※拡散希望します
第4回裁判が2週間後になりました。今、弁護士と準備を進めているところです。
7/12(金)10時半〜
さいたま地裁裁判後には報告会を実施いたします。
ぜひお越しください。 pic.twitter.com/6720V7YmRi— 埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト (@trialsaitama) 2019年6月28日
◆これまでの裁判
第1回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
第2回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
これまでの双方の主張を争点ごとに突き合わせて整理した―来週に迫った第3回埼玉県小学校教員超勤裁判―
第3回埼玉県教員超勤裁判の原告先生と県の主張の要旨をまとめた
◆今回の裁判の概要
前回第3回裁判で、裁判長から「双方の主張がかみ合っていないため、次回までに議論の枠組み提示するように」と原告側に指示がなされました。
今回はその指示を受けての、原告側の主張となりました。なので、今回は具体的な超勤のケースを挙げて主張していくというものではなく、原告の主張を支える法的な枠組みを示すものとなりました。(今回はほとんど法律の話です)
なお、今回は埼玉県からの新しい答弁はありません。
ということで、先に言っておきますが、今回の原告準備書面、すごいです。
このページでは要旨をまとめますが、ぜひ全文(埼玉教員超勤訴訟・田中まさおのサイト)にあたることをオススメします。
今回のポイントは、次のとおりです。
- 前提として、教員にも労基法が適用される
- 36協定を結ばず超勤4項目外の残業を行わせるのは労基法違反
- 労働(残業)か否かは「使用者の関与」「業務性」で決まる
- 時間外勤務命令がなくても校長の制止がなく黙認すれば労働と判断されるべき
なかでも、何をもって労働と判断されるのかについてページを割いて丁寧に論理が積み重ねられています。
では以下、主な主張について抜粋していきます。
◆原告先生の主な主張(抜粋)
本件では、労基法32条、34条、35条、36条に違反する実態を認め、公立学校の教員に対しても正しく労基法を適用することによって、教員の無定量、無限定的な働き方を抜本的に是正することが求められている。【第7 まとめ】
公立学校教員の労働時間法制の全体構造
まず、前提として、公立学校教員も、憲法27条で定める「勤労者」、労基法上の「労働者」であるから、特に適用が除外されない限り、労基法の適用対象となる。次に、公立学校教員を含む地方公務員の労働条件等の特例を定めた地方公務員法58条3項は、労基法32条、34条、35条、36条、37条の各条文の適用を除外していない。すなわち、これらの規定は、地方公務員に対しても当然に適用される。【第2 公立学校教員の労働時間法制の全体構造】
給特法は、公立学校の教員にも労基法の労働時間規制が適用されることを前提として、時間外勤務を命じることができる免罰効規定の特例を設けたものであり、その中身は、教員の業務を「超勤4項目」とそれ以外の通常業務とに区分し、それぞれについて時間外労働をさせる場合の手続とそれに対する手当を定めたものである、と理解することができる。すなわち、①「超勤4項目」に該当する業務については特例として労基法33条3項に基づき時間外労働をさせることができる(時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないが「教職調整額」を支給する)、②それ以外の通常業務については時間外労働をさせないのが原則であり、その原則を実現するために正規の勤務時間の割振りによる調整を行うこととするが、それでも処理しきれない業務がある場合には労基法36条に基づく手続が必要になる、という構造である。【第2 公立学校教員の労働時間法制の全体構造】
教員への労働時間規制の適用とその意義
仮に労働者が勤務時間終了後も業務に従事することを望んだとしても、労働者の生命・健康を優先し、一定の枠・基準を超える場合にはそれを外的に抑制する、それこそが法定労働時間制の意義であって、この点は一般労働者も教員も同じである。それゆえ、管理職にある校長は、法定労働時間を遵守すべく、積極的に時間外労働を抑制する時間管理が法律上求められている。【第3 教員への労働時間規制の適用とその意義】
