【速報】第6回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた

12月13日(金)、さいたま地裁で教員超勤裁判の第6回目が行われましたので、その取材に行ってきました。

本記事は、双方の主張全文がアップされている、第6回裁判資料(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)から、全文読む余裕がない方に向けて、重要な部分のみを抜粋してまとめたものです。

◆前回までの記録

第1回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
第2回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
第3回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
第4回埼玉県教員超勤訴訟の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
第5回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた

◆今回の県の答弁

まずは前回の原告先生の主張(反論)に対し、県も再反論してきましたので、抜粋しました。

休み時間に事務作業が可能かについて

県の答弁 休み時間中に、児童の連絡帳を読んだり返事を書くなどの業務に従事している教員がいることは認めるが、時間を有効に活用しながら事務作業を行っている教員や自発的に児童と遊んでいる教員も多くいるなど、休み時間の使い方は教員によって様々である。【第1回答弁書】
原告先生の反論 休み時間を利用して原告がやらなければならない業務は多岐にわたっていた。教員は、その日にやらなければならないことで精一杯であり、トイレに行く暇もなかった。そのため、教員に課された事務作業の多くは、児童が下校した後の時間帯に回さざるを得ないのが実態であった。この点に関し、被告は、「休み時間の使い方は教員によって様々である」と主張するが(答弁書11頁)、否認する。教員は、休み時間まで校長に管理されており、校長に権限で物事が決められるため、教員の立場ではどうにもならないのが実態であった。【第5回原告準備書面】
今回の県の答弁 休み時間の勤務状況について、校長が個々の教員の管理をしているということはない。また、すべての教育活動について校長が独断で決定しているわけではなく、可能な限り教職員の意見を聞きながら、最終判断をしている。

給食・清掃中に事務作業が可能かについて

県の答弁 給食指導や清掃指導が不可欠な事は確かであるが、給食や清掃の作業は高学年になるにしたがって児童に任せられる部分が多くなり、時間中、常に児童に対する指導業務に従事する必要がなくなる。教員自身が給食を食べ終わった後、児童の様子を時々観察しながら、事務作業をすることも可能であり、実際に行っている教員もいる。また、清掃についても児童による清掃作業を見守りながら、教室内の掲示物の張替え作業等を行っている教員もおり、そのような並行作業を行う事について、校長から教員に対し、並行作業を止め児童の指導に集中するよう指導したことはない。【第1回答弁書】
原告先生の反論 ・被告は、「給食や清掃の作業は高学年になるに従って児童に任せられる部分が多くなり、時間中、常に児童に対する指導業務に従事する必要がなくなる」、「教員自身が給食を食べ終わった後、児童の様子を時々観察しながら、事務作業をすることも可能」と主張するが(答弁書10頁)、否認する。特に、平成30年3月まで勤務していた校長は、学校経営の方針として無言行動を掲げており、「給食指導」を徹底することを教員に求めていたため、給食時間中に事務作業をすることは不可能であった。

・「清掃指導」のやり方は、校長が主宰する職員会議で提案され、校長の権限により決定されていた(甲42)。 具体的には、清掃時間中は、児童に無言で掃除をさせること、教員も児童と一緒に掃除を行うことが、校長から命じられていた。(中略)清掃指導は、校長により、学校経営の重点項目に入れられており、清掃指導を徹底しているか否かは、教員の評価にも関わってくるものであった。 このような状況で、原告が清掃時間中に事務作業を行うことは、不可能である。【第5回原告準備書面】

