁判は、今回の埼玉と大阪の裁判を考えていくうえで大きなヒントとなり得ると考えます。

これらの判例から考えるに今回の裁判においても判決のポイントは、

  • 超過勤務が「自主的」であるのかどうか
  • 具体的な健康被害があったのかどうか

ではないかと類推できます。

埼玉と大阪の訴訟について注視していきましょう。

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