労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間、すなわち使用者の作業上の指揮監督下にある時間または使用者の明示又は黙示の指示によりその業務に従事する時間をいうものとされている(三菱重工業長崎造船所事件・最判平成12年3月9日、大星ビル管理事件・最判平成14年2月28日ほか)。すなわち、労働時間該当性は、使用者の指揮監督下にあるか否か(使用者の関与)や、使用者の業務への従事か否か(業務性)を判断要素として、客観的に定まることとなる(甲18・菅野和夫「労働法(第11版)」477~478頁、甲19・荒木尚志「労働法(第3版)」181~187頁)。ここでは、使用者による明示の「時間外勤務命令」(勤務時間外に業務に従事することを求める業務命令)が存在することは、必要とされていない。給特法は、このような「労働」の捉え方そのものを変更するものではない。公立学校の教員は、労基法が適用される「労働者」であり、労基法上の労働時間に関する上記の法解釈は、公立学校の教員についても当然に適用される。【第3 教員への労働時間規制の適用とその意義】
教員の時間外労働が「労働時間」に該当するか否かは、教員が「自主的・自発的」に時間外労働を受け入れたか否か、校長による明示の「時間外勤務命令」があったか否かによって左右されるものではない。校長による明示の「時間外勤務命令」がなかったとしても、教員が勤務時間外に教員としての業務に従事することを、校長が制止することなく黙認し、その成果を受け入れている限り、校長の指揮命令下に置かれた時間として、校長が教員を「労働させ」たものと評価される。この点は、行政解釈(昭和25年9月14日基収2983号、甲20)においても、「教員が、使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働になる」と指摘されているところである。【第3 教員への労働時間規制の適用とその意義】
特に、校長が主宰する職員会議による業務の割り振り(校務分掌)は、実質的には、校長による業務命令の性質を有している。平成12年の学校教育法施行規則の改正により、「小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる」(48条1項)、「職員会議は、校長が主宰する」(同条2項)と規定され、職員会議が校長の補助機関と位置づけられたことが、その裏付けである。【第3 教員への労働時間規制の適用とその意義】
教員の時間外労働の根拠・三六協定の必要性
「超勤4項目」等に該当しない通常業務については、労基法33条3項に基づいて法定労働時間を超えて教員を労働させることはできず、労基法の一般的な労働時間規制が適用されることになる。【第4 教員の時間外労働の根拠・三六協定の必要性】
給特法が労基法36条の適用を除外していないのは、まさにこのようなケースでは労基法36条が適用されることを定めているからである。【第4 教員の時間外労働の根拠・三六協定の必要性】
「超勤4項目」に該当しない通常業務について、法定労働時間を超えて教員を「労働させ」るためには、学校毎に三六協定を締結することが必要不可欠の条件となる。逆に言えば、「超勤4項目」に該当しない通常業務について、三六協定を締結することなく、法定労働時間を超えて教員を「労働させ」た場合、時間外労働を許容する根拠がない以上、労基法32条に違反することとなる(甲14~17)。【第4 教員の時間外労働の根拠・三六協定の必要性】
給特法の下でも労基法36条が適用されなければならないことは、同法制定当初から学説上も肯定されている。例えば、三輪定宣教授は、「(労基法)33条3項による時間外勤務命令は公立学校の場合、四項目の業務で臨時・緊急の場合に限定されているので、それ以外の時間外勤務は36条による協定業務と解される。(中略)33条3項は『公務のために臨時の必要』の場合の時間外労働の定めであり、実態的に恒常化した時間外労働をそれに含めるには無理があろう。」と述べ、「超勤4項目」以外の通常業務については、労基法33条3項によるのではなく、労基法36条が適用されなければならないことを肯定している(甲23・三輪定宣「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」201~202頁)。同様に、青木宗也教授も、給特法のもとでは、「超勤4項目」に限って時間外労働を容認したものであるから、「それ以外の時間外労働については、労基法三三条三項に基づく時間外労働ではないといわざるを得ない。……その場合の時間外労働は、三六条の時間外労働と考えられ、その手続をとることが義務づけられる」と指摘している(甲24・青木宗也「教職特別措置法―労働法学の立場から―」77頁)。【第4 教員の時間外労働の根拠・三六協定の必要性】