今回の県の答弁 ・現在、給食時間中に工夫しながら事務作業を行っている教員は多く、不可能ではないし、給食時間中に事務作業を行う事を禁止していない。

・清掃時間に事務作業を行うことは可能である。

・清掃指導を徹底しているか否かで教員が評価されるわけではない。

勤務開始前の登校指導割り当てについて

原告先生の主張 平成30年4月、職員会議で反対意見を出したが、月に1回、勤務開始時刻よりも1時間程度早い時刻から登校指導の担当を割り当てられた。教員に対して正規の勤務時間外の業務を命じることは、労働基準法32条に明らかに違反している。【第3回準備書面】
県の答弁 ただし、割り当ては教員で構成する生徒指導部が計画し、校長が各教員に協力依頼を行ったものであり、校長が割り当てたものではない。校長は登校指導を命じておらず、各教員に協力依頼をしたのである。
原告先生の反論 登校指導は、校長が主宰する職員会議によって実施が決定され、各学年の担任教員に担当日と担当場所が割り振られていたものである(甲31)。したがって、校長の「協力依頼」に応じて教員が自主的に協力していたものではなく、校長の明確な関与の下、教員がその職務を全うするために行われていたものであり、登校指導に従事する時間は、労基法上の労働時間に当たることが明らかである。(中略)本来、校長は、勤務時間外に登校指導を行うことを教員に命じてはならないはずである(労基法32条、給特法6条1項)。【第5回原告準備書面】
今回の県の答弁 校長は登校指導を命じておらず、各教員に協力依頼をしたのであり、校長は協力してくれた教員に対して、勤務時間の割り振り変更を行ったのである。なお、個々の事情により、登校指導に参加しない教員もいたが、その事について、校長から指導をしたことはない。

◆原告先生の新たな主張

続いて、今回も原告先生からの新たな主張がありましたので、要旨をまとめました。

・本書面では、児童を下校させ、会議・研修会等、職員全体ないし集団で行う業務が終了した後、退勤時刻である17時までの時間、及び17時以降の勤務時間外の時間を利用して行っていた業務について、業務の内容、当該業務が校長等の明示ないし黙示の命令により義務づけられたものであり、自発的な業務ではないこと、当該業務にかかる概算の年間総労働時間を主張する。

・労基法上の労働時間該当性は、校長による明示の「時間外勤務命令」があったか否かによって左右されるものではない。教員が勤務時間外に教員としての業務に従事し、その成果を校長が受け入れている限り、当該時間は労働時間に該当する

・以下に述べる原告の業務の多くは、職員会議を経て決定された業務である(中略)。職員会議によって決定された事項は、教職員間の協議に基づき、各教職員が自主的に協力するという性質のものではなく、校長が自らの権限と責任において決定した、校長による業務命令の性質を有している。

原告準備書面では上記の主張に続き、時間外に行っている業務について、一つひとつの内容が詳細が書かれています。分量が多いため、本記事では割愛しますが、これを読むと、それらの業務が決して自発的なものではなく、校長による黙示の勤務命令に該当するという原告先生の主張がよく分かります。

下記は、それらの業務を数値化したものです。

(出典:第6回原告準備書面)

★まとめ

まず、県の答弁ですが、従前の主張どおりで、これといって新しい主張はなかったように思います。個人的には、前回批判があったにもかかわらず、繰り返し、「(時間外の登校指導について)命令ではなく協力依頼」「休み時間にも事務作業が可能」「勤務時間内において、事務作業を終える事が不可能な状況とまでは言えない」と主張してきていることについては閉口せざるを得ません。

それから、原告先生の新たな主張は、職員会議を通じて校長に命令された40の業務について、一つひとつの内容を詳細に説明し、決して「自主的なものではないこと」「勤務時間を大幅に超える時間(977時間)を要すること」を示しました。977時間は年間出勤日が210日だとすると、一日約4〜5時間であり、仮に県が主張する休み時間、給食時間、掃除時間等に事務作業が可能だとしても、勤務時間を大幅に超える業務量だというわけです。

改めて今後の争点を整理すると、『直接的な時間外勤務命令がなくても、その業務が職員会議で決定された業務【業務性】であり、かつ校長がその成果を受け入れている【使用者の関与】ときに、それは原告側が主張する「黙示の超過勤務命令」に該当するのかどうか』(校務分掌等の勤務時間には収まらない事務仕事だけではなく、県が主張する「命令ではなく協力依頼」についても、「黙示の超過勤務命令」に該当するのかどうか。も含む)、ここが本訴訟の最大の争点になると思われます。

Twitter等で、皆さんの感想や意見などについて教えていただければ幸いです。

次回公判は、2月21日(金)だそうです。

※977時間は原告準備書面にもあるように会議等以降の時間からの勤務時間も含むものです

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