「アクティブ・ラーニング」はあくまでも学習法の一つであり、上から押し付けられるべきではないと元教員が考える3つの理由

アクティブ・ラーニング(問題課題解決型学習)とは、学習者が自ら問題を発見し解決していく学習のことを指します。

小学校では、算数を中心に行われています。

端的にいうと、公式を覚えるのではなく、自ら公式を見つけ出す学習ということができます。

一見良さそうな学習に思われるかもしれませんが、子どもの発達段階、学力レベル、学習内容によっては効果的でない場面も多々あります。

確かに、「講義型の一方的な教師⇒子どもの授業」だけの指導も良くないですが、場面に応じて使い分けるべきものなのです。

にもかかわらず、問題は、教育委員会や管理職は「これさえやっていれば大丈夫(上にアピールできる)」と形式だけ現場に強制していることです。(次期学習指導要領に盛り込まれる予定のアクティブ・ラーニングも同様の危惧があります)

諸外国の初等教育段階の算数で、これほどまでにしつこく課題解決型学習を実施している国はありません。

なぜなら、効果的な場面とそうでない場面があるからです。

今回は、「アクティブ・ラーニング」はあくまでも学習法の一つであり、上から押し付けられるべきではないと元公立小学校教員が考える3つの理由です。

1.学力下位層の子どもが犠牲になる

「アクティブ・ラーニング」では、まず学習者自ら課題を見つけることが学習のスタートになります。

しかし、既習事項も理解していない学力下位層の児童は、新たな学習において自ら学習課題を見つけることなんて無理に決まっています。

ですから現場では無理にこの学習法を実践しようとすると、「まるで子どもが自ら課題を見つけたの如く教員が課題を押し付ける」ことになるのです。

そんなことをされて、そうでなくても勉強が苦手な子どもたちは益々勉強が嫌いになります。

次に、課題を解決する段階に入りますが、課題解決は、既習事項お用いて行うので、既習事項を習得していない彼らは、自ら課題を解決できるわけがありません。(というか、問題は更に根深くて、答えを提示しても理解できない子どもも少なくないです)

子どもたちは分からないし、できないので、必然的に学習意欲が駄々下がっていきます。

そして彼らは授業中におしゃべりをし始めたり、学習を放棄してしまったりするのです。問題解決型学習を行わなければ必死に食らいついてくる子どもたちも、です。

いわゆる「学力底辺校」に勤務していた時の私は、問題解決型学習は授業の不成立を招くと分かっていたので、教育委員会の指導主事や管理職が参観するとき以外は、この学習法はあまり活用しませんでした。

学力下位層の子どもたちにとって、アクティブ・ラーニングは苦痛でしかありません。

2.学力上位層は既に答えを知っている

一方、学力上位層の子どもたちは、塾や通信教育で勉強しているので、既に答えを知っています。

なので、学力水準の高い学校で勤務したときの私もそうでしたが、現場では「既に答えを知っている子どもたちに向かって、課題を見つけさせ、解決させるフリ」をさせることになります。

こんなの、子どもたちにとっては退屈でしかないです。私が子どもだったら、教員のことを内心バカにすると思います。

答えをあらかじめ知っていても、普通に問題を解かせれば、それはそれで勉強になるのに、この学習法は、学力上位層の子どもたちにとっては、「既に分かっていることを再度発見させる」という、無意味極まりない学習でしかないのです。

3.練習問題を解く時間がなくなる(算数の場合)

特に算数においては、九九の原理を知っているだけではダメで、暗記が必要なことからも分かるように、問題や公式を理解するだけでなく、何度も反復練習することで実際に自分で解けるようになることが大事です。

しかし、このアクティブ・ラーニングでは、課題を見つけ、解決するという作業に多くの時間が費やされるので、練習問題を解く時間がなくなります。

1時間(45分)の授業において、1問だけしか取り組めないことも少なくありません。

取り組む練習問題数の減少は、特に学力下位層の子どもたちを直撃します。

上位層の子どもたちが数問で習得できるところ、彼らは学習内容の習得に多くの問題数を要します。

しかも彼らにとっては練習問題をたくさん解くことは学習内容の習得だけにとどまらず、「分かった!」「できた!」という学習意欲の向上にもつながるのです。

ですから、私は担任時代、上にはバレないようにこの学習法より、数多く問題を子どもたちに解かせていました。(結果、学力調査等で学級の成績が上がったので、管理職から理由を聴かれましたが、ダメ出しされるのが見えていたので、適当に答えた覚えがあります)

算数学習にとって重要な、練習問題を解く時間を削ってしまう、アクティブ・ラーニングは精選して行われるべきと考えます。

★まとめ

私は、「アクティブ・ラーニング」を全否定するつもりはありません。

上の条件をクリアできれば、つまり学力下位層の子どもたちが既習事項を習得していて、上位層もまだ知らない、(算数なら)練習問題に取り組む時間を確保できる、このような条件が揃えば、非常に有意義な学習になると思っています。

しかし、現状の上からの馬鹿の一つ覚えのような押し付けは百害あって一利なしです。

現場の教員が学習内容や子どもの実態から自ら判断して学習法を選択すれば良いのです。教育委員会や管理職は、その環境づくりに力をいれるべきなのです。

以上、元公立小学校教員トウワマコトによる、『「アクティブ・ラーニングはあくまでも学習法の一つであり、上から押し付けられるべきではない3つの理由」』でした!

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