◆今後の争点
私が考える主な今後の争点は次のとおり。
労基法36条の適用について
原告先生 | 給特法第5条では、労基法36条の適用は除外していないため、教育職員に関しても、これらの労働時間規制は適用される。【第1回準備書面】 |
埼玉県 | 「超勤4項目」以外の業務について時間外勤務命令を行う事はできず、命令に基づく時間外勤務は発生し得ない。よって、労基法第36条は教育職員に対して実質的に適用の余地がない。【第1回答弁書】 |
原告先生 | 被告の主張は、「超勤4項目」に該当しない日常業務についての時間外勤務が存在しないことを想定した見解に過ぎないところ、法定労働時間を超えて教員を「労働させ」ている実態(これが時間外勤務命令の有無にかかわらないことは先に述べた通り)は、現に存在する。【第4回準備書面】 |
埼玉県 | 次回以降答弁予定 |
業務量について
原告先生 | 現在、私たち教員が携わっている業務は、7時間45分の勤務時間で処理可能な業務を「大幅に」上回るものである。【第1回準備書面】 |
埼玉県 | ・勤務時間内において、事務作業を全て終えることが不可能な状況とは言えない。
・本件校長から原告に対し、勤務時間内に終わらない仕事を命じたことはない。【第2回答弁書】 |
原告先生 | 原告が現に従事してきた業務の具体的内容や所要時間については、今後、具体的に明らかにする。【第4回準備書面】 |
時間外勤務について①
埼玉県 | 『超勤4項目』以外の業務について時間外勤務命令を行うことはできないため、そもそも時間外勤務命令に基づく時間外勤務は発生し得ない。【第1回答弁書】 |
原告先生 | 本件でまず問題とすべきは、校長が「時間外勤務命令」を行ったか否かではなく、校長が原告を「労働させ」たか否か(原告の勤務が労基法上の労働時間に該当するか否か)である。【第4回準備書面】 |
埼玉県 | 次回以降答弁予定 |
時間外勤務について②
埼玉県 | ・教員が正規の勤務時間外に勤務していることを認識していることをもって、校長が教員に時間外勤務を命じていることにはならない。
・校長による勤務終了の意思表示が無かったとしても、時間外勤務を容認していることにはならない。【第3回答弁書】 |
原告先生 | 校長が、教員が勤務時間外に行う「業務」に明確に関与し、勤務時間外に「業務」に従事していることを認識しつつ、それを校長が制止することなく黙認しているのであれば、その教員が従事した時間外労働は、労基法上の「労働時間」に該当することが明らかである。【第4回準備書面】 |
埼玉県 | 次回以降答弁予定 |
超勤4項目外業務について
埼玉県 | 教育職員に対しては原則として時間外勤務命令を行う事はできないため、『超勤4項目』以外の日常的な業務について、校長からの時間外勤務命令により恒常的な時間外労働を強いられることはない。【第3回答弁書】 |
原告先生 | 校長による「時間外勤務命令」がない場合でも、校長が時間外労働は当然あるものと理解し、黙認しているのが実情であり、そのような場合、校長が教員を労働させた(労基法上の労働時間に当たる)と評価されるのであって、原告が問題としているのはこの点である。【第4回準備書面】 |
埼玉県 | 次回以降答弁予定 |
改めてこうやって県の主張を整理すると、県は教員の働き方について、
- 基本的に勤務時間内に終わる業務量であり、
- (例外的に残業は存在するが)日常的な超勤4項目外の残業は存在しない
という前提にたっていることが分かります。
この前提はマジで本当にそう捉えているのか、それとも裁判で戦うためにそう主張せざるを得ないからなのか、どちらか分かりませんが、いずれにしても現実とは乖離した前提のように思います。
★まとめ
読んでいただいて分かるとおり、今回の原告側の主張、“そもそも労働とは何か”というところから始めています。
そして労働とは、「使用者の関与」「業務性」から判断される、と。
つまり、校長の関与があり、業務性に該当する残業は「労働」として取り扱われなくてはならず、超勤4項目外であれば教員であっても労基法が適用される、だから現状は労基法違反状態、と。
労基法違反には、「30万円以下の罰金、あるいは懲役6か月」という重い罰が課されます。
次回以降、この点について県はどう反応してくるか。
それから、原告先生が勤務時間を大幅に上回る業務量である(日常的に超勤4項目外の残業がある)ことを業務内容と所要時間を挙げて証明していくようなので、その点も注目です。